一般に観測されるホール効果は、磁場の存在下で伝導体に電流を流すと横方向に電圧差が現れる現象である。強磁性物質はもともと磁性が備わっているため、異常ホール効果と呼ばれる同様の現象が、外部磁場が存在しなくても観測されることがある。しかし、異常ホール効果は、ゼロ磁場状態で正味の磁化が存在しない反強磁性体では通常起こり得ないと考えられていた。
今回、中辻知(東京大学)たちは、異常ホール効果の詳細な起源に関する最近の理論的概念に着想を得て、反強磁性物質であるMn3Snにおいても、その磁気モーメントが通常とは異なる複雑な配置をとる結果、直観に反する異常ホール効果が見られることを示している。この効果は、強磁性金属に匹敵するほど大きいだけでなく、弱い磁場を印加することで容易にスイッチングできる。これらの特性の組み合わせは、スピントロニクスへの応用に役立つと思われる。
Nature527, 7577
2015年11月12日
原著論文:
doi:10.1038/nature15723
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