実在しない街「アーグルトン」は、Googleマップに今も存在する

イギリスの「Googleマップ」上では、しばらくの間、「実在しない街」が掲載されていた。アーグルトン(Argleton)という街だ。

イギリスの「Googleマップ」上では、しばらくの間、「実在しない街」が掲載されていた。アーグルトン(Argleton)という街だ。

この街の話題がメディアを賑わせたのは2009年のことだ。オートン(Aughton)という実在する町の近くに、この町があるのが発見されたのだ。

Googleは当時、「The Telegraph」の取材に対し、このミスを見つけた人たちに感謝の意を示し、地図を「後日アップデートする」と約束した。

けれども、それから5年が経っても、アーグルトンはいまだに「存在」している。

Googleマップの訂正は2009年12月中旬に行われ、現在Google Maps上では、正式には「アーグルトン」を探すことはできない。けれども、この街がインターネットから完全に消えてなくなることはおそらくないだろう。アーグルトンは知らないうちに多くのサイトに取り込まれたため、「Yelp」などの人気レビューサイトでは、今でも「アーグルトンの近く」のパブやレストランや民宿が表示されるのだ。

アーグルトンが話題になったときには、これに触発された数多くの便乗製品が生まれた。「I Visited Argleton」(私はアーグルトンに行った)と書かれたTシャツが登場したり、近くのレストランでアーグルトン・パイが販売されたりしたのだ(パイの具は...何もなかった)。

また、ある新進作家は、暗くて不吉な様子のアーグルトンを題材とした魅力的な中編小説を執筆するとして、クラウドファンディング・サイト「Kickstarter」で5000ドルの資金を集めた。

最初にアーグルトンを発見した人物(隣町でウェブサービス会社を経営していた人物)の同僚であるロイ・ベイフィールド氏は、2009年2月に「アーグルトン」周囲を探訪し、ブログにその感想を掲載している

「私は、架空の場所が、インターネットの力によって現実化され、半分くらい実在することになったことに、すっかり魅了されました」と、ベイフィールド氏は「The Telegraph」に対して語っている。「この場所はすばらしいファンタジーだと思います。私は、別の宇宙、ナルニア国のような世界に関する、すばらしい空想の物語を作り始めました」

Googleはそもそもなぜ、「アーグルトン」を地図に掲載したのだろうか。最初に考えられた説は、これが「トラップストリート」だ、というものだ。トラップストリートとは、地図を違法に複製した人を特定するために、地図制作会社が地図に入れる架空の道路のことを言う。

あるいはGoogleは、単に遊び心で、架空の街を描いたのかもしれない。実際、その可能性を示唆する情報もある。「Argleton」の「Argle」は、「Google」と同じく、単語としては奇妙な発音だ。また、「Argleton」の各文字を並べ替えると、「Not real, G」(これは実在しません、Googleより)と読める文章を作ることができる。

アーグルトン周囲の風景は、今でもGoogleマップのストリートビューで見ることができる。だが、残念ながら、見えるのはほとんどヒツジばかりだ。暗い様子も不吉な様子もない。

好奇心がある人は、ぜひアーグルトンを訪れてほしい。イングランドのランカシャー州オートンにあるボールドレーン(Bold Lane)という場所で、車から降りればいい。

[Suzy Strutner(English) 日本語版:佐藤卓、合原弘子/ガリレオ]

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