反対運動が起きた東京・青山の児童相談所の今 来春の開設に向けて準備着々

一部の住民等が反対を主張する事態に発展したものの、区側はあくまで設置の方向性を貫きました。
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来春の開設に向け工事が進む
福祉新聞

 福祉施設の整備計画に対し、地元住民が反発して、延期や断念を余儀なくされる事態が起きている。東京都港区では児童相談所を核とした複合施設の設置をめぐり、一部の住民等が反対を主張する事態に発展したが、区側はあくまで設置の方向性を貫いた。区の児相設置準備担当に現状や今後の展望を聞いた。

 施設は児相に加え、子ども家庭支援センターと母子生活支援施設(10室)が一体となった地上4階建ての複合施設になる。家庭や育児に関するあらゆる支援をワンストップで提供する狙いがある。  

 児相の所長には他自治体の児相で長く勤務した医師を選任し、児童福祉司17人、児童心理司10人、保健師1人、非常勤の弁護士ら職員計約85人態勢を想定。人材育成専門員も配置し、職員のスキルアップにも力を入れる。

 昨夏に無事着工したが、道のりは決して平坦ではなかった。児童福祉法の改正に伴い、港区は2017年、児相の設置を表明。一等地として知られる南青山5丁目の約3200平方メートルの用地を国から購入した。

 区は同年12月から、住民説明会を計6回開き、各施設の役割や必要性を訴えた。配布資料には災害時の対応として、「区内避難所に出向き、心のケアにも取り組みます」などと明記し、地域貢献の観点もアピールした。

 ただ、一部の区民らが「必要性は分かるが、なぜこの場所なのか」「価値が下がる」などと強く反発。その様子は多くのメディアで報じられ、全国的な注目を集めた。

 区は説明会に加え、専用ホームページの充実▽区広報の臨時特集号発行▽学校や保育園を通じたパンフレットの配布など、広報を総動員して対応してきた。

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区広報の臨時特集号やパンフレットなど広報を総動員した
福祉新聞

  「区民の思いは多種多様で一概に現状認識を申し上げることはできないが、出来ることを着実にやってきた。今後も理解を頂けるよう努力していく」と、児相設置準備担当の保志幸子課長。

 区に寄せられる意見の7割以上は設置に好意的。昨今は「資格を持たないが、何か手伝えないか」と、ボランティアを申し出る声も寄せられ、「大変励みになっている」という。

 開設後の展望については、「秘匿性に配慮しながら、地域に開かれ、溶け込んだ施設」を目指したいとしている。

 児相はボランティアの育成や、学校、民生委員といった関係機関への研修など地域連携の取り組みを実施予定。

 母子生活支援施設では、子育て相談のアウトリーチや地域住民と協働した退去母子へのアフターケアなど「地域貢献」も実施する方針で、今後、指定管理者となる社会福祉法人「特別区人事・厚生事務組合社会福祉事業団」と協議して詰める。

 子ども家庭支援センターには地域連携担当の部署を新設し、要保護児童対策地域協議会や地域交流イベントなどの対応に当たる。

 併せて、防犯面にも万全を期す。建物には24時間365日警備員を配備するほか、母子生活支援施設の夜間配置は2人と手厚い体制を整える。

 人材確保など開設に向けた準備は順調で、2021年4月の開設を予定している。