僕がはじめて教育工学の分野の研究を始めたのが21歳の時ですから、自分が今日で38歳ということは、既にEDUTECHおよび、教育業界に自分が17年間もいるということになるなと思って驚愕しています。
そんな中、思うのですが、教育業界の2014年は、次の時代の幕開けのような出来事が起こる一年になりそうです。特に約30年ぶりに大学入試の改革が行われようとしている今、教育系企業としては、この変化に対応できるかどうかが、進化論的にも重要なのではと思っています。
僕としても今まで種まきしてきたことがやっと実現できる年になりそうです。
特に僕としては、2014年は以下のことが起こると思っています。むしろ起こしたいと思っています。
1)タブレットの学校教育への普及
当たり前に聞こえると思いますが、過去の歴史から見ると実現するにはかなり大変なことだと思います。過去のパソコンの学校教育への普及は個人的に失敗したと思っています。国が予算をつけてパソコンを全ての学校にということで進めた政策も、結局は、最悪な学校の場合、セキュリティ的にも怖いので、職員室か校長室に数台おくことで普及したという結論付けをしている学校も未だに存在していたりします。結局、回線の問題や先生がどのようにパソコンを生かしたらよいかわからない、進学率などに関係しないという理由で、学校教育のIT化はなんとなく有耶無耶になって一段落してしまった感がありました。
パソコンよりも導入がしやすいタブレットという新しいハードウエア普及の波を生かして、必ず2014年中に大きなプレーヤーが学校教育を変えていくと思います。ここで変えられなければ、次のチャンスは当分こないでしょう。
2)スカイプ英会話の淘汰と普及
個人的な経験も含めて、「使える」英語というのは喋らなければ絶対に身につきません。特にグローバル化の方向に日本の経済界が向かって行く中、教育現場でも英語の早期導入やクラス自体を全て英語で運営するなどの方針が国から出てきています。結局、TOEIC730点ですと外人に言ったところでまったく意味がない世界がそこまで来ています。
モノカルチャーの日本に住みながら、使える英語を身につけるためには、確実に英語を使う絶対量が足らなくなるのは目に見えています。その上で、どうやってもスカイプのような通信技術を使った英会話サービスは必要と個からも組織や機関からも必要とされるでしょう。
その上で大事なのが、クオリティです。教育機関が導入するに値するクオリティのスカイプ英会話サービスをどのように提供していくかが大きな差別化要因になるでしょう。現状のスカイプ英会話の大半が安かろう悪かろうのサービスになってしまっています。それは海外の教師の文化の違いなども理由にはあげられると思いますが、学習中に子供が講師の後ろを駆け回っているようなサービスはきっと淘汰されると思います。
特に講師が在籍する国の賃金や通貨価値が上がってくる中、スカイプ英会話業界は安かろうではどんどん利幅がなくなっていき、結局、差別化要因として、教育機関でも導入できるクオリティを維持しているサービス運営会社が、2014年には生き残り、かなりの同業種が淘汰されていくような気がします。
3)無料の教育コンテンツの普及
日本の教育はどこまで行っても今まで受験を中心にした学習方法の効率化という視点で、学校教育や学習塾、教材開発などを生業としたプレーヤーたちが切磋琢磨してきたと思います。前段にも挙げたように今後、受験の仕組みが仮にアメリカのように人物評価を中心とした受験になった場合、子供たちに対してどのような指導が的確なのか、現場は悩むと思います。
一番恐れているのは、面接の達人のようなマニュアル本に書かれてるようなことを全員が人物評価の際にアピールしてしまうことでしょう。結局、就活においても人物評価を軸とした場合に同様の問題が浮き彫りになっているわけで、受験を変えてから教育現場をかえるのか、教育現場をかえてから受験をかえるのかは非常に難しい議論になっています。結局、国は前者を選んだわけです。
その上で日本の教育業界に必要なのは、子供たちが自由に学べるコンテンツです。先生から渡されるものでもなく、塾の先生が指導するものでもない、本人の意思で学びたいものを見つけ、それを学び、個性を育むような教育コンテンツが増えていくことが大事になってきます。
アメリカでは、Khan Academyのように一個人が作った映像コンテンツが、特定の学習者に評価され、ビル・ゲイツ財団から約10億円の寄付を得て、今では学校で採用され使われるようになりました。このように学校教育でも使えるような、無償のコンテンツが増え、子供たちに多種多様な学び方を提案するような世界感を日本でも作っていくことが、個性や多様性を育む第一歩になると思います。
4)映像教育メディアにおけるコンテンツの考え方
映像を見て学ぶ場合、面白いだけではまったく意味がありません。セミナー講師でも、たまに見かけますが、映像の中で自分の自慢話をしても、オーディエンスはその時は、すごく感銘を受けて興奮するのですが、結局、後日振り返ってみると何を学んだかわからないというケースは多いのではないでしょうか?
またとりあえず映像コンテンツを大量に集めればという意見もあるのですが、それはそれではインターネットを検索しているのと、かわらなくなってしまうし、とりあえず、図書館に行って、理由もなく本を眺めてから何を読むか決める人間はあまりいないように、少なからず好きなジャンルやお目当ての情報を探したくて図書館に行く人の方が多いのではと思います。要するに手軽に答えを求めている学習者としては、映像なんかよりも、インターネットで検索できるテキスト情報や、緩い感じに答えが返ってくるチャット系Q&Aサービスでよいわけで、あえて映像みたいと思っている学習者が本質的に何を求めているのかを見極める必要があるでしょう。
その結果、教育においての映像コンテンツは「学び」という側面をもう一度見直すべきだと思っています。そんなお勉強お勉強していたら、途中で飽きるとか、見られないとかいう意見もあるでしょうが、それは冷静に考えるとリアルな世界でも同じだということを再認識するべきでしょう。リアルの方が途中でクラスやセミナーの場から立ち去りにくいだけで、実際につまらないものは、どちらにしろ、学習者には吸収されていないはずです。逆を言えば、つまらなくても学習者が必要と感じたものは学習者に吸収されています。
前段であげたタブレットの普及によって、2014年は、様々な塾や大学、教育系企業が映像コンテンツを配信し、その結果、何が「学べる」映像コンテンツなのか、どういう提供方法が正しいのかの答えが出るだろうと思います。
まとめ
インターネットが世の中に普及して既に10年以上が経つ中、やっと教育業界では、 EDUTECHという分野が盛り上がりを見せてきました。僕自身の業界人生17年間を振り返ってみても、一番、変化が期待できる面白い時代が来たと実感しています。そして、人生38年目の誕生日に、今までやってきたことを振り返ってみたところと2014年は上記の4つが大きく変化をする領域だろうと感じました。
また個人的には、評論家で終わるのではなく、自分が前段にあげた4つの変化において、プレーヤーとして、その中心にいる1年にするための所信表明にしたいと思います。