新国立競技場、原案は取り下げるべきか? 磯崎新氏とザハ事務所が対論【東京2020】

2020年東京オリンピックのメーンスタジアムとして建設される新国立競技場が、規模やコスト、周辺景観との調和などを巡って批判が起きている問題についてザハ・ハディド氏の案を見直すよう求める建築家の磯崎新氏と、ザハ・ハディド事務所が対論した。
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Taichiro Yoshino

2020年東京オリンピックのメーンスタジアムとして建設される新国立競技場が、規模やコスト、周辺景観との調和などを巡って批判が起きている問題について、国際コンペで採用されたザハ・ハディド氏の案を見直すよう求める建築家の磯崎新氏と、ザハ・ハディド事務所のシニアアソシエート・大橋諭氏が11月19日、日本外国特派員協会で対論した。

磯崎氏は11月7日、ザハ氏による修正案が、予算の見直しや環境への配慮などの要件変更を経たことで「当初のダイナミズムが失せ、まるで列島の水没を待つ亀のような鈍重な姿に、いたく失望」したとして、

  • 国立競技場を更新するがオリンピックの開会式には用いず、競技のフィールドとして整備し、周辺環境に配慮する
  • 東京・二重橋前広場でオリンピックの開会式を行い、全世界に中継する
  • コンペの結果を尊重して設計者はザハ氏とする

ことを求める文書を発表した。

磯崎氏は「(ナチス・ドイツ時代の)1936年のベルリン・オリンピックでメーンスタジアムを初めて、大きなプロパガンダとして演出し、20世紀型の開会式の形になってきた。しかし10億人がライブで見たいのが現在の情報化した時代の常識。インターネットやテレビで見られる効果をもっと考えていくべきだ」として、「スタジアムとセレモニー会場に分けてバランスをもって」計画することで、現在出ている批判を無理なく整理できるのではないかと説明した。

これに対し大橋氏は「プロフェッショナルな建築家として、すべての条件に対応することは可能で、その責任もある。デザインを決定し、当初のデザインの狙いが失われず、オリジナルのデザインやイメージが保たれるようにしなければならない。その権利も責任もある」と話した上で、「オリンピックだけでなくコンサートや地域のイベントなど、長期にわたって多目的に使えるよう設計している。建築家は(発注者の)要請に応える責任がある。新たなデザインを設計することは可能だ」とした。巨大化するオリンピックそのものへの批判について質問されると「議論は可能だが、東京オリンピックの設計過程では、もっと前の段階で議論され、計画されるべきだった」と反論した。

明治神宮外苑や聖徳記念絵画館など、周辺の景観や建物との調和を考慮していないという質問に、大橋氏は「様々な要素を考案し、地域のより大きなマスタープランの一部として設計している」と語るにとどめたが、磯崎氏は、神宮外苑周辺の建築様式が明治以降に西洋から流入したモダニズムやイギリス式庭園の要素を取り入れていると指摘し、「国際的なものから選びたいとしてコンペでザハが選ばれた。日本人ではないから、伝統に合わせてデザインすることはなかったと思う。必ずしも日本の伝統的なものを創らねばならないことはない」と述べた。

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