アルツハイマー病の進行には脳の炎症が大きく関係している。
脳の炎症が、アルツハイマー病の進行に大きく関係している可能性があるという研究結果が報告された。
この新たな研究報告によると、脳の炎症を抑えることがアルツハイマー病の治療や予防につながる可能性があることが分かった。イギリスのサウサンプトン大学の研究チームが行った一連の実験を通じて、神経炎症を抑える化学物質が、アルツハイマー病にまつわる記憶障害や行動の変化を予防する可能性が報告された。この病気をめぐっては、約530万人のアメリカ人が罹患している。
「この研究によって、アルツハイマー病に挑戦できる道を示すことができた。できるだけ早く、臨床の現場に導入すべき時だ」。1月8日発行の学術誌Brainに掲載された論文の主執筆者である、ディエゴ・ゴメス・ニコラ医師はこう述べた。
免疫システムの過度な活動が慢性的な炎症につながる可能性については、これまでの研究でも既に報告されている。今回の新しい発見で、炎症がアルツハイマー病の結果に起こるものではなく、アルツハイマー病の原因だということが明白になった。
「高齢化が進む一方で、ここ数十年は新しい認知症の薬が発見されていないこともあり、アルツハイマー病の進行を遅らせたり、治療できたりする方法の発見の必要性がこれまで以上に高まっている」
- アルツハイマー病学会研究開発ディレクターのダグ・ブラウン博士
この実験の1つでは、研究グループは健康な脳と、アルツハイマー病にかかった患者の脳の組織を観察した。そして、アルツハイマー病にかかった患者の脳組織では、脳や脊髄(せきずい)にある免疫細胞「ミクログリア」の水準が高くなっていることが分かった。このことは、より炎症が進んでいることを示している。
アルツハイマー病が重篤になるにつれて、ミクログリアの数を調整する分子がより活発になり、その結果として、脳で炎症が引き起こされていたのだ。
また、アルツハイマー病と似たような状態のマウスを用いた実験では、GW2580という化学物質が記憶障害と問題行動を減らすことが発見された。
これらの物質はマウスのミクログリアの増加を抑え、一度ミクログリアの数が安定すると、病気の進行も止まることが分かった。アルツハイマー病の患者は、脳の神経細胞間の伝達が断続するということが起きているが、GW2580はこれを抑えることに役立つ。
GW2580を含む薬をこれらのマウスに投与すると、薬を投与していないマウスと比べ、記憶障害や問題行動が減少するという結果が出た。
「これらの発見は、アルツハイマー病の治療法の開発のための道筋が明らかになったことを示す証拠のようなものである」。ゴメス・ニコラ博士はこう発表文で述べた。「この研究の次のステップは、同じ分野のパートナーと一緒に、安全で安定した治療薬を発見し、実際の人間にも効果があるかを検討することにある」
この研究結果は、炎症を抑えるような食生活や生活様式が、アルツハイマー病の予防において重要であることも示している。しかし、研究グループによると、まだ推奨できる段階には至っていない。
科学界の他の研究者たちも、「エキサイティングな大発見」「励みになる」などと今回の結果について話題にしている。
「高齢化が進む一方で、ここ数十年は新しい認知症の薬が発見されていないこともあり、アルツハイマー病の進行を遅らせたり、治療できたりする方法の発見の必要性がこれまで以上に高まっている」。アルツハイマー病学会研究開発ディレクターのダグ・ブラウン博士はBBCニュースにこう述べた。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
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