10月4日、ホワイトハウスの南側に2万脚の椅子が並べられた。
新型コロナウイルス感染症で、これまでに21万人以上が亡くなっているアメリカ。
椅子は亡くなった人たちを追悼するために設置されたもので、空席の一つ一つは新型コロナウイルスによる死者約10人分を象徴している。
「昨日ホワイトハウスと向かい合って、2万の椅子が並べられた。それぞれの椅子が新型コロナウイルスで亡くなった10人のアメリカ人を象徴している」
新型コロナウイルスが受け止められていない悲しみ
追悼式を企画したのは、新型コロナウイルス感染症から回復した人たちとその家族による団体「変革を求める新型コロナウイルス感染症サバイバーの会(COVID Survivors for Change)」だ。
この日は、新型コロナによって亡くなった人たちの最初の追悼日で、2万脚の椅子はホワイトハウス南側にある広場「ザ・エリプス」に並べられた。
追悼式には、家族を失った人や医療従事者などが参加し、愛する人たちの思い出や彼らを失った悲しみを語った。
変革を求める新型コロナウイルス感染症サバイバーの会を立ち上げたクリス・コーシャーさんは、「パンデミックが始まってから6カ月ですが、アメリカはまだその衝撃によろめいています」「様々な悲しみの大半は……きちんと受け止められていないこと、正しく認められていないことです」とCNNに語る。
追悼し変革を訴える
アメリカのトランプ大統領は「新型コロナウイルスはすぐ消える」などと主張して感染症の危険性を軽視し、感染が拡大した後も長期間にわたってマスクを着用しなかった。
しかしこの追悼式の2日前に、トランプ大統領は新型コロナウイルスに感染したことを発表。その後も、多くのホワイトハウスのスタッフや議員が感染したことが明らかになった。
その多くが、9月26日にホワイトハウスのローズガーデンで開催されたエイミー・コーニー・バレット氏の最高裁判事任命式典に参加していた。
追悼式に参加した、コロンビア大学メディカルセンター救急医療教授のダラ・カシュさんは「ローズガーデンでのイベントを見たときに、恐ろしい気持ちになった」とワシントンポストに語る。
「子どもや大人、高齢者たちが、私たちが勧めてきたマスク着用やソーシャルディスタンスを守っていませんでした」
「これまでに亡くなった20万の人々や、政権のせいでこれから感染するであろう人のことを考えると、医師としてだけではなくアメリカ人として愕然とします」
追悼式を企画した歌手のディオンヌ・ワーウィックさんは、無責任な政権の振る舞いを止めるために、声を上げる必要があると訴えた。
「死者の数は毎日増えていて、直接的にも間接的にも私たちは新型コロナウイルス感染症から影響を受けています」
「私たちは声をあげなければいけません。大きくてはっきりとした声をあげない限り、責任者たちがいつでも耳を傾けるわけではないということを私たちは知っていますから」
<2万の椅子が並べられる様子>