ビットコインの生みの親「ナカモト・サトシ」の正体が判明か?

先週インターネットでちょっと不思議なことが起きた。Skye Greyという研究者がBitcoinの創作者、Satoshi Nakamotoと、ジョージワシントン大学のNick Szaboという研究者が同一人物であるとする、詳細なテキスト分析結果を公開したところ、関心はおよそ薄かった。
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先週インターネットでちょっと不思議なことが起きた。Skye Greyという研究者がBitcoinの創作者、Satoshi Nakamotoと、ジョージワシントン大学のNick Szaboという研究者が同一人物であるとする、詳細なテキスト分析結果を公開したところ、関心はおよそ薄かった。

Greyは、個人的な内容に立ち入ることを拒んだが、果たして彼は謎を解明したのか?あるいは、例のごとく単なる臆測なのか。

果たしてSatoshiが実在の人物なのか、集団なのか、あるいは何らかの政府組織でなのかは重要だ。それによって、この貸幣の誕生秘話は終りを告げ、Bitcoin市場の異端な部分に関する数多くの噂やほのめかしの真偽が確認される。果たしてBTCは、われわれが政府から逃がれるための方法だったのか、なぜSatoshiはそこまで秘密主義なのか? Greyの分析は未だに証明も反証もされていないが、そのプロセスは実に興味をそそられる。

見たところGreyの分析は信頼できそうだったので、私は短かいインタビューを行うことにした。

TC:自身について。なぜこの研究を行ったのか?

SG:当初は単なる興味からだった。私はミステリー好きだ。その後2つの理由から公開する決心をした。

・他の人々に私の方法と発見を反証あるいは証明してもらうため。私は確信を持ちたかったし、自分の発見の真偽がわからないままになるのはいやだった。

・「悪いやつ」がBitcoinを作ったのではないか、という人々の懸念を解消したかった。この問題は、近い将来Bitcoinが主流になることを妨げると私は考えている。

TC:その人物がNick Szaboであるという確信はあるか?

SG:Nick Szaboであるという確信はないが、彼を指し示す個別の証拠が数多くあり、いずれも興味深い。

・テキスト分析(暗号研究者のわずか0.1%しか、この文章スタイルで書いていない ― 改めてお願いするが、これに関して私の方法を批判してほしい)

・Nickが、Bitcoin発表の数ヵ月前にbit goldプロジェクト(非常によく似た暗号化通貨)の共同研究者を探していたという事実(そして、それ以来bit goldプロジェクトが全く音沙汰なしであること)

・Nickの研究についてSatoshiが言及しておらず、より関連の薄い暗号化通貨には言及していること。

・NickがBitcoinについて発言していないこと。Bitcoinのような分散的通貨は10年以上にわたって彼の主要研究であったにもかかわらず。

・Nickが、Bitcoinの発表直後に、自分のbit goldに関する記事の日付を書き換えてBitcoinより後に見えるようにした事実。

現在私は、それぞれ独自のテキスト分析手法を持つ2人の人物に、私の方法を検証してもらおうとしている。

TC:これに意味はあるのか? もしあるなら何が変わると思うか?

SG:Bitcoinの歴史上のこの時点でSatoshiの正体を特定することは非常に重要だと思っている。Bitcoinの背後に「筋書き」があるとして、もし代貸通貨の主流になるのであれば、陰のままでい続けることはできない。Bitcoinは政府機関(暗号を研究する数学者の主要雇用主)が、金銭取引のデータパターンを発見しやすくするために作った、という臆測もある。われわれの生活にBitcoinが深く浸透する前に、それを確かめておく必要がある。

もしNick Szaboが首謀者なら、Bitcoinにとってすばらしいニュースだと思う。Nickは、才気あふれる私欲のない博識な学者だと思われる。Bitcoinの創造者としてどちらがいいと思うだろうか? 洞察力のある教授と協力者たち、それとも幽霊。

TC:BTCコミュニティーの反応は? 不評な話題のようだが。

SG:まだ好意的に受け入れられておらず、人々は私に「Satoshiをそっとしておけ」と言っている。しかし、世界に大きな影響力を持つようになった人物は、匿名でいる権利を失う。Satoshiは現在約100万BTC、10億ドル相当を所有し、Bitcoin市場を破壊する潜在能力を持っている。われわれは、誰が自分たちを支配する権力を持っているか、その意図は何かを知る必要がある。リーダーを選ぶ際に素性調査が必要なのはこのためだ。同じように、われわれが貨幣交換取引に使い始める前に、Bitcoinシステムの「素性調査」が必要だ。その次は、Satoshiの隠しBTCがどうなるかを知ることだ。

おそらくSatoshiの匿名性は、Bitcoinの早期導入に役立っただろう(「誰もがSatoshi」)。その神秘性が早期熱狂者たちを引き込む強力なストーリーを生んだからだ。今この匿名性は、本流への参入を妨げている。Bitcoinの起源と目的に関する当然の懸念があるからだ。

TC:文章中の「癖」から個人を特定するのは簡単なのか?

SG:比較的簡単だ。人はみな独自の方法で言語を使っている。われわれの書く文章の中の、稀な表現、文構成、無意味な単語の確率分布は、一種の「シグナチャー」になる。指紋やDNAほどの特定識別性はないが、数百人数千人の中から1人を特定するのに十分な識別性はある。作家や学者等の中にはとりわけ特徴的な癖を持つ傾向の人がいて、確実な識別が可能だ。

Satoshiの場合、内容に依存しない稀な表現が、Satoshiの白書とNicksの論文から複数見つかった。そのうち4つの表現について、(Google Scholarを使って)論文でこれらの表現を使う可能性のある研究者が暗号学界にいる確率を推定することができた。確率はそれぞれ15%、10%、15%、および50%だった。それぞれの表現を使うする可能性が互いに独立であると仮定すると、ある研究者がその全部を著作物に使用する同時確率は0.1%のオーダーになる。つまり、この「癖」の組み合わせを用いて、1000人から1人の暗号研究者を識別できる。推定確率が大きくずれたとしても、同時確率はかなり小さいままだ。

TC:Satoshiのアイデンティティーに、僅差の次点はいるのか?

SG:Nickは、断トツでナンバーワンの候補だ。言うに値する名前は他にない。

TC:あなたはBitcoinをどれだけ持っているのか?

SG:1から10 BTCというところ。私はBitcoinに巨額な投資をしていないが、これが受け入れられる見通しについては、間違いなく楽観的だ。

(この記事は、12月6日のTechCrunch Japan『本物のナカモト・サトシは誰か? 一人の研究者が答を見つけたかもしれない』から転載しました)