【赤ちゃんにやさしい国へ】赤ちゃんを通じた男女の出会いは、いちばん自然かもしれない〜赤ちゃん婚活パーティ〜

ここでも何度か記事にしてきた赤ちゃん先生プロジェクト。書籍「赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない」の中でも重要な位置を占めている。
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このところ書籍化の話ばかり書いていて、ずいぶん前の取材を記事にしていなかったので、いい加減書こうと思う。

ここでも何度か記事にしてきた赤ちゃん先生プロジェクト。書籍「赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない」の中でも重要な位置を占めている。

その赤ちゃん先生プロジェクトの理事長・恵夕喜子さんからご連絡をいただいた。婚活パーティを赤ちゃん先生がお手伝いするので、取材に来ませんか、というお誘いだった。

・・・ん?婚活パーティと赤ちゃん先生?最初はよくわからなかった。だが、当時仕上げに入っていた書籍の中にもほんの少しだけ近いことを書いていた。うーん、これは行ってみなくては!

というわけで、11月のある土曜日、代官山まで出かけていった。

その婚活パーティ、場所がまず興味深い。chano-maという"子どもにもママにもやさしい"をコンセプトにしたカフェで、ママと赤ちゃんが一緒に参加できるイベントも開催されている。

赤ちゃんと過ごしやすそうなふわふわと柔らかな空間だ。そこに婚活中の独身男女が十数名ずつ集まっている。

ノッツェという結婚相談所の会員の方々だそうだ。

ノッツェでは会員のためにいろいろな婚活パーティを開催するそうで、その中での新しい試みとして赤ちゃん先生プロジェクトとのコラボレーションが成立したそうだ。

カフェが区切られて控室的な空間ができており、そこでは赤ちゃん先生とママ講師たちが準備中だった。

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一方、仕切の向こうの会場では、参加者たちがイベントの開始を待ちかまえている。こんな会場だということがこの写真でわかってもらえるだろう。

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いやしかし、赤ちゃんの参加で果たして婚活パーティが盛り上がるのだろうか。もちろんそういう募集に応じて集まった人たちなのだから、子ども好きなんだろうけど。でも女性はともかく、男性が赤ちゃんを見て高揚するのだろうか。ましてや、初対面の女性と一緒に赤ちゃんの世話をしたりするの?

集まっている男性たちを見渡すと、正直言って見た感じからして子ども好きだとは思えなかった。この青年たちが、赤ちゃんを抱っこできるの?

いざスタートすると、ぼくのそんな心配は杞憂だとわかった。いくつかのグループに分かれて数名ずつでひとりの赤ちゃんを取り囲むのだけど、それぞれが湧いている。むくつけき男子たちも、なれないなりに赤ちゃんにふれたりあやしたりしている。

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こう言うのも失礼ながら、神戸に取材した時の小学生たちとそんなに変わらない。人間は、赤ちゃんに高揚するのだ。赤ちゃんには人を和ませる不思議な力があるのかもしれない。

赤ちゃんのお世話をする時間はやがて終わり、そのあと参加者のみでのパーティとなった。なるほど。赤ちゃんの世話を通して打ち解けたあとで、あらためてゆっくり話をするのだ。なかなかよくできてるんじゃないかな。ふつうの婚活パーティでいきなり会っても打ち解けにくいだろう。赤ちゃんがいてくれることで自分を出しやすく、話しやすいムードができる。

終了後に、赤ちゃん先生プロジェクトの恵さんと、ノッツェの社長・須野田珠美さんに時間をもらえた。パワーあふれる女性二人のエネルギーに負けそうになりながらお話をうかがった。

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赤ちゃん先生がキューピッド役を務めると婚活パーティが盛り上がるんじゃないか。試しに九州の結婚式場でやってみたところうまくいった。カップルの成立率が3倍くらいになったそうだ。そこでノッツェと赤ちゃん先生プロジェクトで協力してあちこちでやってみているのだという。

もともとノッツェでもいろんなタイプの婚活パーティをやってきている。参加者からすると、短い時間でお互いを知るのは大変で、人柄をかいま見えるようにする企画は重要だ。ノッツェの登録者には一見すると地味だけど、ちゃんとおつきあいすると人柄のいい人が多い。そんな人たちが互いに自然に人柄を見せるのに、赤ちゃんは格好の仲介役なのだそうだ。

須野田社長にとって、ノッツェの事業を通じて女性のライフスタイルをサポートしたいとの思いがあるそうで、恵さんとは意気投合しているとのこと。お二人が力を合わせてできることは、まだまだあるのかもしれない。

赤ちゃんと婚活の組合せは意外なようで、実は自然なことなのかもしれないと思う。都市で出会ったカップルがイタリアンを食べながら見えているお互いの姿は、それはそれでウソではないだろうけど、カッコつけてる時の二人だ。自然に振る舞う時の姿は、赤ちゃんを前にした時に出るかもしれない。大泣きする赤ちゃんに舌打ちなどせず、戸惑いながらもあやそうとする男性は、一緒に家庭を持つ姿が想像できるだろう。おいしい店を知っていることより、ずっと重要なことだ。

子育ては核家族ではなく、大きなコミュニティで引き受けるべきもの。「赤ちゃんにやさしい国へ」のシリーズの中でぼくが一貫して感じていることだが、男女の出会いもその子育てコミュニティの中でもたらせるのではないだろうか。独身男女にも子育てに参加してもらい、その共同作業を通じて飾らない姿を知りあう。

ノッツェと赤ちゃん先生プロジェクトが連携することで、そんな自然な出会いが可能になった。こう言うと怒られそうだが、恵さんと須野田社長は"おせっかいなおばちゃん"なのだと思う。そういう役割の女性が、社会には必要なのだ。結婚が難しくなっているいま、"おせっかいなおばちゃん"が求められているのではないだろうか。いまの若い人が不器用だから結婚が減っているのではなく、そういう、必要な仕組みが失われているのではないか。

おじちゃんだって必要だろう。寅さんみたいに必要ないのにしゃしゃり出てかき乱しつつも若いもん同士をひっつけちゃうおじさんとか、健さんみたいにムスッとしながら若い二人を後押しするおじちゃんとか。

そういう失われてしまったコミュニティとその中での"仕組み"が、ここでは取り戻されようとしている。だとしたら、できることはもっとあるのかもしれない。ぼくたちがコミュニティを形成し、その一員であることを自覚することで、何ができるのかは見えてくるのではないだろうか。

※このブログを書籍にまとめた『赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない』(三輪舎・刊)発売中です。

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コピーライター/メディアコンサルタント

境 治

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