「都市単位」で国を語ろう ~専門家を気取らず海外を語るには~

「中国が危険だ」とか「中国人がズル賢い」だなんて、その方の主観にしか過ぎないのではないでしょうか。
|

Open Image Modal

▶インドネシア・ジャカルタで留学時代のクラスメイトに再会(筆者:右から2人目)

ベトナムには珍しく、現在長期休暇に入っており、

行き先を決めずマレー半島を陸路で北上中です。

各地を放浪して巡るのには訳があります。

今回は、それをいくつかのエピソードを交えてお伝えします。

マレーシア滞在中の気づき

「中国は〇〇だとか、ベトナムは△△とひとまとめで

一国を語るのは良くないと思うんだよね。

同じ国であっても各都市に地域性があって人の気質も異なる。

日本国内でも東京・大阪で異なるように。

北京や上海、広州のどこかだけを見て

『中国はこんな国だ』と総括するのは危険だ」

先般マレーシアに滞在した際にお会いした、

人材紹介のプロから直接伺った言葉です。

その方は中国でも複数都市、

ベトナム・ホーチミンやハノイ、タイ・バンコクでの

勤務・立ち上げ経験がある凄腕で言葉に重みがありました。

僕自身、冒頭の言葉には同感で、

一国のことをまとめて話すのは簡単ですし、

専門家を気取ることはできます。

ただ、その国の事情を知ろうと考えている人へ

良い意味でも悪い意味でも

影響を与える可能性もあるのです。

Open Image Modal

▶中国・最西端の街カシュガルにて(なんと片道・北京から電車で60時間!)

「主観」を客観視できるかどうか

「中国は危険な国だよね。中国人はズル賢くて手に負えないよ。

その上、最低賃金が上がり続けているから

こうしてベトナムにまで撤退してきた」

これはベトナムでお会いした、

中国駐在経験者の方(製造業)から聞いた話です。

中国から撤退して生産拠点をベトナムに移転するのは

本社の決定だから仕方ないけれども、

「中国が危険だ」とか「中国人がズル賢い」だなんて

その方の主観にしか過ぎないのではないでしょうか

(事実ではあるが、すべてを

まとめられるほどの真実ではないという意味)。

そもそも中国という国の概念もあやふやであり、

各都市を無理やり集結させた合衆国のような国です。

Open Image Modal

▶中国国内のある砂丘にて

もちろん都市ごとに特徴はバラバラですし、

国民は漢民族が90%以上を占めているものの

少数民族を合わせると56民族もいます。

ひとくくりにするのであれば

全民族会ってからでないと

本当の意味で説得力はないでしょう(現実的に不可能)!

これを日本に当てはめるとすると、

47都道府県あるにもかかわらず、

「日本人は物静かな国民である」なんて言ったら

頭をかしげる人もいるのではないでしょうか。

ワイワイするのが大好きな関西人もいれば、

マイペースに仲間たちと楽しむ沖縄人もいるはずです。

自ら反省した「専門家癖」

Open Image Modal

▶ラオス・ビエンチャンの夕焼け

こんなことを声高らかに書いていますが、

僕にも「専門家癖」がついていた時期もありましたし、

今でも油断していると、そうなっている自分に時々気づきます。

物知りな自分を他者に魅せる(見せる)のは快感であり、

人から手っ取り早く尊敬される方法のひとつです。

自分の知らない世界を知っている人がいたら、

つい聞き入って「すごい、この人!」なんて

思ってしまうのも仕方がありませんよね。

過去「中国はこういう国だ」と語ってしまった自分もいて、

それを今では反省しています。

例えば、

「中国では反日教育を受けているから

潜在的に日本に悪い印象をもっている人もいる

(中国人の友人に突然南京大虐殺事件の話をされた体験)」

だとか、

「中国人はあまり準備せずに本番に挑もうとしてくるから、

事前の議論のすり合わせが大変

(日中学生会議の時に中国側とコミュニケーションをとった時の体験)」

なんて言っていた頃もありました。

そんな自分を省みたからこそ、

中国の側面だけを捉えるのではなく、

できる限りいろんなところを見たいと思い、

結果中国国内34都市を巡ることになりました。

「中国に行ってみたい」と言われたら、

必ずその人の目的に合った地域をおススメするように心がけています。

チャイナ・トリップアドバイザーにでもなろうかな(笑)。

Open Image Modal

▶新疆ウイグル人に溶け込んで一緒にテレビを見た

冗談はさておき、

国が変わってベトナムに来てからも

その姿勢は崩さないように時間があれば各都市を巡り、

ベトナムのさまざまな顔を知ろうと努力しているつもりです。

気がつけばベトナムの旅行ガイドなどに掲載されている観光地は

ほぼすべて回りました。

いろいろ回って得られたベトナムの地域性

その結果、ベトナムという国を考える際に、

北部と南部に大きくふたつに分け、

政治的な特徴と歴史的特徴を理解するようになりました

(北京と上海を分けて考えるのと同じですね)。

その後、北部(ハノイ、ハイフォン、サパ、ハロン湾など)、

中部(フエ、ダナン、ホイアンなど)、

南部(ホーチミン、ブンタウ、ドンナイなど)、

西部(メコンデルタ付近)に細かく分けて考えています。

この4つの地域ですら人はまったく異なります。

Open Image Modal

▶ベトナム・ホーチミンの夜景

例えば、

北部はもともと中国に隷属国として仕えていた歴史があるので、

見た目は非常に中国人に似ており、性格は比較的したたかです。

一方、南部はもともとクメール系の国であったため、

顔はどちらかというとカンボジア人に似ており、

性格は「The 南国」と言わんばかりの陽気な方々ばかりです。

よく言われるのが

「北部よりも南部の人の方が仕事をサボりがち」なこと。

こればかりは国の特徴というよりかは、

地域性として違いを受容するべきではないかと思います

(南部の人材は比較的離職率も高いので、

紹介する側も、採用する側も辟易することがしばしば)。

もちろん僕にも知らないことはまだまだたくさんあります。

現状に満足することなく、

貪欲にいろんな土地の特徴を掴んでいく姿勢は

忘れないようにしたいと考えています。

最後に ~人に海外の話を伝える上で重要なことは?

Open Image Modal

▶ラオス・ビエンチャンのユースホステルで仲良くなった中国人たち

旅の話ばかりになってしまいましたが、

一国をひとくくりにまとめるのは早計で、

聞き手に間違った情報を与えてしまう可能性を

はらんでいるということです。

各都市の特徴を掴み、

多方面から相手に話ができるようになりたいものですね。

~この記事を読んだ方にオススメ~

吉川 真人/Makoto Yoshikawa

同志社大学卒業。17歳の時に3年間一言も話さなかった父親と死別し、思ったら即行動を心掛けるようになる。大学3年時に休学し、1年間北京に留学をする。その結果、早くから海外で経験を積む事を心に決める。紆余曲折があり、現在ベトナムの人材紹介会社Jelly Fish HRで修行中。鎖国した日本を開国させることが目標。

週刊ABROADERSは、アジアで働きたい日本人のためのリアル情報サイトです。海外でいつか働いてみたいけど、現地の暮らしは一体どうなるのだろう?」という疑問に対し、現地情報や住んでいる人の声を発信します。そのことによって、アジアで働きたい日本人の背中を押し、「アジアで働く」という生き方の選択肢を増やすことを目指しています。

HP: 週刊ABROADERS

Facebook:ABROADERS