STAN HONDA VIA AFP/GETTY IMAGES
AFP通信の写真家、スタン・ホンダ氏が撮影したボーダーズさんの写真は、9.11の混乱と恐怖を思い出させるものとして人々の記憶にとどまり続けている。 ホンダ氏は2011年に当時のことを次のように語っている。
「警官が、人々を近くのビルの入り口に引き入れて危険が及ばないようにしていました。中に入ると、外は数分間闇に包まれました。そこに全身灰色の粉じんにまみれた1人の女性が入ってきたんです。仕事のためのきちんとした身なりをしていました。私は彼女の写真を1枚だけ撮影しましたが、すぐに警官が人々を上の階に誘導し始めました。1階にいないほうが安全だろうと判断したようでした」
ボーダーズさんは当時28歳。1機目の飛行機が突入した時、ワールドトレードセンターのノースタワー81階で働いていた。階段を降りて逃げ、ビルから出たときにサウスタワーが倒壊し、粉じんや瓦礫となって彼女の上に降ってきた。
ボーダーズさんは2011年のニューヨークポスト紙の取材で、その時のことを「顔の前に広げた手も見えませんでした」「世界から音が消えました」 と話している。その後、知らない人が安全のため近くのビルに彼女を引き入れ、ホンダ氏が粉じんまみれのボーダーズさんを撮影したのだ。
テレグラフ紙によれば、ボーダーズさんは粉じんにまみれた洋服をビニール袋に入れてクローゼットにしまっていたそうだ。しかし2011年以降、服は見ることはなかった。
9.11後の10年間、ボーダーズさんはうつ病や薬物乱用に苦しみ、2011年にはリハビリセンターに入院した。
ワールドトレードセンターテロの生存者マーシー・ボーダーズさん。2002年3月8日、ニュージャージー州ベイヨン自宅でのインタビューにて。
2014年の秋、ボーダーズさんはジャージー・ジャーナル紙のインタビューで、がんがテロと関係があるのではないかと考えている、と話した。
「心の中で『テロが、がんの原因じゃないか」?』と考えているんです。それまでなんの病気も持っていませんでした。高血圧でもなかったし、コレステロール値も高くなかったし、糖尿病でもなかった。健康だったのに、次の日目覚めたらがんだったなんてことがあるでしょうか?」
近年、9.11と関連するがんの症例数は増えている。アメリカ疾病予防管理センターによれば、2015年5月現在、緊急救援隊員やレスキュー隊員、生存者でテロ攻撃と関係あるがんだと診断されたケースは4,000を超えるという。皮膚がん、前立腺がん、非ホジキンリンパ種がもっとも多く報告されている。
実際にグラウンドゼロで粉じんをかぶったハフポストUS版のマイケル・マコーリフは、自身の体験を、次のように記している。
なぜ私が他の多くの人と違って病気にならなかったのか、理由は誰にもわかりません。何千もの人々が、細胞が焼け付くような粉じんに巻き込まれました。しかし、マウントサイナイ病院の検査では、私の肺活量は、私の年齢である45歳の基準値の140%でした。
シャツを口にあてて呼吸したことが良かったのかもしれません。「ちょっとした行動で、体を守ったのかもしれない」とマウントサイナイ医科大学のランドリガン学部長は話しています。
しかし本当のことは誰にもわかりません。私も含めてあの災害地域に住んでいた人、働いていた人に将来何があるかもまだわからないのです。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
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