アメリカの戦争に巻き込まれることは「絶対にあり得ない」 安倍首相、安保法制の閣議決定で会見

安全保障法制の関連11法案が閣議決定されたことを受けて、安倍首相が5月14日午後6時から、官邸を会見を開いた。
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Japan's Prime Minister Shinzo Abe speaks during a press conference at his official residence in Tokyo, Thursday, May 14, 2015. Japan's Cabinet endorsed a set of defense bills Thursday that would allow the country's military to go beyond its self-defense stance and play a greater role internationally, a plan that has split public opinion. (AP Photo/Shizuo Kambayashi)
ASSOCIATED PRESS

安全保障法制の関連11法案が閣議決定されたことを受けて、安倍首相が5月14日午後6時から、官邸で会見を開いた。一定の条件を満たせば、集団的自衛権の行使が可能になると規定されているが、安倍首相はアメリカの戦争に巻き込まれることは「絶対にあり得ない」と否定した。

その上で、「日米同盟が完全に機能することを世界に発信することによって、抑止力はさらに高まり、日本が攻撃を受ける可能性は一層なくなっていく」と説明した。安倍首相が冒頭に話した内容は以下の通り。

■「“戦争法案”は無責任なレッテル張り」

70年前、私たち日本人は一つの誓いを立てました。「もう二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない」。この不戦の誓いを将来にわたって守り続けていく。そして国民の命と平和な暮らしを守り抜く。この決意のもと、本日、日本と世界の平和と安全を確かなものにするための平和安全法制を閣議決定いたしました。

もはや一国のみでどの国も自国の安全を守ることは出来ない事態であります。この2年、アルジェリア、シリア、そしてチュニジアで日本人がテロの犠牲となりました。北朝鮮の数百発の弾道ミサイルは、日本の大半を射程に入れてます。そのミサイルに搭載できる核兵器の開発も深刻さを増しています。

我が国に近づいてくる国籍不明の航空機に対する自衛隊機の緊急発進、いわゆる「スクランブル」の回数は10年前と比べて実に7倍に増えています。これが現実です。

そして私たちはこの厳しい現実から目をそむけることはできません。ですから私は近隣諸国との対話を通じた外交努力を重視しています。総理就任以来、地球儀を俯瞰する視点で積極的な外交を展開してきました。「いかなる紛争も武力や威嚇ではなく、国際法に基づいて平和的に解決すべきである」。この原則を私は国際社会で繰り返し主張し、多くの国から賛同を得てきました。

外交を通じて平和を守る。今後も積極的な平和外交を展開してまいります。同時に「万が一」への備えも怠ってはなりません。そのため、我が国の安全保障の基軸である日米同盟の強化に努めてまいりました。

先般のアメリカ訪問によって、日米の絆はかつてないほどに強くなっています。日本が攻撃を受ければ、米軍は日本を防衛するために力を尽くしてくれます。そして安保条約の義務を全うするため、日本近海で適時、適切に警戒監視の任務に当たっています。私たちのため、その任務にあたる米軍が攻撃を受けても、私たちは日本自身への攻撃がなければ「何もできない」「何もしない」。これが日本自身の立場でありました。本当にこれで良いのでしょうか?

日本近海において米軍が攻撃される。そういった状況では、私たちにも危険が及びかねない。人ごとではなく、まさに私たち自身の危機であります。私たちの命や平和な暮らしが明白な危険にさらされている。そして、その危機を排除するために他に適当な手段がない。なおかつ必要最小限の範囲を超えてはならない。この3つの要件による厳格な歯止めを、法律案の中にしっかりと定めました。さらに国会の承認が必要となることは、言うまでもありません。

極めて限定的に、集団的自衛権を行使できることと致しました。それでもなお、「アメリカの戦争に巻き込まれるのではないか?」(という)漠然とした不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。その不安をお持ちの方に、ここで、はっきりと申し上げます。そのようなことは絶対にあり得ません。

新たな日米合意の中にも、はっきりと書き込んでいます。「日本が武力を行使するのは日本国民を守るため」。これは日本とアメリカの共通認識であります。「もし日本が危険にさらされたときには、日米同盟が完全に機能する」。そのことを世界に発信することによって、抑止力はさらに高まり、日本が攻撃を受ける可能性は一層なくなっていくと考えます。

ですから「戦争法案」などといった無責任なレッテル貼りは全くの誤りであります。飽くまで日本人の命と平和な暮らしを守るため、そのためにあらゆる事態を想定し、切れ目のない備えを行うのが今回の法案です。

「海外派兵が一般に許されない」という従来からの原則も変わりません。自衛隊が、かつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは今後とも決してない。そのことも明確にしておきたいと思います。

(中略)

戦後日本は、平和国家としての道をまっすぐに歩んできました。世界でも高く評価されている「これまでの歩み」に私たちは胸を張るべきです。しかしそれは「平和」「平和」と言葉を唱えるだけで実現したものではありません。自衛隊の創設、日米安全保障条約の改定、国際平和協力活動への参加、時代の変化に対応して、平和への願いを行動へと移してきた先人たちの努力の結果であると、私はそう確信しています。

行動を起こせば批判が伴います。安保条約を改定したときにも、またPKO協力法を制定したときにも、必ずと言っていいほど「戦争に巻き込まれる」といった批判が噴出しました。しかし、そうした批判が全く的外れなものだったことは、これまでの歴史が証明しています。

私たちは先の大戦の深い反省とともに、70年もの間、不戦の誓いを守ってきました。これからも私たち日本人の誰一人として戦争など望んでいない。そのことに疑いの余地はありません。私たちは自信を持つべきです。時代の変化から目を背け、立ち止まるのはもうやめましょう。子供たちに平和な日本を引き継ぐため、自信を持って前に進もうじゃありませんか。

日本と世界の平和のために、私はその先頭に立って国民の皆様とともに新たな時代を切り開いていく覚悟であります。私からは以上であります。

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