1月の「赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない」の余波はまだまだ続いている。余波が続いているというより、子育てについて考える人にすっかりなってしまった。だって15万いいね!(その後16万に増えたが)がついて子育てに悩むお母さんたちから「ありがとうございます。これからも頑張ってください」とメールをもらったりすると、頑張らないわけにはいかなくなる。
その後も取材をしたりして、続きを書き進めてきた。
すると当然、子育て関連の記事が気になってくる。目についたら片っ端に目を通してしまう。そしてどうも、その手の記事が最近増えてきている気がしてきた。でもそれは、気にしているからだったり、グノシーのエンジンがぼくの傾向を読み取っているせいかもしれないが。
もちろん、先日のベビーシッターの事件もあったし、配偶者控除の見直しも話題として浮上しているせいもあるだろう。でもどうも、子育てについての議論はホットになりつつあるように思えるのだ。何かよくわからないけど、そういうタイミングなんじゃないだろうか。
と、思っていたら、AERAの記者の方からメールが来た。ハフィントンポストの記事を読んだと言う。4月14日発売号で「子育て小国を生きる」という特集を組むので取材してコメントを載せたいとのこと。
AERAは週刊誌としてはちょっと独特な姿勢を持っている。ほとんどの週刊誌は”オヤジくさい”。女性向け週刊誌はゴシップ誌ばかり。そうでなければビジネス誌。AERAはそのどれでもない。そして働く女性を意識している記事が多い。
でもそんなAERAのような立派な雑誌が子育て問題の特集で、ぼくのようなこの分野ではアマチュアの人間に取材に来るなんていいのだろうか。ちょっと躊躇した。専門家じゃなくて、たまたま子育てをネタにブログを書いただけですよ。そう返信した上で、お会いすることになった。
やって来たのは、小林明子さんという女性記者だった。新聞社系の記者さんというので、舌鋒鋭い攻撃的な女性をついついイメージしていたのだが、その反対で笑顔の可愛らしい明るい女性だった。
なかなか女性を上手に撮れないのだが、今回は素敵に撮れたと思う
あらかじめ彼女の名前をググったら、子育て関連の記事を多く書いている様子だった。実際、ご本人としても自分のテーマとして意識しているそうだ。自身もワーキングマザーであり、自分の悩みや気持ちも背景に持ちつつ子育て問題に取り組んでいるという。
今回の特集では、「子育て小国」というキーワードを立てたのだけど、それだけだとネガティブな内容になりかねない。子育てに課題が多い中で、”生きる”つまり前向きに積極的に取り組んでいる様子も取材したいのだそうだ。
取材に対して何をしゃべったかよく憶えてない。彼女の話しやすさ、楽しさに引っ張られて調子に乗ってたくさんしゃべった気がする。その内容はまあ、14日(今日!)発売のAERAをめくってみてください。
AERAではもともと働く女性を意識した記事が多かったのだが、今後ますます力を入れていくそうで、「AERAワーキングマザー100人委員会」という集まりを起ち上げるという。AERAの誌面はもちろん、リアルなイベントなど立体的な展開で情報発信していくのだ。
さっそく5月24日にキックオフイベントを開催するという。ぜひぜひ取材に来てくださいというのでもちろんと応じた。それに、お互いいろいろ情報交換していこう、連携できることあったらチカラを出し合おう、と意気投合した。なんだか”仲間”を得た気分。お母さんたちの活動をひとりで取材するだけだったのが、同じように取材する側として、いろいろと共有できそうだなと思った。
取材のあと、もらったメールで、ぼくにもその「ワーキングマザー100人委員会」のメンバーになってくれないかと言われた。えー?こんなおっさんがメンバーになっていいのかなあ。男性初のメンバーとして、ぜひ!と言う。それは光栄なんだけど、ちょっと気恥ずかしい。じゃあ隅っこの方にちょこんと座ることにしようか。
それにしても、どうもやっぱり”流れ”がいま起こりつつあるんじゃないだろうか。子育てへの様々な不条理や不都合がここへ来て限界にきつつあり、それが待機児童問題をはじめ喫緊の課題として急浮上しはじめている。ぼくの記事への15万いいね!も、そういう潮流が顕在化しつつある中で起こったことだという気がする。
お母さんたちの小さな声が、いま凝縮されカタマリとなって大きな声に膨れ上がりつつあるんじゃないだろうか。ソーシャルメディアが主婦層にまで普及したこともあり、その膨張が加速してきているのだ。
そんな中で、ハフィントンポストとAERAというメディアがあり、”子育て”というテーマでは呼応しようとしている。ぼくと小林さんがそれぞれでの導火線の役割になれるのかもしれない。
いや、導火線はあちこちに実は張り巡らされていて、連鎖反応を待っているのだろう。名のあるメディアでなくても、他にもブログを書いていたり、ソーシャル上で発言していたり。いままでだと局地的にしか火がつかなかったのが、ネットワークが飛び火を可能にした。それぞれが頑張って火を絶やさないでいれば、相乗効果によって火が炎になる。炎になって大きな上昇気流を社会に巻き起こせる。そんな機運が今なのだと思う。
こうなったらぼくも尻込みしてないで、たまたまだけど自分がつけた火を炎に成長させるべく、ますます積極的になってみようと思う。何しろ、味方はいる。AERAにもいるし、あちこちにいる。メールをくれたママさんたちも味方と思っていいのだろう。いいね!してくれた16万人も全員味方かもしれないと思うと、なんとも心強いじゃないか。
ぼくたちは世の中を変えることができる。子育ての分野では、それがホントのことにできそうな気がする。子育てをめぐる環境を変えていくのは、ぼくでありあなたなのだ。
コミュニケーションディレクター/メディアコンサルタント
境 治
sakaiosamu62@gmail.com
(2014年4月14日「クリエイティブビジネス論〜焼け跡に光を灯そう〜」より転載)