東京都内の公立図書館で「アンネの日記」やホロコーストに関する本が300冊以上、破損された事件を受け、イスラエル大使館は被害のあった図書館の自治体に対し、新たな本300冊を贈呈する。
駐日イスラエル大使館のペレグ・レヴィ公使と日本ユダヤ教団のフィリップ・R・ローゼンフェルド会長は2月27日、121冊と被害が最も多かった杉並区を訪れ、田中良区長に手始めの本3冊を手渡す贈呈式を行った。レヴィ公使は「平和な日本でこのような事件が起きたことに衝撃を受けた」としてイスラエル国内でもショックを受けている国民がいることを明かしたが、両国の友好関係が損なわれるものではないと強調。犯人について「臆病者だ」と厳しく批判した。
贈呈式で寄贈された「アンネの日記」関連の本
レヴィ公使は、最初にこの事件のニュースを知った時、日本で起きたということが、とてもショックだったという。「他の国ではなく、平和な国という認識を持っていた日本で、ということが特に衝撃でした。しかし、この事件が報道されてから、『日本人として大変、申し訳ない』という謝罪のメッセージを多く受け取り、これはごく一部による犯行だとすぐに理解しました」
レヴィ公使によると、世界的にもこうしたユダヤ人迫害についての本ばかりを狙った“テロ”は他に例を見ないことから、イスラエル国内でも反響が大きかったようだ。この事件は、ハフィントンポストが2月20日に報じたことを受け、アメリカのユダヤ人団体「サイモン・ヴィーゼンタール・センター」が、強い懸念を示す声明を発表、世界の主要メディアも報じていた。
「この事件はすでに世界で報道されていますので、広く知られています。イスラエルでももちろん、みんな驚きました。日本は温かい国という印象があるからです。しかし、イスラエル国民も、これは単独犯の犯行だと考えており、日本国民の皆さんがそうではないとわかっています」とレヴィ公使は語った。しかし、犯人に対しては「関わりあいを持ちたくはありませんが、臆病者だと思います」と厳しく批判した。
本の寄贈を受け、田中区長はレヴィ公使に対し、日本国内では図書館の本を破損しても器物損壊罪という比較的、軽い罪にしか問われないが、国際問題となっているこの事件を重く見た警視庁が捜査本部を立ち上げて捜査していることを説明。日本の歴史をひもとき、こう語った。
「日本はかつてヒトラーと手を結び、歴史に汚点を残した。ただ、そういう暗い時代の中でも、リトアニアの領事館にいた日本人外交官だった杉原千畝が、ユダヤ人に対して約1500通のビザを発行してその命を救いました。日本はもともと、そういった人道主義や平和への強い思いがある。犯行は組織的に行われている可能性もありますが、怯まず、厳正に対処するということが私たちのとるべき大事な態度だと思います」
握手する駐日イスラエル大使館のペレグ・レヴィ公使(中央左)と田中良杉並区長
■東京都立図書館に「杉原千畝」名乗る人物から137冊届く
イスラエル国民だけでなく、この事件にショックを受けたのは本を愛する日本国民かもしれない。図書館に対する支援の輪も広がっている。東京都立図書館には2月24日、「杉原千畝」を名乗る人物から、「アンネの日記」など137冊の本が詰まったダンボール箱が届けられたという。杉原さんはすでに1986年、亡くなっていることから、都立図書館では匿名人物からの寄贈本として、東京都内の図書館に寄贈本の受け入れ希望を募る予定だ。担当者は「被害にあった図書館からの希望を優先させたい」と話している。
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