英BBCは、ネット通販大手アマゾンの物流センターの労働環境について潜入取材を行った。23歳のアダム・リトラー記者が、派遣社員の「ピッカー」として入り込んだのだ。
同記者の取材によると、従業員たちは「想像を絶する」プレッシャーを受けており、「奴隷のように」労働させられている。1回のシフトで17キロメートルもの距離を歩かされ、「33秒に1つ」の割合で商品を集めなければならないという。
物流センターで働く従業員の話によると、その過酷さは「強制労働収容所」並みであり、従業員たちのプレッシャーは、「精神的および身体的疾患」につながりかねないほどだという。
取材対象になった職場は、英国ウェールズ南部の都市スウォンジにあるアマゾン物流センターで、広さは約7万5000平方メートルだ(約2万2000坪で、東京ドームの約1.5倍)。
同記者は、収集すべき商品の指示が表示される携帯端末を手に、台車を押して作業した。この端末には、各商品を探すための制限時間が表示され、カウントダウンされる。また、違う商品を収集すると、スキャナーが警告音を発する。
「われわれは機械、ロボットだ。スキャナーのスイッチを入れ、それを手に作業をしているが、むしろ、私たち自身にスイッチを入れているようなものだ」と記者は語る。「われわれは何も考えずに、ただ作業するだけだ。たぶんそれは、彼らがわれわれを信頼していないからだろう」
スキャナーは商品の収集スピードを監視しており、遅すぎると、訓練を受ける必要があると警告される。10時間半の夜間シフトを終えた記者はこう述べた。「足を引きずりながら、かなりの距離を歩いた。昨夜の歩行距離は17キロメートル弱というところだろう。もうくたくただ。正直言って、一番つらいのは足だ」
「まさに身を粉にして働くという感じだ。しかも、ねぎらいの言葉もなければ、ひと息つく暇も与えてくれない。こんな仕事は初めてだ。信じられないほどのプレッシャーだ」
10時間半の夜間シフトのうち、休憩は1時間が1回。夜間作業の時給は8.25ポンド(約1352円)で、日中の6.5ポンド(1066円)より高かったという。
アマゾンの広報担当者はこうコメントする。「わが社は従業員の安全を最優先にしており、法令および雇用法をすべて順守しています。第三者的立場にある法律、健康および安全面の専門家より、当社の作業過程は整然かつ確実に法に準拠したものであるとの評価を得ています」「独立した専門家の意見では、ピッキング作業はほかの多くの業界における同様の作業と似たようなものであり、精神的および身体的な疾患の恐れを増加させるものではないとのことです」
「生産性目標は、これまでの労働実績に基づいて客観的に設定されています。当社発送センターの職務には、肉体的に負担の大きいものも含まれているため、関連するポジションの求人および採用の際は、その点を明確にしています。活動的な作業内容を好み、自らそういった職務を希望する従業員もいますが、肉体的に負担の少ない作業を好む従業員に適した仕事も用意されています」
※ドイツの公共テレビARD(ドイツ公共放送連盟)傘下のヘッセン放送も2013年2月、同国のアマゾンで働く外国人の派遣労働者の実態をルポして話題になった。
[Asa Bennett(English) 日本語版:遠藤康子/ガリレオ]
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