横暴なリーダーは5つの習慣で愛される

俺がまず横暴なリーダーを見たときに判断する軸は「仕事をドライブできるか?」である。「仕事をドライブする」とは、問題を切り分け、判断・決断を適時行い、そのことに責任をとることだ。そして人を(強引にでも)動かしていく力だ。
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【サイボウズ式編集部より】

この「ブロガーズ・コラム」は、著名ブロガーをサイボウズ外部から招いて、チームワークに関するコラムを執筆いただいています。今回は「My Favorite, Addict and Rhetoric Lovers Only」のファーレンハイトさんが考える「愛されるリーダー」についてです。

前回のコラムでは、横暴なリーダーについて書いた。

俺がまず横暴なリーダーを見たときに判断する軸は「仕事をドライブできるか?」である。「仕事をドライブする」とは、問題を切り分け、判断・決断を適時行い、そのことに責任をとることだ。そして人を(強引にでも)動かしていく力だ。

さて、前回のコラムのラストで少し書いたが、ゴリゴリしたパワースタイルでメンバーを動かしていくタイプのリーダーがいる。果たしてそれは、素晴らしいリーダーだろうか?

答えはYES AND NO。

おそらく前回のコラムを読んでくれた人は「一理ある」と思いつつ、モヤッとした気持ちを残したはず。それは(たとえ優秀であろうと)人間性を伴っていないリーダーに割を食わされてきたからに違いない。筋は通っているけど、なんかムカつくというアレだ。

会社員だったら経験してきたんじゃないだろうか? リーダーの言っていることはもっともだし、実際にその方が良いように思える。でもカチンとくる。俺はこれを深刻な問題だと思っている。

これが今日のテーマだ。

そう、仕事において大きくパフォーマンスを左右するものに「感情」がある。リーダーはメンバーの感情を考慮することが大きな仕事のひとつといえる。メンバーのクロック数を下げてしまうと当然、チームとしてのパフォーマンスが下げてしまうから。

気分がノッている状態をいかにつくっていけるかがリーダーの資質のひとつだ。

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■仕事だから「ガマンすること」は致し方ないか?

リーダーが引っぱる対象は「案件の進捗」と「メンバーのモチベーション」といえる。厳密に言えば、案件を進捗させるためにはメンバーのモチベーションをあげることが不可欠である。

それにもかかわらず、後者の成立は"人依存"になっているケースがあまりにも多い。

俺自身はいわゆる大企業(サイボウズではない)に勤めていて、徹底してコンプライアンス・パワハラ・セクハラの教育を受けているし、それらに対するホットラインもある。にもかかわらず、一部には人としてやってはいけないコミュニケーションを取る人たちがいる。それに対するマネジメントの態度も「あの人はああいう人だからしょうがないよね」という感じ。一般的に"人間教育"は会社員のタスク外ということなのだろう。

普通に人としてやってはいけないコミュニケーションが、「仕事だから致し方ない」でまかり通っていることが会社には多々ある。良い悪いではなく現実だ。

  • 他人に仕事を頼むときに「あいつにやらせれば良い」という言い様を平気でする。
  • できあがった成果物に対してまず「ありがとう」を言えない。
  • 修正ポイントの指摘だけに絞ることを効率的と勘違いしている。
  • 怒ることと叱ることを混同して公開処刑のように怒鳴り散らかしている

こんな仕打ちを受けてヤル気が出る人なんかいない。意識が高くてどんな環境でも120%頑張れる人は少数派なのだ。何らかの楽しみや充実感、自分の評価に対する手応え、そして「この人のために頑張りたい」という思いがあるからこそ頑張れる人が大多数。

俺は今挙げたリーダーとは異なる、"人の気持ちを掴むリーダー"についたことがある。彼らは以下の5つの習慣を持っていた。これは俺がチームリーダーとして動く際の指針、もしくは後輩に接するときに心がけているものになっている。

■他人を気持ちよく動かすリーダーの5つの習慣

・メンバーの話を最後まで聞く

自分の持ちタスクで逼迫している状況のなかでメンバーに話しかけられたとき、パソコンから目を話して目を見て話を聞ける。どうしても出来ないときは「すまん、10分待ってくれ」と返事する。決して邪険に「ちょっと待って!」とは言わない。

メンバーが自分に聞きに来るということは困っていると同義だ。たしかに自分が切羽詰まってるときはあるが、信頼構築には絶好の機会ということを肝に命じて大事にしたい時間だ。

・知ったかぶりをしない

自分が知らないことをきちんと教えてもらう姿勢を持っている。知らないことを恥ずかしがるリーダーが多いけれど、細かい情報や実際の状況を現場のメンバーほど知らないのは当たり前。

情報がきっちりそろっているから判断ができる。一般論や正論に逃げない。メンバーに「(苦労も含めた実態を)わかってねーくせに」と思われない。無駄な体面を取り繕わないからこそ得られる信頼関係があるはずだ。

・きちんとにホメて、コンパクトに指摘する

依頼した成果物が上がってきたときにはまずは労をねぎらう。「~がやった成果物」ではなく、「~がやってくれた成果物」というような言葉遣いに端的にあらわれる。褒めるときは少々オーバーにでも褒める。指摘するときはコンパクトに。

絶対にやってはいけないのは人間性や能力の否定を感じさせる指摘。メンバーを腐らせる以外の効用が見当たらない。

・メンバーに敬意を払う

リーダーは基本的な決定権を持っているため、勘違いする人が多い。そんななか、ただの役割分担として実作業を"お願い"していて、自分は判断の担当をしているという気持ちを持っている人は輝く。「これお願いしてもいい?」という言い方を徹底する。そのために説明する時間は当然いとわない。

顕著に出るのは逼迫した状況だったり、メンバーが気乗りしていないときだろうか。そこで高圧的な態度に出るのではなく、粘り強く、ときには下手に出る姿勢を徹底できるかといえる。

・メンバーを守る

自分が良い顔をするためにメンバーを売らない人。責任者としての責任を果たせる人と言い換えて良い。

もうひとつは「余計な仕事を作ってこない」こと。ときには客先や上司にムチャぶりをされるなかで、そこを上手く逃げてタスクを増やさない舵取りができること。リーダーは仕事の窓口になっていることが多いだけに、その人の振る舞いがチーム全体の仕事量を左右するケースが多い。下手な舵取りでチームがキャパオーバーになって沈まないようにしたいものだ。

■気持ちよく働けるようにすることが仕事の進捗に不可欠

これらは当たり前のことばっかりだ。だけど、自分がリーダーとして動いたことがある人には、これらの当たり前を徹底することがいかに難しいかを分かっていただけると思う。切羽詰まった余裕がない状況のなかで「横柄な態度」「メンバーを雑に使う」に逃げればラクなことが多いから。

しかし、メンバーの感情を考慮しないことは、メンバーのやる気をさげることにつながり、効率を低下させる。すなわち、冒頭に挙げたクロック数の低下だ。

「言い方を気にせずに強引に進めること」はショートカットのようでいて、決して目標達成の近道ではない

メンバー全員の意向・事情を汲むことは現実問題として難しい局面が出てくる。ときにはあきらめてもらうことが必要になってくる。

だからこそ、自分のなかでやってはいけないラインを定めておくのは重要なことだ。

自分を尊重してくれるリーダー。リソースの1人としかみなしていないリーダー。どちらのために働きたいだろうか? 俺は前者のような人のために働きたいから、前者のような人であろうと動いている。

これはロジックではなく、感情や印象レベルの話になる。だけど、圧倒的多くの人はロジカルであることよりも、気持ち良く働けることを望んでいるものなのだ。

どんなに余裕がない状況でも、動いてもらうことが難しい状況でも、立場や役割をさっぴいて相手を尊重する姿勢。業務の進捗と同じレベルにこのタスクをとらえられるかがすべてなんだと俺は思っている。

ファーレンハイトさんより

普段はブログ「My Favorite, Addict and Rhetoric Lovers Only」、Web媒体「AM [アム] 」で恋愛・人間関係について書いています。サイボウズ式のブロガーズ・コラムでは、仕事・チームワークにおける他人との関係性について何らかの価値を提供できたらと思っています。

(サイボウズ式 2014年5月9日の掲載記事「横暴なリーダーは5つの習慣で愛される」より転載しました)

イラスト:マツナガエイコ