[東京 20日 ロイター] - 安倍晋三首相は20日、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)について、日本が参加すれば新銀行の信頼性が高まるとする一方、出資には依然として慎重な姿勢を示した。さらに22日からのアジア・アフリカ会議を利用して、中国の国家主席と会談することに意欲をみせた。
同日夜、BSフジの番組に出演し、語った。安倍首相はその中で、AIIBについて「アジアのインフラの需要、インフラが出来上がっていく中で資金需要があるのは事実」と指摘した。同時に、「悪い『高利貸し』からお金を借りた企業は、その場しのぎで未来を失う」と述べ、組織運営の透明性や、ずさんな融資が行われないような体制整備が重要と指摘した。
これに関連し、首相は、共同歩調をとる米国だけでなく、参加表明した主要7カ国(G7)も、同じ懸念を共有していると語った。
日本が、かりに新銀行に出資する場合は「域内国としては中国に次いで大きなGDP(国内総生産)があり、出資額は大きくなる」との見通しを示した。
その上で首相は、「日本が入ることで(AIIBの)クレディビリティが高まるのは事実。(日本が)入るかはいらないかは重要と、中国側も思っているのではないか」と語った。実際に出資までこぎ着けるかは「国民の富を出資するわけだから、慎重にみる必要がある」と述べた。
安倍首相は番組の中で、環太平洋連携協定(TPP)をめぐる日米閣僚折衝にも触れ、「相当詰めた協議をしている。(今後詰めるべき)項目は限られてきている。最後の1合、9合目まできており、しっかり結論を得るべく努力を重ねる」と語った。
<過去の談話の文言踏襲せず>
安倍首相は22日からインドネシアのジャカルタで開かれるアジア・アフリカ会議に出席、さらに今月末から訪米する。ジャカルタでは、中国の習近平国家主席と会談したいと表明。「何も決まっていないが、自然な形でそういう機会が設けられるなら、会う用意はある。こういう機会を利用して意思の疎通をすることは両国にとって必要だ」と述べた。
訪米時に米議会で行う演説では「アジア太平洋地域の平和と安定を含めて世界に貢献する日米同盟について話をしたいと思っている」とした上で、過激主義や感染症、気候変動、災害など、国際的な課題に日米が取り組むというメッセージを発したいと語った。
このほか安倍首相は、今年出す予定の戦後70年談話に言及。第2次大戦の反省や謝罪を盛り込んだ過去の首相談話の文言を踏襲しない考えを示した。安倍首相は「基本的に歴史認識は継いでいくということは言っている。引き継いでいくと言っている以上、これをもういちど書く必要はない」と述べた。
(山口貴也、久保信博 編集:田巻一彦)