ワシントン - ロシアのプーチン大統領が最も恐れる男が、新たな標的に狙いを定めた -- ソチ冬季オリンピックである。
アレクセイ・ナワルニー氏は、弁護士で著名な反政府ブロガー、そして2013年のモスクワ市長選候補者であるが、ハフィントンポストとのインタビューで自身の最新のプロジェクトを示した。大会費用の詳細レポートである。この大会費用は、史上において最も高いという見積もりが出ている。このレポートは、WikipediaやGoogleマップを合わせたようなウェブサイトで公開した。
「少し前のインタビューで、プーチン氏とメドヴェージェフ氏は、汚職の事実はないと主張した。もし汚職の事実があれば、当然報告する義務がある。」ナワルニー氏はモスクワから電話で語った。「私たちのレポートは価値がある。もし汚職の事実をお望みならその事実を提供する。非常に明白な内容で、プーチンの親友たちに関わることだ」
ナワルニー氏は現在37歳で、インターネットを用いて汚職を暴露することで有名になった。この国では、誇張でなく汚職が蔓延しており、批判する人は頻繁に殺害されたり拷問されたりする。彼は、RosPilというウェブサイトを立ち上げたが、これは国家契約における汚職を暴露するためだった。その後、彼は、住民が政府への苦情を申し立てることのできるサイトを立ち上げ、道路やアパートの状況を報告し、当局が修復を完了するよう圧力をかけられるようにした。
彼は、2011年と2012年の大規模な抗議行動の大半を主導し、それらは、プーチン氏が政権を握ってから最も重要なものであったが、沈静化してしまった。しかし、2013年7月に、ナワルニー氏は、キーロフの木材企業から50万ドルを横領した罪で有罪判決を受けたが、多くの人々は裁判に不正があったとみている。彼はその年の9月にあったモスクワ市長選で、30%近くの票を獲得し、クレムリンの支援を受けたセルゲイ・ソビャーニン氏に決選投票で僅差で負けた。異例なことに10月、一審で懲役5年の判決を受けて釈放されていたナワルニー氏の控訴審判決は延期された。
ソチのプロジェクトは、ナワルニー氏にとって反汚職ブログへの復帰を意味する。今ではインターネットによる彼の影響力は広範囲に及ぶ。約52万4,000のTwitterのフォロワーに加え、ロシアで現在も広く使用されているプラットフォームであるLiveJournalでは、毎月200万人以上のユニーク訪問者がアクセスしている。
レポートは、彼のFoundation For Fighting Corruption (汚職と戦うための財団) により公表され、それによると、オリンピックに関連する少なくとも10のプロジェクトにおいて、費用が1.5倍から2.5倍以上水増しされているという。グループによるとさらに、大会への「個人」投資家の大半は、ロシア連邦政府とつながりをもっているという。レポートは最終的に、政府がオリンピックに251億ドルを費やしたと見積もっている。これはプーチン氏が頻繁に示してきた64億ドルをはるかに超える額だ。
251億ドルの公的資金に加え、地域政府が10億ドル、また国有企業が105億ドルを投じ、国有銀行のVnesheconombankは76億ドルを融資し、民間投資は合計でわずか16億ドルであると、グループは見積もっている。
このレポートによれば、全て合わせると、大会は458億ドルかかることになる。
ソチに関連する汚職は、もはやありふれたものとして横行し、Russian Esquire誌が、市内にある30マイルの道路は、フォアグラを8インチ積み重ねて舗装した方が安かっただろうと皮肉ったほどである。ナワルニー氏が提供した数字は、複数の報道機関が、大会の総費用として言及している500億ドル強という金額にほぼ合致する。
ナワルニー氏のレポートは、プーチン氏の友人であるArkady Rotenberg氏が、オリンピック関連の契約で74億ドルを受け取ったとし、これはブルームバーグによる予測値にも合う。レポートはまた、オリンピック関連の建設を担当する国営公社Olympstroiは、予算の82%を給与に費やしたとし、これは2012年の月平均給与が13万7,500ルーブル、つまり4,000ドル近くであったということを意味する。政府の公表では、ロシアの平均的な月給は3万ルーブルで、これは869ドル程度である。
ナワルニー氏は、初めて大会に対する分析を公表した人物ではない。野党党員のボリス・ネムツォフ氏とウラジーミル・ミロフ氏は、不正選挙に関する長いレポートを作成し、独自の調査内容を発表している。また国連環境計画やヒューマン・ライツ・ウォッチといった独立機構もレポートを公表している。
ナワルニー氏は、他の調査結果を評価しながらも、自分のレポートは特に価値があるとし、それはグループには国家契約の汚職を暴露する取り組みを行った過去があるためだと言う。「当局は、信用できる情報源ではないとし、批判する人々に耳をかさない。彼らの提示する数値は確認されたものではなく、それを算出した人間も専門家ではないと言う。」彼は語った。「私たちのレポートは特に、一部の人間がFighting Against Corruption Foundation (汚職と戦うための財団) で働いており、政府の金と経済の動きに非常に詳しいという点で他とは異なる。」
しかしながら彼は、ソチに関することはすでにほとんど公表されている内容だという点は認めている。「私たちのレポートには、驚くべき新情報はないと言えるだろう。しかし、他の調査内容を全面的に裏付け、正式な調査や関係人物の告訴に利用できる内容だ。」
ナワルニー氏の調査の大半は政府内部で行き詰ったが、彼の申し立てによってプーチン氏に近い1人の政府高官をしとめることに成功している。Vladimir Pekhtin氏は、プーチン氏の所属する党のベテラン下院議員で、正式に公開されていない不動産をフロリダ州マイアミビーチに所有していることをナワルニー氏が明らかにしたのち、議員辞職した。またロシアの政治体制では、オリンピックが終了したのち、オリンピックにかかった費用に対する一般市民の怒りを静めるために様々な人々が告発されることも、十分あり得る。
オリンピックに対するナワルニー氏の評価対象は、費用だけではなかった。彼はプーチン氏がトップの政治犯に与えた恩赦を一笑に付した。オリンピックで世界の注目を浴びていたことが恩赦を後押ししたと見られていたが、ミハイル・ホドルコフスキー氏、プラトン・レベデフ氏、そしてバンド、プッシー・ライオットのメンバーは、もとから数か月で釈放される予定だったとナワルニー氏は付け加えた。
「もちろん、これで物事が解決するわけでも、本当の変化が起こるわけでもない。」彼は続けた。「プーチン氏は今、強い不満をいだいていると思う。」
ロシアで新しく施行された同性愛の宣伝を禁止する法律は、国内では受け入れられているものの、対外的には問題を引き起こしており、ここにも不満は及ぶだろうとナワルニー氏は言う。
「彼らは常にこういった作り話をする。例えばオランダでは小児愛者の党があるとか、アメリカでは同性婚や同性愛の関係をもつことで投獄されるなどという内容だ。そういったことは、国内ではうまく作用する。」彼は言う。「しかし、国外では、彼は大きな問題をかかえている。オリンピックでインタビューを受ける際、プーチン氏は非常に強い苛立ちを覚えていると思う。なぜなら、皆が質問するのは、彼がいかに素晴らしいかということではなく、ロシアがいかに同性愛者の権利を奪っているかということについてだからだ。」
ナワルニー氏によると、彼が次に何をするかは決め難いが、彼が去年の市長選で30%近く獲得したという事実は当局を驚かせたという。「クレムリンを非常に強く脅かした。」彼は言う。「これで私個人は選挙に立候補できないかもしれない。私が党首を務める党は、届け出を拒否された。」
「それでもやはり、私は支持者と共に汚職と戦っていくだろう。私たちの国は1つしかないのだから。」そして彼はこう付け加えた。「私たちは自分たちのしていることを信じ、継続していくつもりだ。なぜなら自分たちが正しいと信じているからだ。」
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