当校を襲った哀しい出来事から立ち上がる。バングラデシュでは珍しい「集団健康診断」を決行!

今まで毎日顔を合わせていた生徒が突然亡くなったなんて、信じられませんでした。

開校2年目、大きな哀しい出来事がありました。私たちはここから、生徒の健康状況を把握するための健康診断を実施するようになりました。

しかし、ここはバングラデシュ! その健康診断でも予想外のことが起きたのです。

急すぎる哀しい出来事...

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K.Furusawa

私たちの学校の、ある女子生徒に起きたことです。

彼女は勉強も運動も得意ではなく、また恥ずかしがりやで口数の少ない子でした。体育の授業での縄跳びは一度も跳べなかったのですが、それでも何度も友人たちとチャレンジしている姿が、今も私の脳裏に鮮明に残っています。この子は2014年、13歳でこの世を去りました。

その日、彼女のお母さんから学校に連絡が入りました。電話越しで泣いているお母さん。最初は何を言っているのか分からなかったのですが、よくよく聞くと「娘が昨夜、病院で死にました」ということでした。

日本でいうお通夜に参列しました。お母さんの話によると、家の近くに流れている、汚れた地下水が原因だそうです。その汚れている水を毎日飲んでいたため、知らず知らずのうちに腎臓へ負担がかかっていて、突然手足が腫れ、病院に連れて行ったが間に合わずそのまま亡くなってしまったのだそうです。

今まで毎日顔を合わせていた生徒が突然亡くなったなんて、信じられませんでした。口数は少ない子でしたが、いつも私に笑顔で挨拶をしてくれて、授業に真面目に取り組んでいる姿を思い出すと哀しくて、辛くてたまりませんでした。「なぜこの子の体調変化に気づいてあげられなかったんだろう」、「私に何かできることがあったのでは」、この時は長いあいだ悩み、苦しみました。

学校で集団健康診断を実施

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K.Furusawa

彼女の死から、バングラデシュの地域環境の現状を改めて痛感しました。これを踏まえ、子どもたちの健康診断を学校でしてはどうかと、職員みんなで話合いました。私たち学校にできること、まずは子どもたちの健康状況の把握です。

ただ、バングラデシュの一般的な学校において、毎年健康診断を行っているところはありません。とはいえ、子どもたちの健康診断を受け入れてもらえる病院探しから始めました。

近くの病院をいくつか回って交渉しましたが、どこも小さな病院なためスタッフが足りず、大人数の健康診断の実現は難航しました。

そこでようやく知人から適した病院を紹介してもらい、受け入れ先の病院が決まりました。ただ、その病院は学校から車で30分かかる距離。全校生徒を乗せる大型バスをレンタルしなければならず、費用も重くのしかかりますが、子どもたちの健康を考えればそんなことは言っていられません! こうして集団健康診断の実施にこぎつけました。

しかし、健康診断当日にも想定外の事態が!

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健康診断当日のことです。予定通りバスをレンタルし、無事に病院へ到着しました。

検査項目は問診、身体計測、視力、血圧、尿検査、血液型検査になっており、検査ごとに部屋が分かれています。生徒たちが検査を受けているあいだ、私は生徒たちの様子を見るため部屋を行き来していました。

これで最低限は生徒の健康状況も把握できると、安心していた矢先のことです。はじめはまったく気にしていなかったのですが、ふといくつかおかしなことに気づきました。

視力検査の部屋でのことです。視力を測る際、片方の眼をスプーンのような棒で覆いますよね。この棒を「遮眼子」というのですが、この遮眼子が看護師の横にあるにも関わらず、なぜか看護師自らの手で子どもの片眼を隠して検査をしていたのです。

また、身体測定の部屋では、通常は身長計の目盛りがある尺柱に背中をつけて測りますが、看護師が生徒に指示していたのはその尺柱に対して面と向かい立たせて計測していたのです。これはさすがに私も口出し注意してしまいました(笑)。

この病院は信用できないと思い、次年度から違う病院に変更をしましたが、まさか病院でこのような問題が起こるとは予想しておらず、苦笑するしかありませんでした......。

この年から現在に至る今も年に一度、集団健康診断を実施していますが、病院も事前に調査が必要だな、と良い教訓になった出来事でした。

Ambassadorのプロフィール

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K.Furusawa

宮城県仙台市出身。大学在学中はプロキックボクサーとして活躍。卒業後は日本の私学教員をやりながらタイ、カンボジア、ネパール、ミャンマーなどアジアの教育支援に携わる。その後、とある公益財団法人の仕事としてバングラデシュでモデル校となる学校建設・運営を任される。現在は生徒数約800名の学校をバングラデシュで運営中。