「アンネの日記」や関連図書が東京都内の公立図書館で大量に破かれるという事件の報道を受け、日本図書館協会は2月25日、「公立図書館における『アンネの日記』破損事件について」という声明を発表、遺憾の意を表明した。アンネの日記事件は海外でも報道が相次いでおり、国内関係機関の適切な対応が求められている。
■対応に苦慮する日本図書館協会
連日の報道を受け、日本図書館協会(東京都中央区)は2月25日、声明を発表し、遺憾の意を表明した。
公立図書館における「アンネの日記」破損事件について(声明)
最近の報道によると、東京都内の複数の公立図書館で、蔵書の「アンネの日記」及び関連図書が、複数ページにわたって破り取られるという事件が起きている。その被害状況は都市部の3市5区に及び冊数は300冊に上るとの報道もある。
図書館の蔵書は、単に公の物理的財産というにとどまらず、人類共有の知的・文化的な財産である。公立図書館は、そのような人類共有の知的・文化的財産を市民が共有し、広く市民の読書に提供し、次の世代に伝えていくことを任務としている。
どのような理由があれ、このような貴重な図書館の蔵書を破損させることは、市民の読書活動を阻害するものであり極めて遺憾なことである。今回の事件について日本図書館協会は、図書館の所蔵する文化資産が広く市民に提供されることを願うものとして、非常に残念に思っている。
国内外で反響が広がっているが、日本図書館協会では独自調査や図書館に注意喚起をするなどの予定はないという。西村彩枝子専務理事は、「組織的な犯行なのか、思想的な背景があるのかなど想像はできますが、今、憶測で発言すると別の影響が考えられるので、何もできない。捜査機関に任せているのが現状。対応は各図書館が協議して考えていると思います。大げさかもしれませんが、(注意を呼びかけるなど)図書館の運営に日本図書館協会が介入することは避けたい」と説明する。
しかし、被害は拡大、「アンネの日記」や関連書籍をカウンターに別置きするなどの“自衛”に出る図書館も出てきている。「本を切り取られて困るからと言って、本を引っ込めたりすれば犯人の思うつぼ。愉快犯による別の被害が出る可能性もあり、とてもはがゆい」と西村専務理事は苦慮をにじませた。
■海外主要メディアが報じる「アンネの日記」事件
アンネの日記事件は海外でも反響が広がっている。BBCやCNN、ニューヨーク・タイムス、ウォール・ストリート・ジャーナルなどが報道、海外の主要メディアが取り上げた形だ。報道では、日本人と「アンネの日記」の歴史や、アメリカのユダヤ人団体「サイモン・ヴィーゼンタール・センター」(本部ロサンゼルス)が2月20日、「強い衝撃と懸念」を示す声明を発表、日本の当局に対し犯人の特定と対処を求めていることなどについて言及。国際的に注目を集めている。
「アンネの日記」破損事件が国際問題となっていることを受け、菅義偉官房長官も2月21日、「我が国として受け入れられない恥ずべきこと」と遺憾の意を表した。また、警視庁も捜査本部を立ち上げ、本格的に捜査に乗り出したと報じられている。
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