こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。
これまで社会的養護問題のエキスパート(?)になるべく
児童養護施設 3箇所4回
一時保護所 2箇所2回
児童相談所 2箇所3回
の視察に訪れておりますが、乳児院だけは行ったことがなかったので、
本日は東京都にある「二葉乳児院」に視察でお邪魔いたしました。
社会的養護・児童養護に関する過去ログはこちら↓
こちらは「乳児院の中でも一番二番」と言われるほどの実績と評判を誇る施設で、
人員体制も充実し、非常に手厚いケアが子どもたちになされていることがわかります。
乳児院で悪名高い、
「高い柵のベビーベッドに赤ちゃんを寝かせっぱなし」
「ミルクは時間になると、枕元から自動で吸口が出てきてそれを吸う」
というシステムは一切採用しておらず、
「うちは大変でも職員たちが一人ひとりに手でミルクをあげている。
しかし、どこの乳児院でもそのようにやれているわけではないだろう」
とのことでした。
実際こちらは、持ち出しで人員を増やして対応しているそうです。
また二葉さんは東京都から里親支援機関事業も委託しており、
「とにかく、小さい時に里親さんの元に行けるのが一番」
という考えの元、一人でも多くの子どもたちに家庭を与えようと
必死で努力をしている様子が伺えました。
また一方で家族再統合を促し、
「親元に返す」というのも乳児院の一つのミッションです。
意外に思われる方も多いかもしれませんが、
乳児院に入る子どもたちの約6割は親元へと帰っていきます。
残りは3割が施設、わずか1割が里親・養子縁組という割合です。
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ここからは必ずしも今日伺ったお話だけを元に書くわけではありませんが、
里親委託が進まない最大の要因としては
「実親の不同意」
を挙げる関係者がもっとも多く、
その次くらいに
「担当する児童福祉司や、(児童相談所)所長の方針に依る」
という意見を高い頻度で耳にします。
児童相談所や担当職員によっては「里親不信」のような考えを持っている方がおり、
私もとあるところに視察に訪れた際に開口一番、
「里親は先生が思っているように、万能な解決策ではありません」
と言い放たれたこともあります。
逆に言えば、非常に里親委託に熱心な児童福祉司さんも存在し、
「親の同意もあり、ずっと里親委託をして欲しいと訴えていたが、
担当の児童福祉司さんが変わってようやくマッチングしてもらえた」
というケース報告もありました。
もちろん、里親に委託すれば子どもにバラ色の未来が待っているとは限りません。
乳児院や児童養護施設から里親にマッチングする際には、その前に一定の
「交流期間」を設けますが、この段階でうまくいかないケースは多々あります。
交流期間をクリアして里親委託が成立した後でも、
関係が悪化してしまい施設に戻ってくることもあり、
こうした事態は専門用語で「不調」「里親不調」などと言われます。
こうしたケースを多数経験した児童福祉司さんは、
自身の経験から
「里親はうまくいかない」
「やはり、プロが複数で見ている施設が一番」
という方針・信念を強固にしてしまうわけです。
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こうした考えを強く持つ方々と無手で話し合っても、
「現場・実態も知らない人間がとやかく言うな」
ということで議論が終わってしまいます。
(いや、そこまで直接的な表現では言われませんけど)
「不調」が生じた場合、里親そのものが悪かったのか、里親への支援が足りなかったのか、
単にマッチングの相性が悪かったのか...不調の理由と結果を蓄積してデータにしていかなければ、
現状を改善するための議論の入り口にも立つことができません。
特に里親委託を成功させるためには、適切な支援が欠かせませんし、
この点の充実が我が国では多く指摘をされているところです。
ところがこの「里親不調」についてのデータを
東京都及び児童相談所は一切蓄積をしていません。
どの段階で不調になったのか、その理由は、頻度は、改善策は...
そうしたことを分析することなく
「里親はうまくいかない」
と結論づけている職員が多くいるとすれば、
それは東京都で里親委託が進まない大きな障壁になっているのではないでしょうか。
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というわけで、単に里親委託を推進せよ!
と言っていても事態は前になかなか進みませんので、まずは
「里親不調の実態調査」
「そのデータ蓄積と分析」
このあたりから今後は政策提言をしていきたいと考えております。
今回の一般質問、持ち時間9分なんだよな...(汗)。
さて都議会開会前最後の日となる明日は、
「手話言語・コミュニケーション条例」
「ひとり親・母子家庭支援政策」
でもっとも先進的な取り組みを行っている兵庫県明石市に視察に行って来ます。
片道4時間ェ...
アポが盛りだくさんですが、1時間だけ空き時間がありますので、
明石はここを見ておけ!◯◯さんと会っておけ!というアドバイスがありましたら
ぜひともお待ちしております。
それでは、また明日。
(2015年9月16日「おときた駿公式ブログ」より転載)