激変する北東アジア情勢

中国の習近平国家主席が初の朝鮮半島訪問に平壌ではなくソウルを選んだ。この事は、1989年のベルリンの壁崩壊から四半世紀を経て、北東アジア情勢においてもダイナミックな地殻変動が起こっている事を物語っている。BBCのこの二つの記事が、この事を分り易く説明しているので参照してみる。
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SEOUL, SOUTH KOREA - JULY 03: Chinese President Xi Jinping and South Korean President Park Geun-Hye walk towards a guard of honour during a welcoming ceremony held at the presidential Blue House on July 3, 2014 in Seoul, South Korea. President Xi Jinping is visiting Seoul before Pyongyang during his first trip to Korean Peninsula as Chinese President. (Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images)
Chung Sung-Jun via Getty Images

中国の習近平国家主席が初の朝鮮半島訪問に平壌ではなくソウルを選んだ。この事は、1989年のベルリンの壁崩壊から四半世紀を経て、北東アジア情勢においてもダイナミックな地殻変動が起こっている事を物語っている。BBCのこの二つの記事が、この事を分り易く説明しているので参照してみる。

先ずは、China media: South Korea tiesである。私なりに解釈を試みるとすれば要点は下記二点となる。

中韓が日本の「集団的自衛権行使容認」を批判するのは、これが正しい判断であるから

「北朝鮮核問題と日本の(右傾化の)方向性」を挙げ、2つの問題に対処する上で韓国との協力が重要との考えたとの記述である。「 Beijing and Seoul have become "regional stabilisers" in the face of deepening territorial tensions, the rise of right-wing views in Japan and Pyongyang's nuclear problems」中韓がここまで懸念するという事は、「集団的自衛権行使容認」が正しい判断であったという事に他ならない。

日本は、国際社会では常識である武力行使を否定して来た。日本国内の平和主義者はこれを賞讃するかも知れないが、一方、国際社会では馬鹿にされないはずがない。中国、韓国そして北朝鮮といった北東アジアに位置する国々の、戦後の一貫した日本に対する無礼極る行為の背景には日本の武力行使否定がある。要はずっと舐められ続けているという事である。

今一度「集団的自衛権行使容認」の本質を考える

「集団的自衛権行使容認」についての私の基本的な考えは、集団的自衛権行使容認を閣議決定で公開した通りである。未だに「集団的自衛権行使容認」に拘わる根幹部分を理解せず、難癖を付けて来る人がいるのでポイントのみ下記する。マスコミによる偏向報道と、それによる露骨な世論誘導の結果であるが実に残念な事実である。

(1).憲法問題について有権的解釈を下せるのは、国会でもなく、憲法学者でもなく、まして政府の一部である内閣法制局でもなく、憲法第81条に明記してある通り最高裁であり、憲法を順守する以上、最高裁の解釈を尊重しなければならない。

(2).一方、最高裁の砂川判決は、日本が固有の自衛権を有することを認め、その故に自衛隊を合憲と認めている。

(3).更に、 日本は国連憲章を憲法上の手続きに従ってUnconditionalに批准している。従って、国連憲章の規定は国内法と同じ権威がある。そこには、日本は独立国として固有の権利である集団的及び個別的自衛権を有すると明記してある。

(4).従って、日本は集団的自衛権を保持しており、憲法解釈を「正常化」して行使出来る様にしておく事は当然の話。

(5).現実問題として、アメリカが日本が集団的自衛権行使容認しないなら、日本の防衛に協力出来ないというのであれば是非もない。

背景にあるのは、アジア・太平洋でアメリカに取って代りたいという中国の野心

そして、今一つの注目すべき点は、中国が韓国を取り込む事は、米国の対アジア政策Pivotである日米韓連携に楔を打つ事であり、これにより戦後体制を中国有利に変換する事を可能にしようとの、中国の意思が読み取れる事である。「It also describes Asian countries which "completely lean on the US for security" as "foolish" and warns that these countries "have a childish fantasy thinking that the US will support them when they confront China"」。この記述などは幼稚なプロパガンダであると共に、中国と領土問題を抱える、フィリッピン、ベトナムといった国々に対する悪質な恫喝である。今回の習近平国家主席ソウル訪問により、韓国はアメリカ及び日本との関係が修復不可能になる可能性が高い。更には中国との間の領土問題に苦しむ東南アジア諸国との関係も悪化し、アジアで孤立する展開を予想する。

韓国経済は中國経済に取り込まれるのか?

The move comes days after the French central bank also signed an MOU with its Chinese counterpart to set up a renminbi payment system in Paris.

Banque de France said in a statement: "This MoU is the first step towards the creation of a renminbi clearing and settlement infrastructure in Paris."

Earlier this year, China's central bank signed similar MOUs with its counterparts in Germany and the United Kingdom.

Last month, the British pound became the fifth major currency to be exchangeable directly for yuan in Shanghai, joining the Australian and New Zealand dollars, as well as the Japanese yen and the US dollar.

中國通貨人民元との間の決済システムを新たに取得するという話である。日本を初め先進国が導入済みである事から、特筆すべき話ではないかも知れない。しかしなら、韓国は日本等と比べて経済の輸出依存度が著しく高く、一方、中国は最大の輸出市場である。従って、今後「韓国経済は中國経済に取り込まれるのか?」といった、疑問、危惧は繰り返し議論される事になるだろう。

韓国に取って「中韓同盟」は地獄へと続く一本道

「中韓同盟」といったところで、実質は韓国が日本の敗戦のよって棚牡丹的に手に入れた「自由」と「民主主義」の価値を放棄し、昔ながらの「華夷秩序」、「冊封」の時代に回帰する事、もっと露骨にいってしまえば中国の属国になる事に他ならない。これこそが、朴槿恵大統領の父親朴正煕元大統領が最も忌避した朝鮮半島に脈々と伝承される「事大主義=長い物には巻かれろ」に他ならない。上述の通り、この方向に舵を切れば間違いなく対米、対日関係を毀損し、更には中国との間の領土問題に苦しむ東南アジア諸国との関係も悪化し、アジアで孤立する展開となる。

朴槿恵大統領は残りの任期三年半のために国を売るのか?

朴槿恵大統領は元々政治家としての実績がある訳ではない。行政をグリップする能力も未知数である。朴政権とは例えてみれば、国民の支持率に支えられた、実体のない「浮き草」の如き存在である。従って、「支持率が」政権の命綱という事になる。こんな朴槿恵大統領に取って、韓国ギャラップ最近の調査結果は看過出来るものではない。例えは下品かも知れないが「御尻に火が付いた」という事である。

韓国の世論調査会社、韓国ギャラップは4日、今月1~3日の調査で朴槿恵大統領の支持率が政権発足以来最低の40%となったと明らかにした。前週よりも2ポイント下落し、不支持率は3週続けて政権発足後最高の48%

朴槿恵大統領の現在の状況とは、「乗っていた車が故障し、立ち往生」といったところではないのか? そこに、中国がやって来て救いの手を差し伸べてくれた。別の車がやって来て、親切にも送ってくれると。しかしながら、朴槿恵大統領の目指す目的地に本当に送ってくれるのか? その代償は? 誰も知らない。こんな大事な話を国民的議論もせずに決めてしまう。そして、問題が顕在化すれば「恨千年」とか何時ものフレーズを繰り返し、責任を第三者に転嫁する。これはもう、朝鮮半島の人間の痼疾ともいうべきものであろう。

成程、中国の属国になる事で論考褒賞として韓国主導で南北統一を達成出来るかも知れない。更には、対中輸出や中国国内での工場操業で日本と比べ良い待遇を得る事も可能であろう。しかしながら、中国の属国となる事で韓国の国際社会での地位は失速する。間違いなく、朴槿恵大統領は残りの三年半の任期の為に韓国を売ったと厳しい批判に晒される事になるはずである。

根底にあるのは北東アジアに訪れたGzero時代

アメリカが軍事予算を削減する事なく、今後も従来同様北東アジアの安全保障にコミットしておればこの様な展開は回避出来たはずである。しかしながら、実態はGゼロ時代に日本はどうやって生き残れば良いのか?で説明を試みた通り、真逆である。

ニューヨークタイムズはアメリカ政府が進める軍縮について詳しく説明している。現在の様な軍事支出を続けていてはアメリカの財政は持続不可能なので、第二次世界大戦前の規模に縮小するというのである。兵士の数をベトナム戦争の時の四分の一、44万人にまで減らす。アメリカは第二次世界大戦後「世界の警察」として世界の平和維持のために尽力して来た。これからは世界の警察官の数が減るという事である。

その結果、当然地域紛争は増加するだろう。隣国の領地を侵略する、或いは、軍事的冒険主義に走る国も出て来るだろう。日本はこのGゼロ時代に果たして生き残れるのか? 生き残りのため何をなすべきか? 国も日本国民もこの課題を本当に真剣に考えねばならない。

かかる状況下、安倍政権は集団的自衛権行使容認により日本の防衛力を高める事、及びPKO参加時の自衛隊運用規定を現実に即したものに改善する事で、積極的平和主義を貫き世界に貢献する日本を周知徹底する事で対応しようとしている。一方、韓国は中国の属国に回帰する事で生き残りを模索している。この決断のコントラストは日韓の歴史から来るものなのであろう。1989年のベルリンの壁崩壊から四半世紀を経て、北東アジアも又時代の分水嶺に立っている。日本国民の賢さが試されているという事である。