今年の4月、AmazonはAmazonの販売者に対して金銭と引き換えに4つ星や5つ星の良い評価や商品レビューを行っていたウェブサイトの運営者を訴えた。多くのウェブサイトは閉鎖し、関連する販売事業者にもAmazonは措置を講じた。今回Amazonは同じように捏造したレビューを提供する個人まで追及する姿勢を見せた。Amazonは今回、オンラインでフリーランサーに仕事を発注できるfiverr.comを使用して捏造した商品レビューを提供した個人を訴えた。
今回の裁判で「John Does」などという名を使って被告人は、Amazonのレビュー欄にポジティブな内容を記載したり、5つ星のレビューを投稿する仕事をfiverr.comで募っていた。さらには「認証」レビューも提案していた。つまり、彼らは対価を得る代わりに商品を購入してレビューの投稿を行っていた。また、販売者が準備した商品レビューを代わりに投稿する場合もあった。
fiverrを知らない人のために説明すると、fiverrは仕事の受発注ができるサイトで、5ドルから小さなタスクやサービスを掲載できる場である。サイトの名前は5ドルから仕事を受発注できるところからきている。多くの小さなタスクやこのような「ギグ」と呼ばれる仕事には執筆、翻訳、デザイン、編集やプログラミングの手伝いといった内容のものが多い。ただ、このサイトは捏造レビューや評価を求める者がそのためのリソースを探す場にもなっていた。それにはAmazonだけでなく、App Storeを含む他のサイトやサービスも含まれる。
このような「ギグ」はfiverrの利用規約に反している。fiverrの利用規約には「ギグ」はサードパーティの利用規約に反するものであってはならないと明記されている。
訴状でfiverrが名指しされていないのは、Amazonは自社の利益のために詐欺活動を積極的に行っているサイトにしか処罰を求めていないからだ。これまでfiverrはAmazonと協力して、このような投稿の削除に努めてきた。
「fiverrは投稿の削除を行っていますが、それだけでは根本的な解決になりません」とAmazonのスポークスマンは伝える。
今回の訴訟の大きな目的は、fiverrに「商品レビュー」の仕事募集の掲載に対して厳格な措置を取るように求めることではなく、全体の環境を変えることにある。つまり、Amazonがウェブサイトの運営者や販売者だけでなく、そのような仕事募集を掲載するなどの活動を行っている個人をも訴える可能性があることを知らせることで、そのような人たちが今後は違う種類の「ギグ」を行うように変えたいのだ。
訴状に直接的に挙げられているのは、fiverrで商品レビューを行うと掲載した数人分の事例だが、添付の「Exhibit A」にはさらに数百のfiverrユーザー名を掲載している。掲載しているのがfiverrのユーザー名だけということは、Amazonはまだそれぞれのユーザーの個人情報は入手していないということを示しているのだろう。fiverrのログからそれらの情報を得るため、訴訟を起こすことが最初のステップだった。
Amazonは法廷に、それらの個人に対しAmazonのレビューの仕事募集の掲載を止めること、そして彼らに発注したクライアントの情報を開示することを求めている。誰が仕事を依頼したかや行ったレビューの情報開示を求めている。また、訴状にはfiverrのユーザーに対してAmazonは賠償を求めることが示されている。Amazonは法廷に、被告人に対して裁判費用、弁護士費用、そして「追加的なさらなる賠償」の支払いを求めるとしている。ただし、具体的な金額は明記されていない。
Amazonのレビューシステムは1995年6月にローンチ以来これまで1億以上のレビューや評価が集めてきた。その分量と重要性を鑑みて、Amazonはレビューシステムをフルタイムで管理するチームを保有し、捏造レビューを毎日削除している。Amazonは6月にはさらに機械学習によるシステムを展開し、関連性の高く、最新の信頼できるレビューの選抜を行っている。機械学習は今後も時間をかけて学習と最適化を図る。
4月に行ったAmazonの調査は、Amazonが捏造レビューの問題と真剣に向き合っていることを示すものだ。この捜査の後、レビューを販売していたウェブサイトは閉鎖し、該当商品は凍結し、それらに関わったAmazonの販売者も除名された。
ただ、捏造レビューがほんのいくつかあるだけでAmazonの評判は傷つく恐れがある。
「誠実でバイアスのないレビューは、カスタマーがAmazonを信頼し、Amazon.comで買い物をする安心感につながります」とAmazonは訴状で説明している。「Amazonはカスタマーレビューの信頼性をとても重要視しています」。
このような捏造レビューの仕事掲載ができるギグマーケットプレイスはfiverrだけではない。この訴状は、氷山の一角に過ぎないのかもしれない。他にはまだ何も提出されていないが、Amazonは今後、他のサイトのユーザーも訴えることが考えられる。
「Amazonのレビューの大半は信頼でき、何万人のカスタマーが情報に基づいて購入判断をするための指標になっています。私たちの目標は、カスタマーが安心してレビューを目安にできるようにすることです」とスポークスマンは、私たちがコメントを求めた際に答えた。「数は多くありませんが、私たちのガイドラインに反するレビューを検知して排除するために、複数の仕組みを採用しています。私たちはシステムを傷つけるようなアカウントは凍結し、法的な処置を取ります。私たちは現在ここに掲載している者を含め、そのような個人に法的な処置を取っている最中です」。
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(2015年10月17日 TechCrunch日本版「Amazon、fiverr.comで捏造レビューを仕事にする個人を訴える」より転載)