政情不安から東京パラリンピックへの参加を一時断念していたアフガニスタンの選手団が8月28日夜に日本に到着し、競技に参加することになった。国際パラリンピック委員会(IPC)が公式サイトで発表した。
IPCのアンドリュー・パーソンズ会長は声明の中で「数カ国の政府や関係機関の素晴らしい取り組みのおかげで、今、選手たちは夢を実現するために東京に到着し、世界中の多くの人々に希望を与えています」と述べている。
■タリバンの首都制圧で出国できず、代役が入場行進
東京パラリンピックに参加するのは、ザキア・フダダディ選手(22)とホサイン・ラスーリ選手(26)の2人だ。
パラリンピック公式サイトによると、フダダディ選手はアフガニスタン初の女性パラリンピック選手だ。アフガニスタン代表のテコンドー選手、ロフラ・ニクパイ選手が北京五輪とロンドン五輪で銅メダルを獲得したのを見て、テコンドーの道へと進んだという。 テコンドー女子49kg級のK44(上肢または下肢の片方に障がいがある選手のクラス)に参加する。
地雷で左腕を失った経験があるラスーリ選手は陸上競技の上肢障害T47などに参加する。
アフガニスタンでは首都カブールを15日に、イスラム主義組織「タリバン」が制圧。空港の混乱の影響で、同国の選手団はカブールで足止めされ、出国することができなかった。国際パラリンピック委員会(IPC)はアフガニスタン選手団の参加を断念することを組織委に伝えていた。
24日の開会式では選手団に代わって、国連機関の関係者がアフガニスタン国旗を持って入場行進していた。
■オーストラリア空軍が救出作戦。パリでトレーニングしてから来日
そんな苦境でも、選手達は出場を諦めていなかった。ロイター通信が18日に掲載した動画メッセージの中で、フダダディ選手は「私は東京パラリンピックに参加したいです。どうか手を携えて助けてください」と国際社会に訴えた。
オーストラリア公共放送のABCによると、元スポーツ選手や弁護士のグループが政府に働き掛けた結果、パラリンピック選手2人を含めたアスリートやその家族ら95人に対し、オーストラリア政府から緊急ビザを発給された。オーストラリア空軍の複数の飛行機でカブール国際空港を離陸し、ドバイ郊外の連合軍基地に避難したという。
オーストラリア空軍の最後の飛行機が離陸したのは25日で、カブール国際空港周辺で約170人が死亡する爆破テロが起きる数時間前だったという。
■パリでトレーニングしてから東京へ
日刊スポーツによると、IPC広報責任者のクレイグ・スペンス氏が29日に記者会見を開いて、2人が来日した経緯を説明した。アフガニスタン選手2人は23日にフランス・パリに到着。その後、フランス・スポーツ庁の練習施設でトレーニングを続けた。2人にあらためて大会への参加意向を確認し、参加が決まり、28日夜に羽田空港に到着。東京・晴海の選手村に入ったという。
フダダディ選手は9月2日の試合に出場。ラスーリ選手は予定していた28日の男子100メートルに出場できなかったため、9月3日の同男子400メートルに出場する。本人の希望で8月31日の走り幅跳びにも参加する予定だという。