「平成26年人口動態統計(確定値)の概況」によると、出生数は100万3539人で男性51万5533人、女性48万8006人となっている。女性人口100人に対する男性人口を「性比」といい、出生性比は105.6、出生数は男性が女性より5%ほど多いのだ。
一方、日本の総人口は1億2730万人、男性が6191万人、女性が6539万人、人口性比は94.7と逆に男性が女性より5%ほど少なくなっている。
年齢別性比を見ていくと、0歳(*1)から徐々に低下しはじめ、53歳で100(男女同数)になり、それ以上では100を下回る。
65歳以上の高齢者全体では75.8、75歳以上の後期高齢者全体では62.5となり、100歳以上の長寿高齢者に限ると性比は15.1で、女性が9割近くを占めている。
日本人の平均寿命が男性80.50歳、女性86.83歳であることからも、超高齢社会は女性が多数派であることがわかる。
先日、ある自治体主催の『退職後の生きがい探し』をテーマにした講座で、退職した男性の方々に話をする機会があった。
退職後に会社から地域に居場所を移し、地域で生きがいを持って暮らしたいと考える退職高齢者は多いが、実は彼らが思うほど地域の居場所づくりは容易ではない。その理由は、地域社会は女性が中心で、男性が慣れ親しんだ企業社会とは様々な違いがあるからだ。
男性が退職後に地域に居場所をつくるには、高齢社会の多数派である女性とのコミュニケーション能力が必要だ。
仕事上では名刺交換して相手との社会的距離感を把握すると円滑に会話できる男性も、相手の正体が不明だと巧くコミュニケーションできない人もいる。
地域の会話は地域内や生活上の出来事が主たるテーマになるため話題についていけない男性も多い。前述の講座では、重要な生活力である料理づくりと配偶者以外の女性ともキチンと会話ができる講座を組み合わせているそうだ。
つぎに地域社会の行動様式を身につけることが重要になる。対等な住民同士の関係性が求められる地域社会では、全ての人に等しく情報開示し、意思決定に加わってもらうことが原則だ。
それは時間と手間を要し、非効率的に思えるかもしれないが、企業とは異なる地域の行動様式や意思決定の方法を理解しなければ、地域の一員として受け入れてもらえないこともある。
一定の年齢で退職、即ち「定年」=「退職」の場合、「退職」を地域や家族との新たな関係性の出発点と捉える意識が薄く、「退職」を迎える準備が不十分になりかねない。
退職後の"居場所づくり"は一日では成就しない。現役時代から少しずつ地域における「新たなコミュニケーション能力」を磨くことにより、生きがいのある高齢期の暮らしにソフトランディングできるのではないだろうか。
(*1) 男性の新生児や乳児の死亡率は女性より高く、「0歳性比」は「出生性比」より低くなっている。
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(2015年11月10日「研究員の眼」より転載)
株式会社ニッセイ基礎研究所
社会研究部 主任研究員