ゲイのイスラム教徒、メッカ大巡礼の記録映画を制作 「生きて帰ってこられるか分からないので遺書も書いてきた」

聖地メッカではカメラ撮影が厳しく禁止されているにもかかわらず、シャルマは2011年に大巡礼の様子を撮影した。彼はさらにゲイだと公開しているのだが、これはサウジでは死罪にあたる。

毎年200万人ものイスラム教徒が、大巡礼「ハッジ」をするためサウジアラビアに押し寄せる。パルベス・シャルマの旅は、その中でも一際目立つものだ。

聖地メッカではカメラ撮影が厳しく禁止されているにもかかわらず、シャルマは2011年に大巡礼の様子を撮影した。彼はさらにゲイだと公開しているのだが、これはサウジでは死罪にあたる。

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片手にイスラム教の聖典「コーラン」を持ちながら人差し指を上げ、イスラム教の教えを説くアフガニスタン人の巡礼者(ハッジ)=シャルマの映画「A Sinner in Mecca」(メッカの罪人)から

「現代イスラムは争いのまっただ中にあり、私も犠牲者にならないよう懸命に戦ってきました」。9月4日にニューヨークであった映画「A Sinner in Mecca」(メッカの罪人)の先行上映で、シャルマは数百人の前にそう話した。

インドで生まれ、ニューヨークで育った41歳のシャルマは、何年にもわたってゲイとレズビアンのイスラム教徒の生活をフィルムに収めてきた。2007年に発表された彼のドキュメンタリー「A Jihad for Love」(愛の聖戦)は12カ国の同性愛者の生活を記録しており、サウジアラビアでは非常に不信心な作品とされている。

今回のシャルマの自伝的なドキュメンタリー「A Sinner in Mecca」は、イスラム圏の複雑さに焦点を当てている。

「まだ体が少し震えています」と、ニューヨーク在住のマムタ・プラカシュがウェストビレッジのシネマ・ビレッジでの先行上映を見た後で話した。「作品には、シャルマの強い信仰と愛が溢れていて、本当に感動しました」

この「A Sinner in Mecca」は、シャルマとパートナーの男性とのマンハッタン市庁舎での結婚式のシーンから始まる。多くのイスラム教徒たちからこの結婚を非難され、シャルマは敬虔なイスラム教徒としての自身のアイデンティティーに苦しむようになった。彼はここで信仰の危機に直面している。

「自分の信仰が、この旅を終わらせる十分に深い物だという証拠がほしいのです」と、シャルマは話した。

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メッカのカアバで、多くのイスラム教徒の中で祈りを捧げる一人の巡礼者。一人きりで伝統的なポーズで座っている

iPhone 4Sと2つの小さいカメラを手に、シャルマは映画を見る人たちを世界一大きな巡礼へと連れていく。「怖かったです。本当に恐ろしかったです」とシャルマは話す。「生きて帰ってこられるか分からないので、遺書も書いてきました」 

映画の中で、シャルマは「資本主義のメッカ」と呼ばれるメッカの商業化についても言及している。聖地で祈りの儀式を終えた後、シャルマは気が付くとショッピングモールに隣接する混み合ったスターバックスにいた。

ある時は、兄弟の妻の名誉殺人に手を貸してしまってメッカまで許しを請いに来たパキスタン人の男性と、シャルマは会っている。別のシーンでは、アメリカ人の巡礼者から「どうして自分の一部になるのを拒む物の一部になりたいと思うんだ」と聞かれ、自身の性的指向を明かしている。

「この映画は、非常にプライベートな巡礼の記録について洞察に富むものでした」と、この先行上映に訪れたインド出身でニューヨーク在住のミーヌ・マハジャンが話した。「まるで、シャルマのプライベートな宗教の遠征を見ているような気分でした」

シャルマはこの映画で、サウジアラビア政府のイスラム教の厳格な解釈を非難し、また、そのためIS(イスラム国)のような過激組織を生む危険なイデオロギーが助長されると話す。そして、見た人たちを「イスラムの前線」に連れて行く。そこでは、イスラム教徒として認められるために一生に一度だけサウジを訪れて大巡礼を完遂するような、平和を愛する多数の人たちと、政府の支援を受ける暴力的な過激派との間の溝が、深まっているのだ。

この映画でのシャルマの結論は、天の啓示とは言わないが、非常に複雑だ。今回の大巡礼は、シャルマのセクシャリティーと内なる信仰を調和させることとなった。

「イスラム教が私を受け入れるかどうかという話ではないのです」と、映画の終盤にシャルマは語る。「イスラム教を受け入れるかどうかは、ゲイのイスラム教徒である私が決めることなのです」 

この映画は喝采と批判を同時に浴びることとなった。

「この作品については、非常に多くの議論がなされました」とシャルマ。「フェスティバルでは多くの人にポジティブな反応を示していただき、大変励みになっています。しかし、嫌がらせのメールや殺害脅迫も多く来ており、最近はあまりよく眠れていません。こういう嫌がらせをされる側は、本当に辛いものです。自分に矛先が向かっている物を吸収しないようにすることは、はとても難しいのです」

シャルマはイスラム圏でこの映画を公開する資金を募るために、クラウドファンディングサービス「Indiegogo」でキャンペーンを立ち上げた。この作品は、今月末にロサンゼルスで公開され、10月にはiTunesでの配信される。

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カアバへの入り口を警備をするサウジアラビアの警察官。何百万人の巡礼者にとって、カアバに触れることはそれだけで赦しになる。しかし、このような警備が配置されていることは、サウジアラビア政府が彼らの巡礼を支配しているということを思い出させてしまう

一方、シャルマはニューヨークでパートナーの男性と一緒に暮らし、この映画がイスラム圏と批評家の中での対話を広めることになればと願っている。

「すべてのイスラム教徒は暴力的なイデオロギーを持っていると思われ、悪者扱いされがちです」とシャルマは話す。「私のような人間が、イスラム教徒がそうではないことをもっと伝えなければなりません」

この映画がイスラム教の論争を終わらせる捧げものになることを、シャルマは願っている。

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この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

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