長女・チハナが生後6ヵ月を迎えた頃、日本の両親が「幼児教育セット」を送って来てくれました。それは、子供の成長と季節に合わせた「DVD・玩具・絵本」などが毎月届くシステムとなっており、私も娘共々このセットの到着を心待ちにしていたものです。
12月のDVDには英語で歌われたオリジナルのクリスマス・ソングが入っており、私は娘と一緒にそれを観賞するのが日課となっていました。すると、珍しく英語が流れているテレビが気になったのでしょう。夫が我々の様子を覗きにやって来ました。そして、夫は眉根を寄せながら言いました。
「...コレ、何?」
私は夫が定番のクリスマス・ソングでない事に違和感を覚えたのだと思い、この歌の意図を説明しました。
「オリジナルのクリスマス・ソングだ。最近の知育教育はスゴイな。こんなに小さな時から英語を耳に入れておく必要があるらしい」
そして「お陰で私の耳は『英語耳』にならなかったよ」と肩をすぼめて見せる私に、夫はせせら笑いながらこう言いました。
「テキサス訛り」と言えば、「オラは~~だべ」などと日本語翻訳される程、独特なアクセントを持ち合わせた英語です。なぜそのような強い訛りが教材に使われているの!?と、私は動揺を隠せませんでした。
「いや、ちょっと待て。歌だからそう聞こえると言うワケではないのか?」
私はすがる気持ちで夫に詰め寄りました。
「ハン!どっから聞いてもコレはテキサス訛りデス」
存分に「スコットランド訛り」の夫が「テキサス訛り」を責める意味がいまいちわかりませんが、「どちらも聞き取りづらい」と言う事だけは私にも理解できたのです。
「いや、それにしてもスゴイな。アクセントでどこの訛りかがわかると言うのは」
うっかり夫を褒めてしまったせいでしょうか。それからというもの、彼はテレビで流れる英語の訛りを懇々と私に説明し始めました。
「この国、昔はイギリス領だったみたいで、皆、スコットランド訛りダヨ☆」
「このドラマ、皆グラスゴー訛りで聞き辛いんだよネ☆」
「ほう、ほう」と表面では感心していた私ですが、英語音痴の私にはいまいち違いがわからないと言うのが本音でした。
さて、そんなある日、私は日本衛星放送(JSTV)で民放のミステリー・ドラマをひとり楽しんでいました。
その時の犯人がアメリカ人という設定であった為、私は息をのみながら犯行の動機を字幕で読んでいました。すると、たまたま通りかかった夫が画面をマジマジと見詰めながら言いました。
「エ? 犯人、スコットランド人なんだよネ?」
私は幾分申し訳ない気分に陥りました。
「...いや、彼はこのドラマの中ではアメリカ人と言う設定なのだが...無理があるかね?」
「白人さん=欧米人」としてひと括りにしてしまうのは夫として許し難い事態なのかも知れません。だがしかし、視聴者が全員日本人なら、アクセントの分野は多少見逃してもOKなのではなかろうかと思う、今日この頃――。
余談ですが、NHKの連続テレビ小説で一気にスコットランドの知名度を上げた「マッサン」にて、エリー役を務めたシャーロット・ケイト・フォックスさん。
彼女が話すアメリカ英語に、夫は間違いなく牙を剥くであろうと危惧した私は、結局一度も夫に見せる事はありませんでした。
~続く。
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