「世界遺産にするなら強制徴用の説明を」 韓国が積極外交【軍艦島】

軍艦島の愛称で知られる長崎市の端島(はしま)などの世界文化遺産への登録を阻止するために、韓国が世界各国に反対を呼びかけるロビー活動を展開している。
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Kenji Ando

軍艦島の愛称で知られる長崎市の端島 (はしま)などを世界文化遺産に指定する動きに対し、韓国人労働者の強制徴用の歴史を盛り込むように、韓国が各国政府に働きかけを強めている。韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相は6月12日にドイツ、13日はクロアチアを歴訪。両国に対し、現状では世界遺産指定に同意しないように訴えた。

■「悲しい歴史を美化するものだ」 韓国政府が反発した理由

軍艦島を含む国内23施設を「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」として、日本政府は世界文化遺産に推薦していた。その結果、5月4日に国連の諮問機関「国際記念物遺跡会議」(イコモス)は「登録が適当」と国連教育科学文化機関(ユネスコ)に勧告した

これに韓国政府は猛反発した。「23施設のうち軍艦島を含む7施設で、戦時中に朝鮮人労働者が強制徴用された」として、世界遺産への登録に反対する意向を示している

5月22日にも、日韓両政府による「明治日本の産業革命遺産」に関する協議が都内で開催されたが、平行線に終わった。47NEWSは、以下のように韓国側の主張を伝えている。

「国は23施設のうち、戦時中に朝鮮半島出身者が強制徴用された7施設(福岡、長崎、熊本の3県)は世界遺産にふさわしくないと訴えているんだ。計約5万7900人の朝鮮人が送られ、計94人が死亡、5人が行方不明になったと主張していて、徴用に触れる形で対象施設の歴史説明をすることも求めている。

世界遺産登録をめぐる日中韓摩擦】「強制徴用の施設」と反発 登録勧告、覆った例も 2015/06/13 13:22)

6月9日にはソウルで当局間会議を実施。このとき、韓国側は7施設の登録撤回ではなく、対象施設の説明に強制徴用の歴史を反映させるように妥協案を提示した

しかし、日本側は登録を目指す施設は1910年までの歴史を対象としており、強制徴用が行われた1940年代とは時代が異なると改めて主張した。協議はまとまらなかった

■委員国の「3分の2以上の賛成」が必要になるケースも

世界遺産の指定の際に、イコモスの勧告はそのまま受け入れられるのが通例。6月28日からドイツのボンで開かれる世界遺産委員会で正式に審査される。委員会で合意がまとまらなかった場合には、投票となることもあり、日本や韓国など委員国21カ国のうち投票総数の3分の2以上の賛成が必要だ。 そこで、韓国は3分の1の反対票を集めるために積極外交を展開している。

韓国の尹外相は12日、ドイツのシュタインマイヤー外相と首都ベルリンで会談。世界遺産委員会の議長国を務めるドイツの協力を求めた。シュタインマイヤー外相は「韓国の立場はよく分かっており、世界遺産条約の精神に合致する方向で、韓日間で合意に至ることを期待している」と述べたという。 

尹外相は続いて、世界遺産委員会の副議長国であるクロアチアを訪問。首都ザグレブでプシッチ第1副首相兼外務・欧州問題相と会談した。プシッチ氏は「(韓国と)よく似た歴史的経験を持つクロアチアとして韓国の立場を十分理解し共感する」と述べる一方、世界遺産条約の精神と趣旨に合致した方向で日韓の合意が図られることを期待すると表明した

韓国外相のクロアチア訪問は1992年の国交樹立後初めて。尹外相は14日には、ニューヨークで世界遺産委員会メンバーのマレーシアの外相とも会談する予定だ。

■セネガルは日本支持を撤回

実際に韓国のロビー活動が奏功して、日本への支持を表明していたセネガルは支持を撤回している。

テレ朝ニュースによると、韓国とセネガルの首脳会談の際に、朴槿恵(パク・クネ)大統領から協力を求められたサル大統領は「投票までいかずに日韓の対話で一致点を見つけることが重要だ。もし、最終的に投票となれば、棄権するか今年の登録を見送り、日韓がもっと対話できる場を設ける役割を果たす」などと述べたという。

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