その男、80歳。
ハイセンスな服で身を包み、職場のある銀座を日々歩く。
ある日はデニムでカジュアルスタイル、
ある日は花柄で華やかに、またある日は全身ピンクで。
道を歩くだけで誰もが振り返り、「素敵」という声が聞こえてくる。
このインタビューは銀座に実在する"モジ"(モダンおじいさん)の半生である。
清水(80)銀座かねまつ勤務
座右の銘:一生懸命
得意技:靴を作ること
■Interview
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洋服のこだわり? 別にないよ。5年前くらいまでは『LEON』とか雑誌も読んでたけど、今は読まないな。生まれは新宿。家は靴のメーカーで7人兄弟の4男坊。戦時中は本当に食うために必死だった。
高校卒業してすぐ靴職人になった。職人さんにはいろいろ教えてもらったよ。え? 女遊びに決まってんじゃない。今は銀座かねまつで働いてるよ。靴の魅力は左右があることだな。その人の足の形に合わせて作るのが楽しいんだ。
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結婚は30歳で。出会いはみんなと同じだよ、ナンパしてね。それは嘘だけど。気付いたら俺の側にいたんだ。普通の子だよ。結婚前に毎年女房と上高地でデートしたことはよく覚えてるよ。楽しかったな。
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人生で幸せだった瞬間? 今が絶好調だよ。将来の夢? ドリームかぁ...。まぁこれから先、明るく生きたい。仕事は一生続けたいな。俺はこれより他には何もできないからな。今の世の中はまぁいいんじゃない? みんな楽しそうにやってんじゃない。戦後70年経って、戦争がない国なんか他にないだろう、な?
(了)
(現在発売中の雑誌『東京グラフィティ』2月号からの転載です)