東京・六本木の国立新美術館で2月21日に開幕する「ルーヴル美術館展」で、フェルメールの名画「天文学者」が初来日する。第二次大戦中にはナチス・ドイツに押収されるなど数奇な運命をたどった作品だ。
フェルメールの「天文学者」
大戦前には「天文学者」はユダヤ系の金融一族、ロスチャイルド家の一人、フランス在住のエドゥアール・ド・ロチルドが所蔵していた。ナチス・ドイツは1940年のフランス侵攻時に「天文学者」を押収。絵の裏面には、ナチスの所蔵物であることを示すために小さい鍵十字が刻印された。当時のナチスの担当者は、以下のような手紙をヒトラーの腹心であるマルティン・ボルマンに送っていたという。
「デルフトのヨハネス・フェルメールの作品のことを総統がおっしゃっておられましたが、その作品がロスチャイルドから押収した作品のなかにありました。それを総統にお知らせするのが嬉しいです」
(フランク・ウィン「フェルメールになれなかった男 20世紀最大の贋作事件」ちくま文庫)
ヒトラーは若い頃には画家を目指していたこともあり、抽象画を「退廃芸術」として弾圧する一方で、写実的な絵画を礼賛。特にフェルメールに魅了されていたという。もう1作「絵画芸術」という絵も、オーストリアの貴族からヒトラー個人が1940年に購入している。
終戦に伴って「天文学者」はロスチャイルド家に返還されたが、1983年に相続税の現物納付としてフランス政府の持ち物になった。これ以降、ルーヴル美術館に展示されているという。「天文学者」はルーヴル美術館展の一環として来日。東京では2月21日~6月1日に国立新美術館で、京都では6月16日~9月27日に京都市美術館で展示予定だ。
ハフィントンポスト日本版はFacebook ページでも情報発信しています。
ハフィントンポスト日本版はTwitterでも情報発信しています。@HuffPostJapan をフォロー