日常的に使う、「なんでもいい」とか「また今度」ということばは、楽(ラク)なことばです。
発言の根拠や正確性は無く、具体性を求められると苦痛や抵抗、障害を感じたり、考えこんだりします。
「なんでもいい」に具体性を求められたら、答えに多少は責任を持たなければならず、苦痛を感じたりします。
「また今度」に具体的な日程を聞かれたら、手帳で予定を確認したり、そこまで考えてなかったことに負担を感じることもあるでしょう。
あいまいなことばに具体性を求めると、答えを用意していない限り、時間だったり、手間だったりがかかるものです。
たとえば仕事で報告するときに、何らかの根拠を求められることがわかっていれば、はじめから用意していますから、答えられるでしょう。
営業が受注できなかったという結果に対して提出した見積もりより他社が安かったから、という根拠は用意していた。
ところが
「では、弊社が高くて他社が安い根拠は?」
と聞かれたが用意していなかった。
部下:見積価格が高かったからです。
上司:見積価格にどこまで含まれているか説明したの?
部下:?
上司:アフターサービスを比べてもらったのかと言っているんだけど?
部下:説明したつもりなんですが......
上司:うちのアフターサービスは多くの顧客に満足してもらってる、
それを含めた価格だということは理解してもらったの?
部下:えーと......
上司:じゃあ、他社が安い理由は何?保証期間はどれくらい?
納品まではウチより早いの?安いってどれくらい差があったの?
部下:ちょっと待ってください。(ノートを取り出す)保証期間は同じです。納品まではえーと、ウチより遅いです、正確に何日かかるかまではちょっと......。具体的にいくら安いかまでは教えてくれませんでした。
部下はきっと冷や汗をかきながら答えたのではないでしょうか。
そして、ノートにメモがあったとき、ちょっとホッとしたかもしれません。
全体をみると、質問を理解できなかったり、間があいたり、不明な点もあるようです。
この短いやりとりで、上司は部下の、今の能力を把握したでしょう。
自社の製品をどれだけ理解しているか?
どういう説明をして商品を営業しているのか?
先方の担当者との関係は作れているのか?
予想外のことが起きたときの対応はどうだろうか?
etc.
用意していないことについて具体的にすると"何か"がある、ということがわかります。
はじめから具体的なコトを用意しないのは、
・はじめから答えがないからあいまい
- また今度
・答えがあるけど受け入れたくないからあいまいにする
- 宿題の終わる日が決まってない
・そこまで想定していない
- 他社が安い根拠
等があると思います。
質問や提案されると答えなきゃいけないし、具体的にするときハードルがあるので、ことばや体にあらわれてしまうのです。
具体的にすべきところと曖昧ですませるところ、うまく使い分けていきたいですね。
(2015年12月06日「ボトルボイス」より転載)