公共広告を通じて啓発活動を行なっている公益社団法人ACジャパンが7月1日、ネットモラルの問題をテーマにした広告キャンペーンを開始した。
昔話の『桃太郎』がモチーフになっており、おばあさんが桃を拾うと"炎上コメント"が殺到し、おばあさんがパニックになってしまう様子を伝えている。ひとつの"火種"をきっかけに批判の声が広がっていく「ネット炎上」を風刺したCMに対し、ネット上ではさまざまな意見が寄せられている。
動画の冒頭は、おじいさんとおばあさんが平和に暮らすシーンから始まる。ナレーションは美輪明宏さんだ。「昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが幸せに暮らしていました」という聞き慣れたフレーズが流れるが、おばあさんが川へ洗濯に出かけるシーンから場面は一転する。
おばあさんが川で桃を拾うと...
「窃盗だろw」「子供が真似したらどうするんだ」「警察に届けないの?」など、批判的なコメントが畳みかけるように飛び交う。
批判の声は鳴り止まず、おばあさんは涙を流してパニック状態になってしまう。
最後はおじいさんがおばあさんに救いの手を差し伸べ、「悪意ある言葉が人の心を傷つけている。声を荒らげる前に、少しだけ考えてみませんか?」との問いかけで締めくくられている。
ACジャパンは2016年にも九州地域限定でネットモラルをテーマにしたキャンペーンを展開したが、全国キャンペーンでネットモラルをテーマにしたのは今回が初めてだ。
この広告キャンペーンを制作した意図は何なのか。ACジャパンはハフポスト日本版の取材に対し、「私たちの身の回りでは、年齢を問わず、個人のSNSから、企業の広告、サービス内容などに至るまで、たびたび炎上し社会問題となっています」と説明した。
「悪意がないケースもありますが、何気ないメッセージが、当事者や家族の心を傷つけるトラブルも報告されています」とし、「広告では、昔話の桃太郎を題材に、クレーム社会の惨状と虚しさを伝えながら、『声を荒らげる前に考えてみませんか』と、おおらかな心の大切さを訴えます」と語った。
ネットでは、毎日のように「炎上」が起きている。テレビ番組や企業CM、自治体のPRなどが「炎上事案」の対象になることが多いが、その矛先は時に一個人に向けられることもある。
この広告に対してTwitterなどSNS上には、賛否両論さまざまな意見が寄せられている。
「よく見る言葉ばかりですぐ怒るっていうよりもっと寛容な世の中になるといいなぁ」「もう少し寛容な世の中になってほしいと、私も思う」とネットの息苦しさを訴え、広告に共感する声が挙がる一方で、「適切な批判を言論封殺しかねない」と言論の自由の大切さを訴える声もあった。
⇒CMの動画はACジャパンの公式サイトにも掲載されている。CMのオンエアおよび広告掲載期間は2018年6月30日まで。