70年以上パートナーとして生きた女性カップルのラブストーリー、『シークレット・ラブ: 65年後のカミングアウト』が、Netflixで4月29日から配信される。
主人公のテリー・ドナヒューさんとパット・ヘンシェルさんは、1947年に出会い恋に落ちた。
ドナヒューさんは当時22歳で、アメリカの女子プロ野球リーグの選手。ヘンシェルさんは18歳だった。
同リーグは1992年の映画『プリティ・リーグ』のモデルにもなっている。しかし、プリティ・リーグでは語られなかったストーリーがある。性的マイノリティーの選手たちの物語だ。
1940年代、LGBTQの人たちに対する偏見や差別は、今よりさらにひどかった。レズビアンバーが摘発を受け、逮捕された人もいる。仕事を失い自殺した人もいる、とドキュメンタリーの中で語られる。
ドナヒューさんたちも、当時の空気を「40年代だもの」「用心しないと」と振り返る。
そしてふたりは60年以上、自分たちの関係を一切周りに明かさずに生きた。TIMEによると、家族や友人には親友やルームメートだと説明し、時にはいとこ同士だと名乗ったこともある。
愛する母に話したら「縁を切られたかも」という言葉が、LGBTQの人たちが感じてきた恐怖や孤独を伝える。
しかし年齢を重ねるにつれ、病気など様々な問題を抱えるようになったふたりは、80代になった時にカミングアウトすることにした。
ドナヒューさんの又甥で、このドキュメンタリー映画の監督でもあるクリス・ボランさんが、ドナヒューさんとヘンシェルさんがパートナー同士だと知ったのは2009年だった。
シカゴに住んでいたふたりを訪ねた時に、同性愛者だと告げられたとボランさんは振り返る。
「お酒を飲んでくつろいでいる時に、ふたりが一緒に過ごしてきた人生を語り始めたんです。その時、このストーリーを伝えなきゃいけないと感じました。我々に話した後、ふたりがリビングで一緒に踊っている光景を今でも思い出します」
カミングアウトは、ふたりの心を自由にした。ドナヒューさんは「肩の荷がおりたと感じていた」とボランさんはTIMEに語る。
しかし「カミングアウトできた喜びも束の間、年を重ねた今だからこその困難が待ち受けてきた」とNetflixは伝える。
映画は2013〜2018年に渡って撮影された。
プロデューサーを務めたのは、人気テレビシリーズ「glee/グリー」など数々のヒット作を手がけてきたライアン・マーフィーさんだ。新型コロナの影響で中止になってしまったが、2020年SXSW映画祭への出品も決まっていた。
映画を撮ろうと思った動機を「ふたりのストーリーが美しかったからだけではない」とボランさんは語る。
「私は、(映画などで)女性のストーリーが十分に取り上げられていないと感じています。さらに、この時代のレズビアンの女性たちのストーリーは、もっと語られていません」
女性そして同性愛者が、今よりもっと差別や暴力を受けてきた時代。その中で、大切な人との関係を隠しながら、自分たちらしい生き方を模索し続けたドナヒューさんとヘンシェルさん。
手を重ねあったふたりの、「悔いはない」「この人生が好き」という言葉に少し救われる。
・『シークレット・ラブ: 65年後のカミングアウト』は、Netflixで4月29日から配信