「改革」か、それとも「保守」か 第2次安倍改造内閣をめぐる5つの数字

第2次安倍改造内閣で安倍首相は、自身の政策をどのように進めようとしているのか。ポイントとなる5つの数字を紹介する。
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時事通信社

第2次安倍改造内閣が9月3日に誕生した。安倍首相は内閣改造によって、自身の政策をどのように進めようとしているのか。ポイントとなる5つの数字を紹介する。

■「10%」〜消費税率は予定通り引き上げるのか

今後の重要な政治局面の一つに、「消費税引き上げ」の問題がある。2014年4月に消費税率が5%から8%に上がったばかりだが、これをさらに10%に引き上げるかどうかを2014年12月までに決定する必要がある。

新しく自民党の幹事長になった谷垣禎一氏は、3日の就任記者会見で消費税率引き上げについて「法律上は消費税を10%に上げるレールが敷いてある。(中略)基本は法律通りに進めることだ」と述べ、予定通り引き上げるべきだとの考えを示した。

これを裏付けるのが、麻生太郎財務相などの留任だ。

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記者会見する麻生太郎氏

安倍首相は今回の内閣改造で、麻生氏を含めた6人の閣僚を留任させた。麻生氏や甘利明氏など、2012年の自民党総裁選で安倍首相を支えたメンバーも含まれているが、就任ポストも変わらないことから、これら留任した6人のポストの関連政策が首相の思惑通りに進んでいるとの見方もできる。

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第1次安倍内閣で安倍首相のブレインを務めた高橋洋一・嘉悦大教授は、消費増税とともに財政刺激を行うのではないかと予測する。

■「100%」〜TPP自由化率、農水省に送り込まれた西川公也氏

麻生氏と同様、甘利明・経済再生担当相の担当する環太平洋パートナーシップ協定(TPP)推進もこれまでどおり進められるとみられる。そのために安倍政権が農林水産省に送り込んだのが、西川公也氏だ。

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官邸に入る西川氏

西川農水相は、農林行政に精通しており、これまで自民党のTPP対策委員長を務めた。党内の意見を取りまとめたり、交渉参加各国の業界団体との調整をしたりしており、「典型的な農水族」との報道もある。

しかし西川氏は、2004年の小泉内閣で郵政民営化営担当副大臣として、当時の竹中平蔵・担当相を支えた「規制改革派」でもある。

TPPでは交渉に参加する各国は、関税を無くす品目の割合を示す「自由化率」を、95%程度で進めるとしていた条件を100%にまで引き上げるとしている。日本が関税維持を求めてきたコメや牛肉・豚肉などの重要5品目を「聖域」としたままでは、交渉は難しいと見られており、どのように広げるのかが今後の議論の対象となる。

■「1万5728円35銭」〜株価に影響与える厚生労働相

西川氏と同様、改革派として送り込まれたとみられるのが、厚生労働相に就任した塩崎恭久氏だ。塩崎氏は日銀出身の経済通で知られ、第2次安倍内閣発足時には自民党の政務調査会長代理として、日本経済再生本部の「労働力強化に関する中間とりまとめ」などで党をまとめてきた。

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衆議院予算委員会で質問する自民党の塩崎恭久議員

厚労省は、社会保障、雇用のほか年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用など幅広い範囲を所管する。GPIFは日本最大級の機関投資家であるため、公的年金のためのお金の「積極運用」を唱える塩崎恭久氏が厚生労働相に就いたことで、巨額の年金資金が株式市場に流れ込むとの期待が高まっており、3日の東京株式市場では、日経平均株価の終値は1万5728円35銭と7カ月ぶりの高値をつけた。

岩盤規制と呼ばれた医療や労働分野も担当する塩崎氏について、「安倍首相の意向を受けて、具体的にどのような方針を打ち出すのかが、今後の注目点」と述べるエコノミストもいる。

第2次安倍内閣が発足した2012年12月26日の日経平均株価の終値は1万230円36銭で、約5500円(約54%)上がった。塩崎氏の辣腕がどのぐらい株価に与えるか注目だ。

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■「5人」〜女性閣僚登用に識者から「人気取りに終わるな」の声

今回の内閣改造で、安倍首相は5人の女性を登用した。これまで述べた規制改革関連を担当するのも、小渕優子・経産相や、有村治子・規制改革担当相だ。どちらも国会議員になって14〜15年と若手だが、「女性の積極活用」を政策に掲げる安倍政権としては、女性の閣僚を目玉にしたいところ。

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記念写真に納まる安倍晋三首相(中央)と5人の女性閣僚ら

安倍政権で規制改革などを議論している産業協力会議の民間委員である竹中平蔵・慶応大教授は、新閣僚の顔ぶれから経験などを理由に、新内閣は次の内閣改造までの一時しのぎの「つなぎ内閣」だと分析。「規制改革までは無理」と評価する。

しかし、成果を出さなければ次がないことを閣僚自身も認識しているはずだとして、「成果を出せたら今後、女性であっても幹事長登用もあり得る」との考えを示した。

また、上智大の三浦まり教授は女性閣僚の登用について「人気取りにとどまってはいけない。女性議員の割合を増やさなければ閣僚候補も尽きてしまう」として、今後も継続的な女性の登用を促した。

■「78.9%」〜閣僚19人のうち15人が保守派

岸田文雄・外務相も留任組の一人だ。11月に北京で行われるアジア太平洋経済協力会議(APEC)での、安倍首相と中国の習近平・国家主席の対談実現に向けて、留任が決まったとされる。

また、自民党幹事長となった谷垣禎一氏は2007年11月に訪中した際、当時中国共産党書記だった習近平国家主席と会談している。そのため、近く谷垣氏らが訪中し、首脳会談の地ならしをするとの観測も出ている。

しかし、歴史問題などをめぐる認識の違いにより、日中両国の溝は深まったままだ。イギリスのフィナンシャル・タイムズ紙は今回の内閣改造について、今回発表された閣僚のほとんどが夫婦別性反対や、男系天皇の正当性を主張する保守系団体「日本会議」のメンバーだと指摘。なかでも目立つのは、靖国神社を参拝するグループで、せっかく女性5人を登用しても、伝統主義的・国粋主義的理念を推進すると批判した。

ウォール・ストリート・ジャーナルも、閣僚19人中15人(78.9%)が、日本会議に所属しているとツイートしている。

今回の内閣改造のなかで、代理人を通しての参拝を含めて、靖国神社への参拝を報じられているのは19人中15人。今回の内閣改造では、前安倍内閣で2014年8月の終戦の日に靖国神社参拝を行った、新藤義孝・前総務相、古屋圭司・前拉致問題相ら3閣僚の再任はなかった。ただし、稲田朋美・前行政改革担当相は自民党の政調会長に就任した。安倍首相の肝いりの起用とされる。

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2014年08月15日、靖国神社に参拝する国会議員ら

一方、日本会議に属しながらも、「閣僚は靖国参拝するべきではない」とする考えを持つ小渕優子氏もいる。

10月には靖国神社で秋季例大祭が行われる。毎年多くの国会議員らも参拝しており、今回選ばれた閣僚の中から参加者が出れば、今後の日中・日韓関係に影響することは必至だ。

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