Amazon が人々の実店舗での購買行動も把握する日が来る

1年ほど前に、Microsoft 時代の同僚だった Charlie Kindel が Amazon にヘッドハントされ、何やら新しいプロジェクトを立ち上げたということで注目していましたが、ようやくその全貌が明らかになりました。
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1年ほど前に、Microsoft 時代の同僚だった Charlie Kindel が Amazon にヘッドハントされ、何やら新しいプロジェクトを立ち上げたということで注目していましたが、ようやくその全貌が明らかになりました。

Amazon Local Register というモバイル版のクレジットカード用レジです。このビジネスを最初に立ち上げたのは Square です。Square は、移動式のフードトラックや屋台などのニッチな市場を上手に開拓しましたが、ついに Amazon という巨人がこの市場に名乗りを上げたのです。

Square は、1回のトランザクションごとに 2.75% の手数料で商売をしていますが、Amazon は、今申し込めば 2016年まで 1.75% という魅力的な手数料で、単に Square から既存の顧客を奪うだけではなく、新規の顧客も確保しようとしています。クレジットカード会社側が取る手数料の高いアメリカンエクスプレスも含めて 1.75% という手数料の低さは、Amazon の(クレジットカード会社との)交渉力の強さを物語っています。

ちなみに、Amazon の戦略を見る時には「点」だけを見ては理解できません。つまり、このケースでも、単に「Square という会社が先人を築いたモバイル決済の市場に Amazon が乗り出した」という単純な話ではないのです。

すでにご存知の通り、Amazon はオンライン・ショッピングの王者です。消費全体のオンラインの比率が増えれば Amazon のビジネスも成長しますが、Amazon 自身も決してオンラインが全てではないことを知っており、実店舗での消費活動に Amazon として絡む方法を模索しており、このモバイル決済もその一つなのです。

Amazon は、全米各所に設置した巨大な配送センターを活用して、小売りだけでなく、卸売り市場でも着実にシェアを伸ばしています。今回のモバイル決済と合わせると、小売店は、Amazon から仕入れて、Amazon の決済システムを使って販売する、というまるでお釈迦様の手のひらの上でビジネスをするような状況に置かれることになります。

膨大な顧客のクレジットカード情報を握っている Amazon が小売店での決済システムに関わるということは、オンラインと実店舗の両方での消費行動を把握することを可能にします。近いうちに、実店舗でしか買ったことのない商品と関連のある商品を amazon.com がおすすめしたり、という時代が来るのだと思います。

週刊 Life is beautiful、8月19日号からの転載】