福島の原発事故時、現地で勤務していた元東京電力社員・吉川彰浩さん(33)が各地で公演を行なっている。福島で命懸けで作業していることを知ってほしいと、今も会社に残る東電社員たちや、作業員のかたたちの生の声、現状を訴えるべく活動しているという。
6月に茨城県で開かれた講演で、吉川さんは下記のように話している。
「社会からのバッシングで辞めていく。お前らは全員死刑だ。死んで当たり前だ。罪を犯したんだ。死んで復旧してこい。これを面と向かって言われる。特に問題となっているのが社員の子どもたち。社員の子どもたちがいじめられる。子供同士でいじめられるならまだしも、私の甥っ子は、避難先で大人の人に生ゴミを投げつけられた。」
吉川さんは高校卒業後、東京電力に入社し福島第一原子力発電所で9年、福島第二原子力発電所で4年勤務したという。昨年6月に東電を退社し、現在は講演活動を続けている。吉川さん自身が東電を退社したのも、これらの東電社員や作業員へのバッシングが原因だという。朝日新聞デジタルでは吉川さんの講演内容を下記のように伝えている。
吉川さんは事故後、社員や作業員が非難され、矛先が親族にまで向けられたことが退社の契機になったと報告。「差別や偏見で現場を知る社員・作業員が辞めざるを得ない状態になっている。このままでは新たな事故が起きる可能性がある」と警告した。
(朝日新聞デジタル『「原発従事者への差別やめて」 元東電社員、福井で講演』より。2013/07/15)
辞める人が増えても、原発事故の復旧は続けなければならない。しかし、熟知している人間が次々に辞め、「原発の知識も薄い人間が福島原発を収束していく」ことになるかもしれないという現状に、吉川さんは「福島原発事故の再燃」を危惧する。
原発の作業は過酷だ。防護服などの下に普通の服を着るため、暑さは倍増。しかし、エアコンなどを設置すると、粉塵が上がり汚染度が上がるため設置できないという。
2年4カ月も経って全然復旧が進んでいないと皆さん思ってますよね。
しょうがない事実があります。働く人が満足に働けない環境なのですから
5月から10月までは暑さで作業効率は落ち
12月から3月までは寒さで作業効率が落ちます。
これは完全に汚染した発電所の構内ではクーラー、暖房装置が使えないのが大きな要因です。
また作業員の方々の線量がパンクしないように作業時間が放射線の強さによって極端に減ってしまうのも大きな要因です。
信じて頂きたいのが、現状の進み具合はマンパワーで見ても、精一杯やってるという点です。
(吉川彰浩さんのFacebookより。)
吉川さんは、現場の状況をもっと知る必要があると発信する。茨城新聞は、吉川さんの思いを書きのように伝えている。
吉川さんは現場で働く社員を守る必要性を強調し、「決して遠くで起こっている問題ではなく、皆さんの問題でもあることを未来を守るために認識してほしい」と呼び掛けた。
(茨城新聞「原発事故の苦悩語る 水戸、元東電社員・吉川さん講演」より。 2013/06/04)
脱原発か、原発推進か。参院選ではその点が争点になっている。しかし、今原発事故の収束にあたっている方たちのことを、決して忘れて論じてはならないのではないか。
世界一危険な原子力発電所が日本にあって、そこを支えていく人達を返りみない
それがどれだけ危険で無謀なことを知って欲しいと思います。
(吉川彰浩さんブログ「やらなければ」より。 2013/07/08)
関連記事