人間の鼻から脳に侵入して命を奪う微生物「殺人アメーバ」が、温暖化に伴ってアメリカで感染例が北上していることが分かった。
■殺人アメーバとは?
「MSDマニュアル家庭版」によると、アメーバの1種「フォーラーネグレリア」は、世界中の温かい淡水に生息している。小児や若い成人などが汚れた水場で泳いでいるときに、アメーバが鼻を通って脳に到達して「原発性アメーバ性髄膜脳炎」(PAM)を引き起こす。健栄製薬では「脳を破壊してしまう感染症」と記載している。
PAMになると、嗅覚や味覚の変化、頭痛、項部硬直、吐き気、嘔吐といった症状から急速に進行し、錯乱を起こして死に至る可能性があるという。このため、フォーラーネグレリアは「殺人アメーバ」とも呼ばれている。
日本でも1996年に食品加工工場の事務員だった佐賀県鳥栖市の25歳女性が感染して死亡。解剖したところ、女性の脳は半球の形状を保てない程、柔らかくなっていたという。
■アメリカでの感染例が北上していた
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の研究チームは12月16日、1978年から2018年までにアメリカで報告されたPAMの症例85件を分析して、専門誌で発表した。
これまで主に南部が多かった症例が近年は、中西部でも確認されていると報告。症例が確認された地域の最大緯度を比較したところ、年間約13.3キロの速さで北上していたことが分かったという。感染源になったのは、85件中69件が湖や池、14件が川、2件が屋外のレクリエーション会場だったという。
研究チームは「気温の上昇と、その結果としての水泳やウォータースポーツなどのレクリエーション用水の使用量の増加が影響を与えた可能性があります」とコメントしている。