写真を1枚選ぶだけでおしゃれなカレンダーを送ってくれるサービス「レター」

クックパッドの100%子会社として2013年11月に創業したROLLCAKEは今日、ベータテスト期間を経て同社初めてのプロダクトとなる「レター」を正式にリリースした。iPhone、iPadなどiOSアプリをダウンロードして、写真を1枚選ぶだけでおしゃれな写真入りカレンダーが作成でき、指定した住所へ1通250円(税込み・送料込み。
|

クックパッドの100%子会社として2013年11月に創業したROLLCAKEは今日、ベータテスト期間を経て同社初めてのプロダクトとなる「レター」を正式にリリースした。iPhone、iPadなどiOSアプリをダウンロードして、写真を1枚選ぶだけでおしゃれな写真入りカレンダーが作成でき、指定した住所へ1通250円(税込み・送料込み。初回は送料80円のみ)で送ってくれるというサービスだ。子ども(孫)の成長の様子を両親に届けたいパパ・ママ層にフォーカスしている。

Open Image Modal
Open Image Modal

アプリ自体も、仕上がりのカレンダーも極めてシンプル。選ぶのは1枚の写真だけで、ウィザード形式で送付先住所を入れる。続いて、縦長のはがきとして送付されるカレンダーの裏に印字される100文字のメッセージを入力するだけだ。1年分でもなければ継続利用が前提でもなく、1枚選んで、ひと月分のカレンダーを送るだけだ。

この手のデジタル写真のプリント・郵送サービスは昔からずいぶん沢山あるし、最近だとミクシィのノハナなんかもフォトブックサービスとして注目を集めている。じゃあ、レターは何が新しいのか? というと、多分なにも新しくない。なのだが、「これなら使ってみよう。続けられそう」と思わせる絶妙の手軽さと、おしゃれな仕上がりが目を引く。

レターを開発したROLLCAKE代表取締役の石田忠司氏は、プロダクトをシンプルにすることにこだわったという。

Open Image Modal

「持続可能なサービスに興味があるんです。流行のように少しの間だけ使われて、その後は使われなくなるサービスというのが嫌だったので、使うのが負担にならない、続けられるサービスにしたかった」(石田氏)

月に1度だけ、1枚だけ選ぶというのはだいぶ利用のハードルが低い。毎月月末が近づくと通知が来るので、そこで写真を1枚選び、メッセージを載せて送るだけ。1度送った住所は登録されるので、2度目以降は手間がない。石田氏に言わせると、毎月20枚を選ぶノハナですら作業の負荷が高く、利用継続率で見ると結構厳しいのではないかと見ているという。

支払いについても、6カ月プランだとか年間割引とか、そういうややこしいことを言わずに250円の都度課金という割り切りの良さ。お得な1年パックだとかと言って継続率が極めて悪いことを知りつつ最初から長期契約に持ち込もうとする悪徳英会話学校のように顧客を囲い込むマーケティング主導ではなく、気に入ったら継続してくれるはずという「プロダクト勝負」感が個人的には潔い良いと思う。

レターで使う写真は、選択後にピンチズームによるトリミングや位置合わせ、自動露出補正ぐらいはできるが、フィルタ効果や装飾フレームなどはない。デザイン上で変更できるのはカレンダーの背景色を選ぶぐらいだ。右側に配置された12個のカラフルなドットは実はカレンダーの色選択のUIなのだが、ちょっと見逃してしまいそうなくらい控えめだ。

このシンプルさは意図的で、例えばカレンダーの柄やフォントをユーザーに選んでもらうなど複雑なことをしだすと、途端にユーザーにとって面倒になるからなのだという。一方で、カレンダーは12色から選べるというのには理由があるという。それは毎月送られてくるカレンダーがたまった時に「色違いというだけであればコレクションになる」から。柄までは選ばせないのは一貫性のないバラバラなカレンダーの集まりにならないようにというデザイン上の選択なのだという。12色なのも、1年の12カ月から来ている。

カレンダーのデザインは選べないが、元々クックパッド社内のデザイナが個人的に作って発注していたカレンダーが原型という話で、紙質にもタイポグラフィーにも、強いこだわりが感じられる仕上がりだ。ちなみに、プリント・郵送のオペレーション部分はラクスルとの提携で実現しているという。

石田氏は「(アプリでユーザーが)やれることを増やしたい衝動は常にある」という。衝動に負けずにシンプルな分かりやすさを優先するというスタンスは、クックパッド創業者の佐野陽光氏の影響という。「サービスの使い方というのが、どれほどユーザーに伝わりづらいものなのか痛感した。いかにコンパクトなメッセージで伝えるかということの大切さを佐野のもとで学んだ」(石田氏)。

このためベータテスト期間中に最もユースケースの多かった「子どもの写真を祖父母に送る」というユースケースにしぼり、当初考えていた「大切な人に贈る」という汎用性の高い売り出しメッセージの打ち出し方を敢えて捨てたのだという。「孫の成長を毎月伝える新しい形の親孝行」というのが潜在利用者層に向けたメッセージだ。

写真アルバムプリントサービスの多くは自分で取っておくサービスという面もあるが、「ぼくらは人のコミュニケーションにフォーカスしてる」(石田氏)ときっぱり言い切る。実際、カレンダーを受け取る側からは「気持ちを伝えようとして作ってくれてるという行為自体がうれしい」という声があるという。

ROLLCAKEは石田氏のほかに、UI/UXデザイナの伊野亘輝氏、iOSエンジニアの永野哲久氏の3人がクックパッドから出向する形で創業した100%完全子会社。当面の目標はMAUで10万人という。デイワンから収益を確保しつつ、比較的早期の経済的自立が目指せるモデルだ。このため元々は自己資金で起業するという考えもあったというが、クックパッドの資金での挑戦を選んだ。

具体的な内容は非公開であるものの、出資のスキームとして子会社として創業するインセンティブというのがあるのだとか。創業にかけた思いとして、デザインの会社を作りたかったということもあるという。「良くも悪くもクックパッドはエンジニアの会社。ぼくらはデザインの会社を作るという意味でも子会社設立という道を選んだ」(石田氏)。

今後ROLLCAKEの方向性として、起業時にあたためていたもう1つのアイデアのプロダクト化に取り組むということや、メルマガのようにファンにまとめて写真付きカレンダー送付をする1対N送付のモデルをレターに追加するなども考えてはいるというが、当面はワンプロダクト、ワンユースケースで勝負するそうだ。

【関連記事】

(2014年2月15日の「TechCrunch Japan」より転載)