大阪府・泉南地域にあったアスベスト(石綿)関連工場の元労働者や遺族ら計89人が起こした集団訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は10月9日、「労働者の生命や健康を守るための粉じん対策を怠った」として国の賠償責任を初めて認める判決を言い渡した。時事ドットコムなどが報じた。
その上で、原告のうち二審で訴えが認められた54人に関し、国の上告を棄却。総額約3億3000万円の賠償を命じた判決が確定した。二審敗訴の28人については、敗訴判決を破棄した上で損害額算定のため大阪高裁に審理を差し戻した。一方で、国の責任を否定した時期もあり、その期間に就労していた7人は敗訴が確定した。
石綿の健康被害をめぐる国の責任について、最高裁が判断を示すのは初めて。責任が認められたことで、国に幅広い救済を求める声が強まりそうだ。
(時事ドットコム:石綿被害、国の責任認定=最高裁が初判断-泉南訴訟82人勝訴 2014/10/09 18:04)
■肺がん発症も、「静かな時限爆弾」
そもそも、「アスベスト」とは何なのだろうか。大量に吸い込むと、息切れがひどくなる「石綿肺」を引き起こす恐れがあるほか、長い潜伏期間を経て肺がんなどを発症させる可能性があるため、「静かな時限爆弾」と言われている。
◇アスベスト(石綿)◇
繊維状の天然鉱物。耐火材や断熱材として使用された。吸い込むと中皮腫や肺がんを発症する恐れがあり、2012年に使用が全面禁止された。潜伏期間は数十年に及ぶ。厚生労働省によると、中皮腫だけで13年までの10年間に1万1000人余が死亡した。死者は年々増え続けている。
(泉南アスベスト:健康被害、国の責任認める 最高裁初判断 - 毎日新聞 2014/10/09 15:15)
アスベストを使った紡織品は、断熱材や自動車のブレーキなどの製品に加工され、安価で取り引きされたことから高度経済成長期の基幹産業を支えたと言われている。
アスベストの使用は全面的に禁止されたものの、古い建物には建材の中に残っている場合もある。2011年の東日本大震災では、倒壊した建物の柱などからアスベストが次々に見つかった。
今回の上告審で原告側は、1971年まで排気装置の設置を義務付けなかったのは違法と主張していた。
国は1971年、工場内の粉じんを取り除く排気装置の設置を義務づけたが、小法廷は「58年には石綿の健康被害は相当深刻だと明らかになっていた一方で、排気装置の設置は有効な防止策になっていた」と指摘。「国は58年ごろ、できるだけ速やかに罰則をもって排気装置の設置を義務づけるべきだったのに、71年まで行使しなかった」と判断した。
元労働者側は、国が88年までに定めた工場内の粉じん濃度の基準値も不十分だった▽95年の防じんマスクの着用義務化が遅すぎた、と主張したが、これらの争点について小法廷は「国の規制が著しく合理性を欠くとまでは言えない」とした。
(アスベスト被害「国に責任」初の判断 最高裁、泉南訴訟:朝日新聞デジタル 2014/10/09 21:48)
夏休みを利用してアスベスト(石綿)含有建材の除去作業が行われ、報道陣に公開された。作業員は、マスクと防護服で厳重に身を包んで教室に(写真右)。除去する建材を粉じん飛散防止処理剤で湿らせながら、ヘラで削り落とす。カメラマンはプラスチックシート越しの撮影が許された(同左)(東京・北区内の小学校)=2005年7月27日
■菅官房長官「重く受け止めている」
判決を受け、菅義偉官房長官は記者会見で「国の責任が認められたことは重く受け止めている」などと述べた。
菅義偉(すが・よしひで)官房長官は9日の記者会見で、大阪・泉南地域の石綿被害をめぐる泉南アスベスト訴訟で最高裁が判決で国の賠償責任を認めたことについて「国の責任が認められたことは重く受け止めている。厚生労働省で判決に従って適切に対応する」と述べた。
(【泉南アスベスト訴訟】菅官房長官「重く受け止める」 - 産経ニュース 2014/10/09 17:04)
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