健康志向や在宅時間の増加などを受け、海外では若者を中心に低アルコール飲料に人気が集まっている。
日本でも、アサヒビールが今年発売したアルコール分0.5%の“微アルコール飲料”「アサヒ ビアリー」が早くも支持を得始めている。
さらに、9月28日にはアルコール分0.5%と3%のハイボール『アサヒ ハイボリー』が発売される。
「2025年までに、アルコール分3.5%以下のアルコール、及びノンアルコール商品の販売容量構成比を20%にする」ことを目標に掲げるアサヒビール。今後、その目標通り “微アルコール”の勢いは増していくのか?
同社マーケティング本部新価値創造推進部部長 梶浦瑞穂さん(以下、梶浦)に伺った。
「あえて飲まない」人が増えている
━━ まず、アサヒビールが提唱する「スマートドリンキング」とはなんでしょうか?
梶浦:お酒を飲む人も飲まない人もお互いを尊重し、それぞれが自分の体質や気分、シーンに合わせて、お酒の種類も飲み方も自由に選べる社会にしましょうという考え方が「スマートドリンキング(略してスマドリ)」です。
梶浦:スマドリを提唱する理由は3つ。1つは世の中の健康志向の高まりです。
2つめは「ソバーキュリアス(Sober Curious)」といって、お酒を飲めるけれど、あえて飲まない、あるいは少量しか飲まない人たちが増えているためです。アルコールで人に迷惑をかけたり、非効率的な時間の使い方をしたりすることを好まない、そんなスタイルが広がっているんですね。
3つめは規制です。WHOでも健康への悪影響を鑑み、アルコール摂取量を減らす動きが出てきています。それにともなって厚生労働省からも節度ある適度な飲酒を求める声が上がっています。
こうした社会的背景を受け、アルコール飲料メーカーとして何ができるのかを考え、2020年12月、「スマートドリンキング」宣言をしました。
「微アルコール」が飲む人にも飲まない人にも支持されるワケ
━━ 「スマドリ」の考え方を具現化したのが、「アサヒ ビアリー」というわけですね。
梶浦:弊社はこれまで様々なアルコール飲料を開発してきましたが、あくまでメインターゲットはお酒好き。「飲める人に満足してもらえる」商品が大半です。それ以外だとアルコール分ゼロのノンアルコールでした。
つまり、中間の商品がなく、飲むか飲まないかの二者択一でしかなかった。そこで誕生したのが「アサヒ ビアリー」です。
「アサヒ ビアリー」はベースビールを醸造後、時間をかけてアルコールだけ抜きとる「脱アルコール製法」で製造しています。これにより、ビール特有の複雑な発酵由来の香り成分を残すことができるので、アルコール分0.5%でも、麦のうまみとコクが感じられる味わいになっています。
━━「微アルコール」という新たな市場だと思いますが、反響はいかがでしょうか?
梶浦:売上は想定以上に伸びています。首都圏・関東甲信越で先行発売していた「アサヒ ビアリー」が6月末から全国発売となり、1-7月アルコールテイスト清涼飲料(微アルコール含む)の売上金額前年比126%、7月単月でも149%増となりました。完全に「アサヒ ビアリー」が売上の牽引役になっていることは間違いありません。
実際に、お酒の弱い方からは「こういうお酒を待っていた!」という声をたくさんいただいています。「本当はビールを飲みたいけど体質的には飲めない。アサヒ ビアリーならしっかりビール感が味わえる」と。
もちろん、お酒が好きな方からも大変好評です。「翌日の仕事のため、アルコールを控えたい時に飲んでいます」とか、料理しながら、ドラマや映画を観ながらといった「~しながら」という方、休日のランチビールとして飲んでくださっている方も多いですね。
「飲む時の本来の楽しさは残す」お酒好きこそ試したい微アルコール
━━ 好調とのことですが、課題に感じられたことは?
梶浦:大事にしたかったのはアルコールの総量を下げながらも、アルコールを飲む時の本来の楽しさは残すということ。なので、お酒が強い方にこそ、もっとスマドリを認識していただけたらと思っています。アルコール分は0.5%でも、コミュニケーションは活発になるし、ストレス解消にもなるなど、今までと同じベネフィットがあることを体験していただく場をもっと作りたいです。
そのためにも、飲食店向けに小瓶の「アサヒ ビアリー」も発売しました。今はコロナ禍でなかなか難しいところですが、1杯目は生ビールでも2杯目からは微アルコールといった具合に、外でもご自身の気分や体調に合わせて選んでいただけるようにしたいです。
びっくりする美味しさ。アサヒ ハイボリーが、スマドリに拍車をかける
━━ 9月に「アサヒ ハイボリー」が発売となります。微アルコール商品としてビールの次にハイボールを選んだのはなぜでしょうか?
梶浦:缶のハイボールはアルコール分が高いものが多く、実際、お客様に話を聞くと、外で飲めても家では缶一本も飲めないという声が多かった。そこで、度数が低く、かつ飲みやすいライトなハイボールとして「アサヒ ハイボリー」を出させていただきました。アルコール分は「アサヒ ビアリー」同様の0.5%に加え、より選択肢を増やすために3%も用意しました。
━━ 味はいかがですか?
梶浦:これがびっくりして。私自身、「アサヒ ビアリー」を初めて飲んだ時、ビールそのものの美味しさに驚いたのですが、「アサヒ ハイボリー」には感動すらしました。原酒には、弊社グループであるニッカ社のブレンダー室が徹底的にこだわったヘビーピートモルトを採用しています。この香り豊かな原酒のおかげで、既存のハイボールよりもハイボールらしい味わいになりました。ぜひ一度飲んでいただきたいですね。
━━ 「アサヒ ハイボリー」はどんな風に楽しんでほしいですか?
梶浦:ハイボールは、みんなで賑やかに、その場を楽しみながら飲むお酒というイメージがあります。「アサヒ ハイボリー」はそういうシーンも尊重しながらも、家でゆったり自分のペースで味わってもらえます。これまでハイボールはキツいから飲まなかったという方にも楽しんでいただけると思います。
スマドリってカッコイイよね
━━ 今後アサヒビールではどんな挑戦を考えていますか?
梶浦:「2025年までにアルコール分3.5%以下の商品の販売容量構成比を20%にする」という目標を掲げています。その実現に向けてビール、ハイボール以外の酒類での“微アルコール”カテゴリーを増やしていきたいですね。
そして、スマドリはポジティブなスタイルだということをもっともっと多くの人に知ってほしいです。ただお酒の量を減らすということでなく、飲める人も飲めない人もいていいし、飲み方もいろいろであっていい。多様性を尊重し合えるスマドリってカッコイイよねと称賛されるようにしたいと考えています。
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飲める人、飲めない人両者から愛される“微アルコール”。この新カテゴリーによって、状況や体調に応じて飲む、飲まない、が自分で選択できる「スマドリ」がライフスタイルのスタンダードになる日はそう遠くはなさそうだ。
アサヒ ハイボリーはどんな選択肢を増やしてくれるのか。ぜひ色々なシーンで飲んでみたいと思う。
◆ アサヒ ハイボリー 発売情報
全国発売:2021年9月28日(火)
(執筆:いのうえりえ/編集:Yue Murai)