安倍内閣によって国民の財産である年金がリスクに晒されていることを、何度かにわたって指摘してきた。そのプロセスが、いかに杜撰で不明朗なものであるか。国民年金・厚生年金はリスクに晒しておきながら、国家公務員年金は未だに安全資産で運用されている。証券関係者を多く集めた「有識者会議」は、当初から結論ありきで、年金受給者のリスクの下に株式保有者が得をする証券会社寄りの提言を出した。
安倍総理や塩崎厚労大臣は、説明責任も責任体制の確保も放棄し、行政としてまずやるべき姿勢すら伴わない。
今、「アベノミクス」はどこに向かっているのだろうか。実質賃金は下がり続け、家計や中小企業が苦境に追い込まれている。企業の景況感は悪化しつつあり、貿易収支も一向に改善しない。
焦りからか、日銀は「異次元緩和」を拡大し、莫大な量の国債や投資信託を買い取っている。そして、政府は、国民の年金を使って株価操縦とすら思われることをはじめた。当然、株価は上昇している。
一度立ち止まって考えなければならない。このような中身の伴わない政策がうまくいくのかどうか。
確かに、日銀が国債を大量消化することで、金利は低く抑えられている。また、年金資金が入ることで株価の下支え効果はある。
しかし、一旦財政への不信感が拡がれば、金利が急上昇する。たとえ1%の上昇であっても、政府の利払費は5兆円近く膨らみ、予算すら組みにくくなる。金融機関も7兆円を超える損失を出す。さらに金利が上昇すれば、政府も金融機関も10兆円を超える利払費の上昇、損失の計上を抱えることになり、ギリシャのようなパニックのおそれも出てくる。また、リーマンショック並みの事象が起これば、年金の運用資金は数十兆円が一瞬で消え去るのである。
このような「アベノリスク」に関して、現在の安倍内閣から説明されることは皆無である。しかも、責任すら放棄している。これまで何度かにわたって指摘してきた年金運用の問題点は、これらの同一線上にある。
かつて我が国は、太平洋戦争において、国家総動員法の下に戦時体制をひき、あらゆる産業活動が政府の下に置かれた。日銀は大量の国債を引き受け、株価は上がり続けた。しかし、リスクは全て覆い隠された。
その結果はご存知のとおり、敗戦、そして戦争最中から起こった狂乱物価によって、国債も株式も紙くずとなったのである。
すぐにこのような事態にまで発展するとは思わない。しかし、アベノミクスによってリスクが確実に高まっている。空虚でリスクばかり高める「アベノリスク」に対しては、その問題点を明らかにし、しっかりとした説明と是正を求めるべく徹底して戦っていかなければならない。