どうなるベビーシッター~個人でも届け出義務化へ~

大手から個人までマッチングサイトを運営している主体は様々だ。法的義務はないものの、ベビーシッターには届け出を徹底させ、マッチングサイト運営者にはガイドラインを遵守するよう、国や都道府県などが周知啓発していくことが求められるだろう。
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PeopleImages.com via Getty Images

厚生労働省は先月27日、

「子どもの預かりサービスの在り方に関する専門委員会」(第4回)を開催し、

報告書をとりまとめた。

主要メディアでも取り上げられていたが、

今回のポイントは大きく2つ。

1つは、施設を伴わない形態で行われる認可外の訪問型保育事業や

1日に保育する乳幼児が5人以下の施設に対して都道府県等への届け出義務を課すということ。

これは事業者にも個人のベビーシッターにも適用される。

もう1つは、ベビーシッターと利用者をつなぎ合わせるマッチングサイトに対して

ガイドラインを作成するということだ。

筆者自身もこの専門委員会の委員として関わってきたが、

今年3月に発生したベビーシッターによる幼児死亡事件のような事案が再び起こらないよう、

一定の効果がある報告書に仕上げることができたのではないかと思っている。

報告書では、今後の指導監督指針及び指導監督基準の在り方を示した。

事業の届け出を出したベビーシッターは、

毎年、都道府県に対して運営状況の報告をしなければならなくなる。

そこで、ベビーシッターの質の向上を図るため、

運営状況の報告の際、ベビーシッターは、

研修の受講状況についても報告するよう求められている。

また、ベビーシッターが賠償責任保険へ加入することや、

保育終了後に保護者に保育中の子どもの様子を報告すること、

事前に保護者がベビーシッターに関する情報を確認できるようにすることなどが、

今後の指導監督指針及び指導監督基準の在り方として盛り込まれた。

来年早々に省令を改正した後、施行については早くて来年の春以降になるとみられる。

これまで届け出義務が課されていなかった個人によるベビーシッターも届け出が必要となることから、

一定の周知期間を置き、周知徹底を図る必要があるだろう。

届け出の処理を行う都道府県や政令指定都市においては、

届け出の増加が見込まれるため、

報告書では、「事務の簡素化について検討することが適当」とした。

一方で、今回の報告書では、

マッチングサイト運営者に対してガイドラインを作成するよう求めている。

マッチングサイトを利用しているのは基本的には個人という立場。

現在はサイトへの登録の際、ベビーシッター本人に関する情報を自己申告としているケースが多い。

3月の事件を繰り返さないためにも法的な拘束力を持たせるガイドラインが必要という声もあったが、

実際に、サイト運営者が保育をしているわけではない。

ベビーシッターとその利用者の出会いの場を提供しているに過ぎないため、

児童福祉の観点から法令上義務づけるのは難しく、

努力目標としてのガイドラインという位置づけとなっている。

ガイドラインでは、サイト運営者に対して、

ベビーシッターが都道府県などに届け出を出しているかどうかや、

研修の有無、身分証明書の提出を求めることが示された。

また、マッチングサイトのトップページなどに

登録するベビーシッターに対して届け出制度が導入されたことを表示することや、

サイトを利用するに当たって、

ベビーシッター(保育者)が下記の利用規約を遵守しているどうかを公表するよう求めている。

ア 保育者は、利用者と事前に面接を行うこと。

イ 保育者は、氏名、住所、連絡先を利用者に伝えるとともに、

  身分証明書及び都道府県への届出証明書を利用者に示すこと。

ウ 保育者は、乳幼児の自宅とは別の場所で保育する場合は、

  事前に保育場所を見学等させること。

エ 保育者は、保育士や認定ベビーシッター(※)の資格を持っている場合は、

  保育士登録証や認定ベビーシッター資格登録証を利用者に提示すること。

  (※)「認定ベビーシッター」とは、公益社団法人全国保育サービス協会が、

    ベビーシッターとして必要な専門知識及び技術を要すると認定した者

オ 保育者は、研修の受講状況等の内容を、利用者に適切に説明すること。

カ 保育者は、賠償責任保険に加入するなど、保育中の万が一の事故に備えること。

キ 保育者は、預かっている間も利用者の求めに応じて、

  乳幼児の様子を電話やメールで伝えること。 

ク 保育者は、乳幼児の体調が急変するなどの緊急事態が生じた際に、

  利用者にすぐに連絡するとともに、救急車を呼ぶなど適切な対応をとること。

ケ 保育者は、預かっている乳幼児の引き渡しをする際、

  保育の内容や預かっている間の子どもの様子を報告すること。

ガイドラインが示されることでどのようにベビーシッターが変わるのだろうか?

あるマッチングサイト運営者は、今回の報告書のとりまとめを受けて、

次のように話している。

「多くのベビーシッターが届け出をせずに辞めてしまうのではないか。

大幅にベビーシッターの数が減ってしまうことが予想される。

ベビーシッターの保険もちゃんとしたものがない状況。

来年春までに整うのか不安なところがある」

大手から個人までマッチングサイトを運営している主体は様々だ。

法的義務はないものの、ベビーシッターには届け出を徹底させ、

マッチングサイト運営者にはガイドラインを遵守するよう、

国や都道府県などが周知啓発していくことが求められるだろう。

例えば、あるマッチングサイトに登録しているベビーシッターが

長期間研修を受講していなかったり、苦情が多ければ、

都道府県などが立入調査をベビーシッターに対して実施することができるようになる。

ただこの場合、ベビーシッターを頼んでいる個人宅に立入調査することが難しいため、

都道府県などが必要ありと判断した場合に、ベビーシッター本人を適切に指導することができる。

ベビーシッター本人宅に立入調査することも可能になるという。

こうした指導監督が適切に機能するようになれば、

ベビーシッターの質の向上に無関心なマッチングサイト運営者は、

ベビーシッターの確保自体が難しくなり、

サイトの継続ができなくなるようになればと考える。

再びベビーシッターによる事件が起きることがないよう、

今回の報告書が多くの方々に注目されるものになることを願いたい。

報告書の詳細は、厚生労働省のホームページよりご覧いただきたい(ただし若干修正される予定)。