小保方晴子氏の博士号取り消さず 早稲田大学調査委が発表を拝読。当然だが内容に強い違和感を覚えた。博士論文に26箇所の問題点を見付けながら学位取り消しはしないという結論であるからだ。強盗・傷害など26件の犯罪で起訴された容疑者が、裁判所で犯罪の認定を受けたにも拘わらず無罪の判決を勝ち得たら驚いてしまう。同時に、一般国民としては日本の刑事司法はどうなっているのか?と訝しく感じるに違いない。今回の早稲田大学調査委員会決定も同じ事だ。
理化学研究所・研究ユニットリーダーの小保方晴子氏(31)の博士論文に対する不正疑惑を調査していた早稲田大学の調査委員会(小林英明委員長)は7月17日、論文中に計26カ所の問題点があると認めたものの「学位取り消しの規定には当てはまらない」とする報告書を公表した。
そして、早稲田大学鎌田総長会見内容が焙りだすのは、調査委員会は決して早稲田大学から独立したものではなく、早稲田大学の意向を強く反映したものであるという事実である。調査委員会は小保方氏に関する不祥事をうやむやにするためのアリバイ工作用小道具といっても過言ではないだろう。
早稲田大学の鎌田薫総長は、会見で「すでに改善策を講じているが報告を詳しく見たうえで、その改善策を再検討していきたい」と話しました。
■まるで調査委員会の体をなしていない、今回の早稲田調査委員会
昨日公表された「早稲田大学・大学院先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会」を読んで最初に驚かされるのは下記委員会の構成である。流石に委員長 のみは氏名を公開しているが、残りの4名は所属と役職のみである。実名を公表すれば後顧に憂いを残す事になるからだと忖度せざるを得ない。実名は公表しているものの委員長小林英明氏の人選にも首を傾げてしまう。
早稲田大学法学部卒業で鎌田薫総長の後輩だからである。所謂「ずぶずぶ」の関係というやつで透明性が期待出来ない。理研に対し「研究不正再発防止のための提言書」を提出した岸 輝雄東大教授の如き人物に依頼すべきであったはずである。調査委員会の人選が、早稲田大学が真相を究明した上で問題の抜本解決を行う積りが無い事を赤裸々に語りかけている。
■委員長 小林英明(弁護士、長島・大野・常松法律事務所)
委 員 国立大学名誉教授 医学博士
東京大学名誉教授 医学博士
早稲田大学教授 医学博士
早稲田大学教授 政治学博士
■小保方氏が所属していた先進理工学研究科の博士論文を全て調査する決定もうやむやにするのか?
小保方氏の問題が発覚した後、早稲田大学は博士論文280本を調査 不正あれば学位取り消しもと宣言している。しかしながら、今回の調査委員会発表ではこの点については何一つ触れていない。どうせこの件もうやむやにする積りなのであろう。
私はこの問題が発覚した直後に、小保方晴子氏のSTAP細胞関連騒動について、及び小保方晴子氏のSTAP細胞関連騒動が焙り出した大学の構造問題を、相次いでハフィントンポスト公開した。そこで強調したのは早稲田大学では論文盗用が常態化しており、今回の不祥事をトカゲの尻尾切りで終わらせてはいけないという事である。
小保方氏の早稲田時代を知ろうとしてネットに当たった所、何の苦労もなく当時の指導教官達の博士論文に拘わる不適切な行為を告発する文章を見つけた。M博士とF博士である(この告発が正しいか否かは近い内に明らかになると思う)。取り敢えず小保方氏を指導したとされる上記2名のみを参照しておくが、実際のところ殆どの教員、研究者が不適切な行為に無頓着であったのなら、「朱に交われば赤くなる」という言葉もある様に小保方氏一人を断罪にする事は不自然である。
早稲田大学での小保方氏の指導教官は当然として接触があった大学関係者全ての博士論文を含む論文に剽窃の事実がなかったか? 徹底的に検証すべきである。決して、小保方氏一人をスケープゴートに仕立て上げ一件落着を図る様な「トカゲの尻尾切り」があってはならない。
■何故早稲田大学は「トカゲの尻尾切り」すら出来ないのか?
今回早稲田大学調査委員会が出した結論は「小保方氏一人をスケープゴートに仕立て上げ一件落着を図る様な「トカゲの尻尾切り」があってはならない」どころか、「トカゲの尻尾切り」すら行わないという噴飯ものであった。それでは当然の成り行きとして、「何故早稲田大学は「トカゲの尻尾切り」すら出来ないのか?」という話になる。推測するに、小保方氏の弁護士を使って理研を揺さぶる遣り口を目の当たりにして、同じ手口を早稲田大学に使われては敵わないと考えたに違いない。
ホテルを借り切りマスコミを集め、「論文盗用と批判されてますが、早稲田大学では主査副査や指導教官もみんな論文盗用をやってました。指導教官から論文盗用のコツを教えて貰い実践しただけです」みたいな事を涙ながらにテレビカメラに向かい訴える状況が目に浮かぶ。そして、ワイドショー経由で早稲田大学は一夜にして悪者になってしまう。従って、訳の分らぬ理屈を捏ね回して「学位取り消しの規定には当てはまらない」などと妄言を垂れ、日本国民を呆れさせている訳である。
■何故早稲田大学にはこの様な勝手気儘が許容されるのか?
例えばJR北海道が頻繁に事故を起こすとすると、監督官庁である国土交通省はすぐさま立ち入り検査を行い事故原因を特定する。更には、事故再発防止のためJR北海道に対し「業務改善勧告」を発出する。これに対しJR北海道の対応が充分でなければ、更に厳しい関係者への刑事告発を含めた「業務改善命令」を発出する。一方、早稲田大学の監督官庁である文科省は何故、指を咥え早稲田大学のかかる暴挙を傍観しているのであろうか?
文科省で使い物にならないポンコツ官僚の天下りを受け入れているからに違いない。少し古い資料だが、「天下り受け入れ私大」ワーストは日大・早稲田との話だ。95億円の補助金に対し24人の天下りを受け入れているから、補助金4億円に対し天下りを一人受け入れるという事で早稲田大学と文科省で合意しているのであろう。これでは、監督官庁として早稲田大学の指導なんて出来ない。それどころか、「今回の不祥事に目を瞑ってやるから後3人受け入れろ」みたいな、国民不在の交渉をやっているのかも知れない。
■私立大学への補助金は即刻廃止すべき
私立大学の根本問題はハフィントンポストで公開した、私立大学という日本の痼疾で説明した。大学教育という名に値するか否か?は一先ず横に置くとすれば、国立大学とは異なり、私学が自らの価値観に基づき自由に運営する事を否定すべきではない。但し、そうであれば運営費用は100%学生から徴収する入学金や授業料で賄われるべきである。
しかしながら、実態は平成24 年度時点で881 校に対し総額で3,239億円が補助金として交付されている。これが、旧文部省OB天下り先の半分弱が私学の背景であり、大学と監督官庁文科省間癒着の温床である。
こういった背景から、私は一貫して私学補助金の廃止を主張している。今回の馬鹿げた早稲田調査委員会の報告書を読む限り、「2014年7月17日、早稲田大学は死んだ」といって良いだろう。今後は早稲田大学などは蔑視と嘲笑の対象でしかない。しかしながら、この事が切っ掛けとなり日本の私学が正常化に舵を切る展開となれば早稲田大学の死は決して犬死ではないだろう。