戦後70年目企画最終回 8月15日の靖国神社付近などを歩く

日本国民の中で、戦争を目(ま)の当たりにした人々にとっては、「8月」に特別な想いを抱いている。うだる暑さの中、広島市と長崎市に原爆が落とされたのち、昭和天皇は「負け」を認めた。
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日本国民の中で、戦争を目(ま)の当たりにした人々にとっては、「8月」に特別な想いを抱いている。うだる暑さの中、広島市と長崎市に原爆が落とされたのち、昭和天皇は「負け」を認めた。

その後、日本国憲法の施行により、戦争の参加を放棄し、日本人は平和な世の中の実現に向けて邁進した。不撓不屈の精神や不断の努力により、高度経済成長期の到来、東海道新幹線の開業、東京オリンピックの開催の3つが"平和の象徴"といえる(蛇足ながら、国鉄では、急行〈さちかぜ〉、特急〈へいわ〉〈平和〉という、希求を込めた列車が存在していた)。

しかし、今の日本は、「平和」がいつ崩壊してもおかしくない状況で、私は「戦争の風化」や「憲法改正による戦争参加」などを危惧している。

2014年5月17日より、「戦後70年目企画」として、フリーライター転身前の手記をハフィントンポストに掲載させていただいた(一部はYahoo!ニュース個人に転載)。今回はこの企画の最終回として、「8月15日の靖国神社付近など」を歩いてみた。

■靖国神社から半径2キロ以内で厳戒態勢

正午過ぎ、JR東日本御茶ノ水駅周辺では、物々しい格好をした警官が見張りをしていた。ヘルメットをかぶり、肩、ヒジ、足にはプロテクター、胸部には防弾チョッキをそれぞれ装着し、"いつでも牙をむく"態勢を整えていた。毎年8月15日の靖国神社周辺は、いつもこのありさまだ。

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JR東日本水道橋駅付近

隣の水道橋駅周辺でも厳戒態勢で、都道301号線白山通り春日方面の左側車線では、警視庁が人員輸送車を止めていた。この日はお盆のせいか、人通りと交通量は、いつもより少なめなので、騒然とした雰囲気はない。

交通量が非常に少ない丘の上の公道や、明治大学猿楽町第二校舎付近の階段では、いつでも封鎖できる体制を整えている。歩いていた男子学生数人のうち、1人は「こんなにする必要あるの?」と友達に疑問をぶつけていた。

■地下鉄九段下駅周辺は異様な雰囲気

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地下鉄神保町駅を過ぎると、近寄りがたい光景を目にしなければならない。

所用を終え、都道301号線白山通りを歩き、神保町交差点へ。都道302号線靖国通りでは、警官たちが柵をトラックに積み込んで、九段下方面へ移動。その先の九段下交差点を眺めると、人員輸送車が10台止まっており、異様な雰囲気であるとともに、靖国神社の入口を示す。

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九段下駅周辺は超厳戒態勢。

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右翼団体の集会。深入りすると拉致されそうな気がする。

14時10分、九段下交差点へ。無数の柵が設置され、都道8号線目白通り側では、いつでも封鎖できる体制が整っている。北の丸スクエア付近では、右翼団体の集会が終わりに近づいており、これから第1会場と第2会場に向かうという。右翼団体の人々は盛り上がっており、警官は厳しいまなざしで監視する。"右翼ではない人を事故や事件に巻き込ませてはいけない"という緊張感が伝わってくる。

後刻、別の右翼団体が集会を行なっていた。不惑が近い私でも、この場に立っているのが恐ろしく、生きて帰宅できるのか不安だった。

■九段下交差点―田安門交差点間では署名活動などが活発

九段下交差点を過ぎると、靖国神社寄りの歩道では、あちらこちらで署名活動などが行なわれていた。

●NPO法人日本法輪大法学会(通称、法輪功[ファルンゴン])

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法輪功の叫び。

"本業"としている「気功修煉法」の宣伝をする傍ら、1999年7月20日より中国共産党から迫害を受け、6万人以上が生きたまま臓器を摘出された"事実"を道行く人々に訴えている。臓器は高値で売買され、外国の臓器移植手術を希望する患者に移植されたという。

現在も迫害は続いており、死者は3,776人にのぼる。法輪功は迫害を停止させるための署名活動を行なっていた。

●特定非営利活動法人 日本ウイグル協会

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中国の面積は間違っていると主張しているが......

こちらも中国に対する反発活動を行なっている。木の幹には「社会科教科書に台湾を中国領土と記載させる文科省検定を許すな!!」という看板を掲示していた。上記に該当する教科書のページをピックアップし、台湾が中国領として扱われている部分を強調している(ただし、一部の教科書は「台湾」と記載されていた)。

帰宅後、中国と台湾の面積を調べたところ、前者は約960万平方キロメートル(世界第4位)、後者は36,000平方キロメートル(九州よりやや小さい)だという。合計すると約963万6000平方キロメートルなので、"勘違いしているのでは?"と首をひねる。

テーブルには、台湾研究フォーラム活動の支援をお願いするためのカンパ箱、透明の募金箱が置いてある。後者については紙幣が多く、小銭が見えない。

このほか、2009年夏に中国で発生したウイグル人の虐殺事件を取り上げていた。中国という国の悪い評判は、以前から報じられているとはいえ、新しい情報を知ると背筋が凍る。

●右翼団体?(左記のみ署名活動なし)

「天皇陛下万歳シール、あと25枚ありまーす」

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赤と白のシールをいただく。さいわい、右翼団体と思われるところからの勧誘はなかった。

右翼団体と思われるところでは、シールとリーフレットの配布が行なわれていた。資料目的でいただくと、赤シール「天皇陛下万歳」と白シール「富國強兵」に分けていた。

リーフレットは、大日本帝国憲法の条文(一部抜粋)と、その復活を呼び掛けていた(現在の日本国憲法は無効と主張)。ただし、どこの法人、団体なのか一切明記しておらず、信用性に欠ける。

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靖国神社に対する思い入れが強い横断幕。

少し先では、愛国心を強調したTシャツを販売していたので、同志だと思う。

●一般社団法人 新しい歴史教科書をつくる会東京支部

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河野談話撤廃を求める署名活動。

ここでは河野談話撤廃を求める署名活動を行なっていた。同会は以前から活動しており、ここまで5万人以上が署名したという。参考資料として、産経新聞2013年10月16日朝刊(産業経済新聞刊)を展示し、5面に河野談話全文が掲載されている。

同会のリーフレットによると、日本における第2次世界大戦の名称は、「太平洋戦争」ではなく、「大東亜(東アジア)戦争」という。その由来は、閣議決定によるものだ。なお、「太平洋戦争」というのは、アメリカの侵略ルートに由来する呼び名だという。

さらに南京大虐殺や従軍慰安婦は捏造された虚構と主張した。特に後者については、朝日新聞の捏造と主張し、同社はのちに誤報を認めたが、謝罪はしていない。

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朝日新聞は系列会社も含め、記事に関するトラブルも多い。

この日は「朝日新聞を人間の鎖で包囲する会」も参加し、朝日新聞の不買運動や、道行く人々に国会証人喚問陳情書を配布していた。

新しい歴史教科書をつくる会は、1997年1月30日に発足し、"正しい歴史を子供たちに伝えたい"思いがある。実際、中学生用の『新しい歴史教科書』と『新しい公民教科書』を検定合格させている。今後は戦争に特化し、書店販売もできる"大人向けの教科書"があっていいと思う。

参考までに、同会とはなんら関係もない、『太田光の私が総理大臣になったら... 秘書田中。』(日本テレビ)という番組で、"小さな国会"の太田光総理大臣が「アジア諸国と共同で第二次世界大戦の歴史教科書を作ります」(2006年8月11日放送)というマニフェストを出したが、否決された。

私は太田総理のマニフェストを支持したい。第1次も含めた世界大戦の歴史を詳細にまとめ、後世に「戦争」「平和」「命」の重さを伝えければならない。掲載する内容は戦争の歴史だけではなく、戦後についても述べ、日本国憲法の制定、高度経済成長期など、"平和への歩み"も必要だ。

■警視庁 VS 右翼団体

田安門交差点では、本格的な交通整理が行なわれていた。

14時40分頃、都道302号線靖国通りが青信号であるにもかかわらず、警官らは道を封鎖し、濃紺の自動車と白い軽自動車が交差点内で止まった。私の後ろでは、存在感を強調するかの如く、黒い自動車が大音響で歌(『愛国の花』、『愛国行進曲』のいずれかと思われる)を流していたのだ。

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右翼団体の自動車が都道302号線靖国通りに現れた。

警官は黒い自動車が数台現れたので、直進しようとする先頭車を止めたのだ。現場の緊張感がさらに高まる。先に止められた2台は、右翼団体とは関係ない模様で、盾代わりにした印象がある。

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直進をあきらめ左折。"大人の対応"をとったのは意外だった。

右翼団体の自動車は強引に突破しようとせず、仕方なくバックして左折。直後、十数台の自動車が相次いで左折。警官は安全確認したのち、封鎖を解除した。

その後、私は靖国神社に入った。中の様子はハフィントンポストの記事(2014年8月15日に掲載)にお任せしよう。

★備考

・外務省ホームページ「台湾基礎データ」

・外務省ホームページ「中国基礎データ」

★戦後70年目企画一覧