昨年8月以降、ミャンマー・ラカイン州での衝突を逃れバングラデシュに避難した人(※)の数は70万人以上にのぼっています。その内、54.5%が18歳以下の子どもで、その多くが栄養失調に苦しみ、半数が貧血だと言われています。
そんな中、雨季に入り過酷な環境で暮らす避難民にさらなる危機が迫っています。
※国際赤十字では、政治的・民族的背景および避難されている方々の多様性に配慮し、『ロヒンギャ』という表現を使用しないこととしています。
■ キャンプのいたるところで土砂崩れが発生
日本赤十字社は、 2017 年 9 月より、バングラデシュ南部の避難民キャンプに、医師・看護師・助産師・こころのケア要員などからなる医療チームを派遣し、支援を継続してきました。
バングラデシュの雨季の月間平均降水量は700mmと言われており、東京の梅雨時期の月間平均降水量(6月)と比べると、約4倍にあたる雨量です。現地では6月9日から3日間で300mmを超える雨が降り、月間平均降水量の半分にあたる雨量を観測しました。この先も、雨の降りやすい状態が続き、地盤が緩んでいる状態のため、少しの雨でも土砂災害や河川増水などのおそれがあります。(情報提供:ウェザーニュース)。
現地日赤職員の報告によると、避難民キャンプでは土砂崩れが至る所で発生しており、赤十字の支援活動エリア(クトゥパロン、ハキムパラなど)では、 被害を受けた世帯は約 2,100 世帯、 9,000 人以上に上ります。避難民が住む、竹とビニールシートでできたテントだけではなく、医療施設などへの被害も報告されてます。(6月13日現在)
■ 現地の医師が危機的状況を語る「大雨によりトイレが倒壊、感染症の流行も懸念」
今年3月から3か月間、現地で医療支援活動を行った日本赤十字社和歌山医療センター感染症内科部の小林謙一郎医師が6月14日に帰国。雨季に入った避難民キャンプの今の様子を語りました。
小林医師によると、日赤が巡回診療を行ったり、仮設診療所を設置しているバルカリ2避難民キャンプでは、雨季が始まって以降、5月中旬から下痢の症状がみられる患者が増加しています。大雨により、トイレが倒壊し汚水が流れ出しているところも多くみられるなど、衛生環境の悪化が原因ではないかとみられています。
■ 緊急医療を継続、今後も予断を許さない状況
日赤は、雨季に入る前から、応急手当や搬送用担架を作る方法などの講習会を通して、迫りくる危機に避難民が自ら対応できる力を身につける支援も続けてきました。また、現在も日赤の医師や看護師等が緊急医療を継続しています。
今後、大雨が続く場合、避難民キャンプ内の道路が舗装されていない地域や、洪水や土砂崩れにより道路が寸断されてしまった地域に住む人々のもとへ支援を届けることができなくなる可能性もあります。また、サイクロンの発生しやすい時期に入っており、今後も予断を許さない状況です。
関連リンク
・バングラデシュ南部避難民救援
・救援金