産後サポートの必要性と期間の延長を伝え、ママと赤ちゃんの笑顔を増やすというミッションのために立ち上がった「3・3産後サポートプロジェクト」。10月15日には都内でキックオフフォーラムが開催され、会場からの意見も取り入れて「赤ちゃんにやさしい家族」「赤ちゃんにやさしい企業」それぞれの5カ条を発表した。
これからの社会で本当に必要とされる産後サポートとは? 赤ちゃんにやさしい家族のありかたとは? プロジェクト発起人のひとりである、前編に続いて、NPO法人孫育て・ニッポン理事長のぼうだあきこさんに話を聞いた。
■産後・生後3カ月間は、あらゆる意味でのターニングポイント
――10月に行われたキックオフフォーラムでは、会場からの意見も取り入れて、「3・3産後サポートプロジェクト」の骨子ともいうべき「赤ちゃんにやさしい家族5カ条」を、以下のように決定したそうですね。
「赤ちゃんにやさしい家族 5カ条」
1.産後の女性のカラダについて知識を深めます。
2.赤ちゃんがいる生活をイメージし、父親の育休取得を含め、産後3カ月のサポート計画を、祖父母を含めた家族で立てます。
3.妊娠中に産後ケア、子育て支援情報の収集、見学をし、産後、家族の手では足りない場合は、外部サービスを利用します。
4.妊娠中から早起きを心がけ、朝ご飯を家族で食べます。
5.妊娠中から夫婦・家族で近所を散歩し、産後1カ月健診でOKがでたら赤ちゃんも一緒に散歩します。
会場では「赤ちゃんにやさしい~」よりも「産後ママにやさしい~」のほうがいいのでは、という意見もあがって、色々と話し合ったのですが、このプロジェクトの根本を考えると、やはり「赤ちゃんにやさしい」におさまりました。
このプロジェクトの第一義は、ママに知ってもらうためではないんですよ。ママはもちろんだけど、ママを取り巻く人々に知ってほしい。それが一番の目的だから、赤ちゃんのほうが伝わるかなと。そのかわり、5カ条の一番目に「産後の女性のカラダについての知識を深めます」という文言を置くことにしました。
3・3産後サポートプロジェクト キックオフフォーラムの様子
――5カ条の2は、産後3カ月の祖父母を含めた家族のサポート計画について、3は、外部サービスを含めそれを行動に移すための具体策ですね。
日本って「家族以外の人に助けてもらう」「あえて、子供を誰かに預けて出かける」という文化がないんですよ。外部に頼ることへの抵抗感がすごく強い。ママたち自身もそうだけど、それ以上に抵抗感を持っているのが祖父母の世代なんです。「母親になったんだからそれくらい頑張りなさい」「外部の手を借りるなんて、子育てができない母親のよう」と思って口を出してくる。いいじゃないですか、ラクしましょうよ! 外からそうは見えなくても、産後の女性の心身って本当に大変なんですから。
なぜ3カ月間か、ということに立ち返ると、あらゆる意味で産後3カ月はターニングポイントなんです。「ピジョン にっこり授乳期研究会」の調査によると、中国のお母さんは初乳をあげると「よし、子育ていけるぞ」と思うそうなんです。アメリカのお母さんはだいたい1カ月でそう思えるようになるんですって。でも日本のお母さんたちは3カ月目でようやく「よし、子育ていけるかな」と思えるそうなんです。日本のママたちは、3カ月経って赤ちゃんの体重が増えてこないと自信が持てない。それなのに赤ちゃんの泣き声は、新生児のときに比べると大きくなる。
もうひとつ大きいのが、この時期になると赤ちゃんの首が座ってくるんです。首が座ってくると、抱っこもお風呂に入れるのもグンと楽になる。いろんなところで不安がプラスに転じるのがだいたい生後3カ月なんです。
自転車に乗れるようになる過程と同じなんですよ。誰だって最初からひとりじゃ乗れない。補助輪をつけて、両側からサポートしてもらって、練習していくうちに、パッと一人で乗れる時期がくるでしょう? 子育てだって同じこと。
「3カ月だけじゃない、もっと長期的にケアすべきでしょう!」というご批判もいただいています。それはもちろんその通りなんです。でもどこかで目安をつけないと、と考えたときに、やはりあらゆる意味で産後3カ月が大きなターニングポイントでした。
――4の朝ごはんは、生活リズムを整えること、5はママの気分転換と同時に近所との繋がりを作る足がかり、ということでしょうか。
そうです。この2つは今まであまり言及されていないことだと思うのですが、朝食欠食率が高いのって圧倒的に20〜30代なんですよ。朝食を食べて規則正しい生活リズムを作ること、日の光を浴びることは、うつ予防にも効果的。妊娠中から生活リズムを作り、朝ごはんを食べる習慣をつけておくと、離乳食が始まってからも楽なんですよ。
――「産後」を3週間から3カ月にするのは、女性の第1子出産時の平均年齢は30.4歳(2015年)となるなど、高齢出産も増えている事情と関係もあるのでしょうか。
やはり高齢出産になると、産後の体力の回復が遅くなります。となると従来の床上げ1カ月という感覚にはどうしても追いつかない。また、残念ながらここ数年、精神疾患による患者数は増加の一途をたどっています。妊娠前に精神疾患を抱えていた女性は、産後うつも発症しやすくなるというデータも出ています。
そういった事情も考慮すると、やはり産後3カ月までの余裕をもってサポートしてから、送り出してあげたい。もちろんそのためには、本人や家族だけでなく、企業や地域のサポートも必要です。
企業には、ママたちの声で多かった「定時退社」の推進をお願いしたいです。産後1カ月を過ぎると祖父母のサポート、産院でのママのサポートもなくなります。頼みの綱はパパ。パパが毎日定時に帰って来てくれるだけで状況はずいぶんと改善されることと思います。
「赤ちゃんにやさしい家族5カ条」と同時に、「赤ちゃんにやさしい企業5カ条」も発表しました。
「赤ちゃんにやさしい企業5カ条」
1. 産後ママにとって家族のサポートが不足する時期(産後3カ月間)は、そのパートナーたる父親(社員)の育休・有休(年休)取得を促進します。
2.子が最低生後3カ月まで、父親(社員)の定時退社を促進します。
3.自社内においてママ、パパネットワーク作りを推進し、とくに妊娠~産後3カ月の社員への、先輩パパママ社員からの声かけを推進します。
4.社員に自分のカラダ、現在の妊娠・出産、不妊治療などについて学ぶ機会をつくります。
5.産後ケアサービスの助成、孫育て休暇の導入などを検討し、必要があれば実施します
12月には「赤ちゃんにやさしい地域5カ条」も発表予定です。これらの5カ条を広げて、家族、企業、地域で支えあいながら、産後のママとパパ、そして赤ちゃんをサポートしていく体制を積極的に作っていけたら、と思っています。
ぼうだあきこ
1968年、千葉県生まれ。雑誌編集などを経て、現在はNPO法人孫育て・ニッポン理事長、ファザーリング・ジャパン理事、ペンギンパパリーダー、他世代交流カフェ「いろむすび」アドバイザー」。2015年10月、市川香織、安田美香とともに3・3産後サポートプロジェクトをたちあげる。20歳と高校生の息子を持つ2児の母。
(阿部花恵)
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