卓球女子の福原愛さん(29)が10月21日、自身のブログで「選手としての立場を、ここで一区切りつけることを決意しました」と引退を表明した。
福原さんは3歳で卓球を開始。「愛ちゃん」の相性で親しまれながら日本の女子卓球界をリードし、オリンピックの女子団体でロンドン(2012年)で銀メダル、リオデジャネイロ(2016年)で銅メダルをそれぞれ獲得した。
2016年9月に台湾の卓球選手、江宏傑さん(29)と結婚。2017年10月には第1子となる長女を出産していた。
福原さんはブログの中で、「これからも卓球界を引っ張っていくため、子育てをしながら競技を続ける必要があると思っていました」と当初は復帰を考えていたことを明かした。
だが、「この2年間で次世代の選手達が大きな成長を遂げ、日本の卓球界全体が以前より盛り上がってきました」との認識にいたったという。
その上で、「知らない内に私自身で勝手に感じていた肩の重みが、すっと抜けるような感覚があり、私が選手としてできることはやり切った、頑張り抜いた、という思いが強くなり、自分が選手としての立場でやるべき使命は果たせたかな、と感じるようになりました」としている。
今後については明確な言及はなかったものの、「選手としての立場で後輩たちに新しい道を作ることよりも、別な形で携わることにより、これまで以上に若い世代が成長しやすい環境を作るなど、私が卓球界、スポーツ界に貢献していけるのでは、と考えています」とつづり、指導者を目指すことに含みをもたせた。
福原さんの「引退表明」の全文は以下の通り。
皆さまこんにちは!
ご無沙汰しております。
朝晩はだいぶ涼しく感じるようになりましたが、皆様いかがお過しでしょうか?
Tリーグの開幕が近づき、私も今までとは違う立場で卓球と向き合うようになり、色々と考えることも多くなりましたが、最近ようやく自分の中で答えが見つかりました。
今日は、これまでの長い間、ずっと支え続けてくださった皆様に、自分の言葉でご報告したいことがありますので、ブログを書かせていただきます。
私は選手としての立場を、ここで一区切りつけることを決意しました。
2016年のリオオリンピックから二年が経ち、結婚や出産を経験し、日々育児に励みつつも、競技のことが頭から離れることはありませんでした。
3歳から卓球を始め、約26年の間、多くのことを学ばせていただきました。
とてもおこがましく身勝手かも知れませんが...これまでの私は、これからも卓球界を引っ張っていくため、子育てをしながら競技を続ける必要があると思っていました。
リオオリンピック以降は、新しいお仕事などに携わる中で、周りの方々が私に求めるものが、これまでと違ってきていると感じることもありました。
福原愛選手と呼ばれることよりも、卓球の愛ちゃん、と呼んでくれる方の方が多く、小さい頃から日本全国の皆様からの温かい応援や励ましをいただき、そして育ててもらいました。初対面の方にも「大きくなったねえ」と言われることも多かったです。
結婚する際、家庭としての軸を作りたい、そしてまた選手としての軸に戻ってきます、そして後輩のために新しい道を作っていきたい、と話したのを覚えておりますが、皆様がご存知の通り、この2年間で次世代の選手達が大きな成長を遂げ、日本の卓球界全体が以前より盛り上がってきました。
とても嬉しく感じるのと同時に、知らない内に私自身で勝手に感じていた肩の重みが、すっと抜けるような感覚があり、私が選手としてできることはやり切った、頑張り抜いた、という思いが強くなり、自分が選手としての立場でやるべき使命は果たせたかな、と感じるようになりました。
もう私が選手として卓球界を引っ張っていかなくても大丈夫、後輩たちがさらに飛躍し、日本代表として頑張ってほしい、という想いです。
この二年間、色々な立場を経験する中で、選手としての立場で後輩たちに新しい道を作ることよりも、別な形で携わることにより、これまで以上に若い世代が成長しやすい環境を作るなど、私が卓球界、スポーツ界に貢献していけるのでは、と考えています。
3歳9か月でラケットを握り始め、10歳でプロ宣言、11歳の時にはナショナルチームでの活動が始まりました。高校時代は中国超級リーグにも参戦するなど、長い間、本当に多くの経験をさせていただきました。オリンピックでは、アテネ、北京、ロンドン、リオ、と4度出場することができ、日本代表として2個のメダルを獲得できたことは誇りに思いますし、これまでの全ては私の財産です。
このように思えるのは、どんな状況でも私を温かく見守り、応援してくださったファンの皆様、なかなか結果が出ないときや怪我をしている時にでも、いつも変わらずにサポートしてくださったスポンサーの皆様、苦しいことも嬉しいことも側にいて、一緒に乗り越えてくれた張コーチ、怪我をしていて一番難しかった時期を支えてくれた美香先生、フィジカル面を強化してくださったトレーナーの中野ジェームズ修一コーチ、最高の状態で試合に臨めるよう10年間フィッティングパートナーをしてくれた金さん、そして時には私を引っ張り、時には背中を押し、叱咤激励してくれたスタッフ、そして家族のおかげです。
何度もやめようかと考えたことはありましたが、一度も卓球を嫌いになることはありませんでした。そんな風に思えるものと出会わせてくれた母と兄に感謝の気持ちでいっぱいです。
私は生涯卓球人なので、卓球という軸がぶれることは一生ありません。
コートから離れて更に卓球が好きになった気がします。
これからは選手とは別な立場で、これまで支え続けてくれた皆様に、卓球を通して恩返しをしていきたいです。
卓球以外のことをほとんど経験したことがないので、皆様にご迷惑やご心配をおかけすることもあるかと思いますが、一歩ずつ前に、自分らしく、人生を終える時に今日のようにやりきった、と思えるような日々を過ごせるよう、これから邁進していきます。そして人の役に立ち、必要とされる中身のある人間を目指してまいります。
また選手としてプレーしているところを観たい、と言ってくださった皆様、ご期待に添えられず申し訳ありません。皆様からいただいた言葉を胸に、次のステップへ進もうと思います。
これまで温かく応援していただき、ありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします!
福原愛