文化庁が国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」への補助金約7800万円の全額不交付を決めた問題で、不交付撤回を求めてオンライン署名を集めていた「ReFreedom_Aichi」は11月8日に予定されていた署名提出を見送ると決めた。
同団体は提出を見送った理由について「(文化庁の対応が)10万筆という国民の声を受け取るにはあまりにも敬意を欠いていた」と説明。引き続き、宮田亮平長官に署名を渡すことを求めて、文化庁と交渉を続けていく予定だという。
署名の提出が予定されていた8日正午過ぎ、文化庁前にはアーティストらが駆けつけ、「文化庁は文化を殺すな」というメッセージを掲げて抗議を行った。
午後1時近くになり「ReFreedom_Aichi」の代表者4人が署名を届けるために文化庁に入館。同庁の担当者とやりとりする様子は、スピーカーを通じて文化庁前の舗道で中継された。
団体は、かねてから要望していた宮田長官に集まった署名を直接手渡したい旨を改めて訴えたものの叶わず、署名提出を見送った。
その後行われた会見では、提出を見送った詳しい背景について、「ReFreedom_Aichi」のメンバーであるアーティストの小泉明朗さんより報告がなされた。
団体は9月末の時点で「宮田長官に直接署名を渡したい」という要望を文化庁側に伝えていたが、長官が多忙との理由から拒否されていたという。
小泉さんは「10万筆という国民の声を受け取るにはあまりにも敬意を欠いていた対応ではないかということで、怒りを感じました。会議室も用意されましたが、非常に狭い場所で、責任を果たすには全くふさわしくない場だと判断したため、今日は署名を提出しないという判断をしました」と説明した。
文化庁は9月26日、「あいちトリエンナーレ2019」への補助金の全面不交付を決定。その理由を「来場者を含め、展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実を認識していたにもかかわらず、それらの事実を申告することがなかった」と公表した。
決定が発表されるとアーティストや作家などが相次いで危機感を表明。「ReFreedom_Aichi」は発表同日のうちに、助金不交付の撤回を求める署名活動を開始した。
賛同の呼びかけ文の中では「いったん採択された補助金を、違法性などが検証されない状態で国が取り下げるということは、異例中の異例です。文化庁はこれを『内容に関するものではない』とコメントしていますが、多くの国民はこれを国家による検閲と解釈しています」と表明。
「適正な審査を経て採択された事業に対し、事業実施中に交付を取り消すことは、国が該当事業のみを恣意的に調査したことを意味する」と訴えた。
10万筆の署名を今度どうするかに関して、小泉さんは「然るべき場所で文化庁の方とお話をさせて頂きたいです。私たちの希望としては宮田長官に直接お渡ししてお願いしたいと思っています。そのような場を作っていきたい」と述べた。