アフガニスタン:攻撃されるメディア 暴力や脅迫に直面するジャーナリストたち

政府および治安部隊によるアフガニスタンのジャーナリストへの暴力や脅迫が増加している、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書内で述べた。
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An Afghan policeman aims his weapon at photojournalists Paula Bronstein (2L) and Kevin Frayer (L) as he prevents them from approaching the area where three gunmen stormed a bank in Kabul on August 19, 2009. The Afghan government came under severe criticism for attempting to ban media coverage of escalating Taliban violence in case it deters people from voting in Thursday's elections. AFP PHOTO/PEDRO UGARTE (Photo credit should read PEDRO UGARTE/AFP/Getty Images)
PEDRO UGARTE via Getty Images

アフガン政府関係者、軍閥、反体制派勢力は訴追される恐れもなしに、2002年から何十人ものジャーナリストを脅し、痛めつけ、殺してきた。アシュラフ・ガニ大統領は、報道の自由を守るという自身の選挙公約にのっとり、報道関係者の権利を侵害する者すべてに法の裁きを下すべきだ。

(カブール)― 政府および治安部隊によるアフガニスタンのジャーナリストへの暴力や脅迫が増加している、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書内で述べた。この現状は、2001年以降改善しつつあった報道の自由を脅かすものだ。

報告書「報道をやめなければ家族を殺す:アフガニスタンで増す報道の自由に対する脅威」(全48ページ)は、ジャーナリストに対する嫌がらせ・脅迫・攻撃や、アフガン政府が加害者の捜査・訴追を怠っている実態を調査・検証したもの。ジャーナリズムの自由の保護を怠ることは、政府や治安部隊など、アフガン社会の権力者への批判を押さえ込もうとする人たちを力づけている。反体制派勢力タリバンが自分たちに都合の悪い報道の報復として、公然とジャーナリストを標的にしていることも、恐怖の風潮を強めている。政府はこうした暴力・脅迫を停止すべく断固とした行動をとるべきであり、またタリバンもマスメディアを含む市民組織への攻撃をやめるべきだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチアジア局局長代理のフィリム・カインは、「アフガン政府関係者、軍閥、反体制派勢力は訴追される恐れもなしに、2002年から何十人ものジャーナリストを脅し、痛めつけ、殺してきた」と述べる。「アシュラフ・ガニ大統領は、報道の自由を守るという自身の選挙公約にのっとり、報道関係者の権利を侵害する者すべてに法の裁きを下すべきだ。」

政府と非国家主体双方による脅迫・暴力の増大は、政府による保護の不在や国際支援の衰退と相まって、アフガニスタンにおける報道の自由を瀕死の状態に追い込んでいる。もっとも近事の報告では、アフガン・メディアの政策提言団体「ナイ」が、アフガニスタンのジャーナリストに対する暴力事件は2014年にこれまでの最高を記録し、前年と比較しても64%増加したと述べている。アフガン政府およびドナー国・機関の支えにより、2001年以降か弱い進展をみせた報道の自由。アフガニスタンからほとんどの国際部隊が撤退する今後、これらの支援はとりわけ重要になっていく。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは本報告書の作成にあたり、ジャーナリストや編集者、発行人、メディア責任者30人超を対象にアフガニスタンで聞き取り調査を行った。アフガン人ジャーナリストたちは脅迫や威嚇、暴力などに対抗する手段として、しばしば自己検閲を用いると示唆した。また、汚職や土地接収、女性に対する暴力、人権侵害といった繊細な問題を、多くが避けて報道する現状が浮き彫りになった。

アフガン治安部隊の基地が襲撃され、士官2人が犠牲になった攻撃を報道したパクティカ州出身のあるジャーナリストは証言する。「知事が皆の前で私に言いました。『なぜこの事件を報道した?[中略]これを報道する権利なぞお前にはない。投獄してやる。お前の人生なぞ取るに足らないものだ』と。あれから12、3カ月が経ちますが、帰宅するときでさえ未だびくびくしています。」

とりわけ主要都市以外で活動するジャーナリストたちは、強大な力を持つ個人や団体による復讐にぜい弱だ。より大きな報道機関ならできる保護もなく、国際社会の目も届かないからである。文化面・社会面で保守的であるのも、繊細な問題を報道することの困難さにつながっている。

2014年を通じて、タリバンは公然とメディアを脅迫し続けた。もっとも近時では12月13日に声明のなかで、「西洋的価値」を支持しているように見受けられるジャーナリストは攻撃対象となるだろうと宣言。タリバンはじめ反体制派勢力はまた、メディアをプロパガンダの道具として用いており、積極的に反政府活動にメディアを組み入れようと努めている。例えば、自らの声明を報道させようと記者に圧力をかけたり、批判的な記事の執筆をやめさせたりしている。

女性のジャーナリストは特にやっかいな問題に直面する。社会的・文化的制約により、都市部・地方に関係なく移動は制限され、性暴力を含む脅迫・攻撃に対してもよりぜい弱になるからだ。

ガニ大統領は選挙運動中、ジャーナリストに対する政治的な動機に基づいた根拠のない容疑は、すべて取り下げると公約していた。大統領とアブドラ・アブドラ行政長官はまた、表現の自由を支持し、人権侵害からジャーナリストを保護すると誓った

ガニ大統領はジャーナリストと報道機関に対するすべての攻撃を公に非難すべきであり、事件の速やかな捜査と加害者の訴追を確保すべきだ。実質的な申し立てのメカニズムの不在や、メディア関連諸法の遵守の欠如が、報道の自由にとって高いハードルとなっている。新政府は国内のジャーナリストや報道機関、そしてメディア監視団体と協力し、ジャーナリストが受けた攻撃をすべて告発できるメカニズムを設置すべきだ。

前出のカイン局長代理は、「法改正は、アフガニスタンのジャーナリストが本来あるべき姿で活動することを確保するのに、重要な一歩となるだろう」と述べる。「しかし、ジャーナリストたちが報道に命をかけないですむと自信を持てるようになるには、まずアフガン新政府が、全勢力からの治安への脅威を封じ込める必要がある。」

(2015年1月21日「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」より転載)