中絶の機会を奪われれば、女性アスリートたちが「破滅的な影響」を受けることになる――500人以上の女性アスリートらが9月20日、中絶規制を認めないよう求める意見書を、アメリカ連邦最高裁判所に提出した。
意見書は、最高裁判所がミシシッピ州の中絶規制法を巡る審理を12月1日に開始すると発表したことを受けて、提出された。
この中で、様々なアスリートたちが自分たちの経験をシェアし、中絶は平等のために欠かせないと訴えている。
中絶の権利が危機的状況に
アメリカでは、1973年の「ロー対ウェイド」裁判で、胎児が子宮外で生存可能になるとされる妊娠24週目ごろまでの中絶を、合憲とする判断が示された。
しかし、ミシシッピ州では2018年に15週目以降の中絶を禁じる州法が成立し、州当局はロー対ウェイド判決の破棄を求めている。
もし最高裁判所がミシシッピ州の中絶禁止を支持した場合、24の州で中絶の権利を保護する法律が撤廃されると考えられている。
意見書には、サッカーのミーガン・ラピノー選手や水球のアシュリー・ジョンソン選手、バスケットボールのレイシア・クラレンドン選手やスー・バード選手など、オリンピック金メダリストを含む、514人の現役および元アスリートたちが署名している。
意見書の中でアスリートたちは「妊娠を強制されれば、多くの女性アスリートたちがキャリアを続けられなくなる」と警告している。
さらに、1992年のバルセロナオリンピックで金メダルを獲得した元競泳選手のクリッシー・パーハム氏は、大学時代に中絶したことを公表し、「人生が全く違うものになった」と述べている。
(パーハム氏のコメント抜粋)
私は奨学金をもらっており、スポーツで成功し始めたばかりでした。1年間休みたくなかったため、中絶を決めました。母親になるための準備もできていませんでした。
中絶により、私は2度目の人生のチャンスをもらったように感じました。自分で自分の将来を決めて、何を優先すべきかに再び集中できました。大学の成績もあがり、トレーニングに励みました。そしてその夏、全国選手権で初めて優勝しました。その試合は私の人生を変えました。もし妊娠を続けていてその試合に出られなかったら、人生は全く違うものになっていたと思います。この試合で多くの機会に恵まれ、1年後には私はオリンピック代表チームのメンバーに選ばれました。
中絶の権利は、性的暴行の被害に遭ったアスリートの肉体的・精神的な回復を助けるものでもある。大学時代に性的暴行を受けた1人のフィールドホッケー選手は、次のようにつづる。
(フィールドホッケー選手のコメント抜粋)
大学3年性の時にレイプの被害に遭い、もし妊娠していたら、中絶をしなければいけないという状況に置かれました。
フィールドホッケーは私にとっての情熱であり、精神的そして肉体的な健康をキープするためにに必要でした。しかし、もし妊娠すれば、最後の2シーズンプレーできなくなる上、医療のキャリアを追うのが難しくなりました。また、経済的にも感情的にも、子どもを産み育てる余裕はありませんでした。
意見書によると、妊娠や出産によってスポーツのキャリアを続けるのが難しくなったアスリートもいる。
オリンピック出場経験もある長距離ランナーのカラ・ガウチャー選手は、出産後に医師から「毎週120マイル(約193キロ)走ることと、母乳を与えることのどちらかを選ばなければいけない」と告げられた。
また同選手は、出産から7か月後にボストンマラソンに出場して以来、慢性的な股関節の怪我に苦しんでいるという。
自分の体、自分で決める
意見書は、望まない妊娠を続けることで女性アスリートが身体的な影響を受けるだけではなく、感情的および経済的な犠牲を払うことが少なくない、指摘する。
そして「女性アスリートがスポーツに完全かつ平等に参加するために、身体的インテグリティ(自らの肉体への侵害を許さないこと)と自己決定権が保障されなければならない」と、訴える。
ラピノー選手は声明で「女性アスリートとして、そしてスポーツに携わるものとして、私たちは、自身の体についての重要な決定をする権利とリプロダクティブ(性と生殖)の権利を持たなければならない」と述べている。
ハフポストUS版の記事を翻訳・加筆しました。